歯周病の治療で、不都合なこと。

 歯周病は、「歯と歯ぐきの隙間」に細菌(歯垢)がたまり、歯が植わっている骨(歯槽骨)を溶かしていく病気です。

 こんな恐ろしい病気なのに、治療法は意外と単純。

「歯垢を取ること」です。

実際に歯科医院で働いていると、
歯磨きの仕方を「歯垢が取れるように磨く方法」に変えることにより、歯周病が改善していく様子を、多くの患者様と共に目の当たりにします。

 それでも今も、歯周病が人々を悩ませているわけは、
・ 歯周病予防のための知識を教えてもらう機会が少ない。
・ 1日1回、毎日歯垢を取り除くことを「継続」しなければならない。
・ 歯の形が複雑で、細かいところにある歯垢を取ることが意外に面倒くさい。
・ 直接命に関わるとは限らない病気なので、最終的には歯を抜けばよく、本気で病気に向き合う気持ちになれない。
・ 禁煙などを勧められると、「自分には無理だ」と思って諦めてしまう。
・ 無自覚に進む病気のため、気が付けば、歯周病が進行しており、治療できない状態、または治療出来てもそこから改善するのに、患者様自身の自覚と努力が大きく必要な状態になっている。

 などがあるからなのかと思われます。

 さて、それらを乗り越え、一度罹った歯周病が改善に向かった場合でも、
実は、病気の痕跡というか、患者様にとって都合の悪い状態もでてきます。

 歯周病が治癒していくのは喜ばしいことですが、
患者様にとって一番気になるのは、「歯根が露出」してしまうことかも知れません。

『4,歯はこんなふうになっている。 「歯の構造と、歯周病の発生と行方」』でも載せましたが、歯はこんな形をしています。

P1030499
(模型です。)

歯周病で歯槽骨が溶けてしまうと、歯ぐきの位置が歯根側に後退し、歯の根の部分が見えてしまう状態になるのです。

 病気としては治癒し、歯ぐきの健康状態も改善しているのですが、溶けてしまった歯槽骨の位置まで、「歯ぐきの位置」も、後退して下がります。
 「病的に腫れていた歯ぐきの腫れが引き締まった状態」で、病的な状態からは良くなっているのですが、歯石を取ったり歯ぐきの腫れが引いたことで隠れていた歯根が直接見えます。
 あまり極端な場合等、医師の判断や患者さんの希望により外科的に戻す処置をする場合もありますが、生体のことで可能と不可能があり、時間もかかるようです。

 「歯根が見えてきてしまう」ことで不都合なことは、主に、

・歯根が見えてくるために歯が長く伸びたような形に見える。

・歯がしみる。(今まで歯石に隠れていたり、腫れた歯ぐきの中にあった歯根が露出し、水などの刺激を直接受けやすくなったため。歯科医師に相談し適切な処置やアドバイスをもらいます。)

・歯と歯の間に隙間が出来る。

などだと思いますが、進行すると歯を残せないほど歯槽骨が溶けてしまうのが歯周病なので、
その進行が途中で止まり、このままいくと抜ける状態だった病気の進行が止まった状態、
もとの健康だったときの状態と、違ってしまうのは、他の病気と共通するところもあるのかも知れません。

 さて、やっと治癒にこぎつけたら、ここからは再発防止に力を入れましょう。

かかりつけの歯科医院に定期的に通いながら、クリーニングを受け、虫歯や歯周病のチェックを受け、歯垢の残っている場所をチェックしてもらいそこにも歯ブラシを当てるように工夫していきます。
 患者様と歯科医院、二人三脚のように共に歩む、長い道のりになります。

コメントは受け付けていません。