古代人も苦しんだ「歯周病」。 国立博物館でみる頭蓋骨。

 国立博物館には、古代人の頭蓋骨の展示なども多く見かけるのですが、

どうしても目がいってしまうのが、骸骨の口腔内。

額骨に残っている歯や歯石、歯槽骨の減り具合に、

釘付け。(笑)

古代人の骸骨という、肝心な展示の概要、全体的なことよりも、
そこ(口の中)についてだけ詳しく解説を始める、お母さん(とも歯科衛生士)。(笑)

子供はそんな面白い話に夢中、な、わけもなく、
熱く語るお母さんに、お付き合いでとりあえず、頷いていました。(笑)

 さて歯周病は、年齢を重ねると、40歳代以降から歯を失う人の割合が増え始め、
気がついたら多くの歯を失ってしまい、
入れ歯、又はインプラントになる、

というような方も多いのですが、

生きていると歯肉に覆われて分からない、歯槽骨(歯が植わっている骨)の減りが、
亡くなって骸骨になると、直に見えて、
古代人にも歯周病が蔓延していたことが分かります。

 国立博物館の展示解説によると、「虫歯」は時代により、その数が大きく増減し、
何を食べるかという食生活が、虫歯の発生に大きく関わっていることがうかがえますが、

「歯周病」に関しては、時代による増減は感じられず、
一定の割合で存在する。
とのことで、少なくても古代人が食べていたような時代の食生活の改善(甘い物を食べない等)が、歯周病にはあまり影響せず、
歯周病菌の感染によって、歯周病が発病していることが分かります。

そういう意味では、
現代医学の歯周病対策、

「歯科医院で歯石除去、クリーニング等により菌数を減らし、
日常生活の中で、菌数を減らすような磨き方で歯を磨くこと。」は、

歯科医院での処置や、歯ブラシの作りも合わせてかなり進んでおり、

歯周病対策として、日常、歯周病菌をいかに少ない状態に保つか、
歯槽骨を溶かすまでに至らない菌数、炎症で抑えて生活できるかが、

とても大切なのだと改めて思いました。

 古代人ではなかなか防ぎきれず、多くの方が苦しんだ歯周病を、
現代人は、防ぐ手段を持ってきたということだと思います。

 さて、歯周病の原因の解明も予防法も、かなり進み、
歯周病は大きく「防げる病気」となりましたが、

問題は、これを実践するもしないも、個人にかかっているというところだと思います。

 歯周病で歯を失わないための手段は確立して来ていますが、
その手段を知っている歯科医院に行くも行かないも個人の自由。
というところです。

知識があり、それでも行かない、ということであれば、本人の意思ですが、
「知らなかったから」とか、知っていれば行ったのに、後悔しても後の祭り、
というのが多いのが現実です。

歯周病の発生が、一斉に学校に通っている年齢であれば、
そこで教えて知識をつけ、対策するということも可能ですが、
歯周病が発生し始めることの多い40歳代では個人がそれぞれの仕事を全うしている時代で、
注意喚起が広く全員に行き届かず、
虫歯がなくて歯科医院に行かない人ほど、
歯周病のプロに見てもらう機会が少なく、歯周病で歯を失う人が多い現実があります。

一本も虫歯がない、という口腔内の健康は、大変素晴らしいのですが、
歯周病は、そういう方こそ要注意。

虫歯のない人ほど、歯周病にかかりやすいのではないか、と思われるほど、
手遅れになり、歯を失う方が多くいらっしゃいます。

 歯周病は、古代人の時代から蔓延し、
人々が苦しめられたきた病気で、
放置が一番危険。

歯科医院で見てもらわず、知識もなく、一人で治すことは困難ですが、

歯科医院で定期的に見てもらえば、
多くの人が、歯周病で苦しむことなく、
知識を得て実践し、一生自分の歯で食べられることが可能です。

 古代人の歯にびっしり厚くついた歯石を見ると、歯科衛生士としては思わず取ってあげたくなりますが、
骸骨になって展示されている状態で、それをすると、
歴史的資料としての価値も大きく失われ、得をする人がいません。

 ぜひ、歯石は生きているうち、歯があるうち、元気なうちに、
歯科医院に電話をかけて、取ってもらい、
健康と引き換えにしていただきたいと思います。

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