2,「歯垢(プラーク)」について。

 歯ブラシを怠ったときなどに、歯の根本に付く「白い歯カス」。
これを歯垢(プラーク)といいます。

あれ?
さっきまで無かったのに、付いている?

と思われるようなものですが、

「無かったはずの物が、食事もしていないのに、付いている」

というのは、決して気のせいではありません。

「読まなきゃ良かった…」
と、一気に引かれそうな内容ですが、
これは、菌が増殖している状態です。

 私は歯科医院で患者様御自身の口の中から歯垢を取り、
顕微鏡でお見せするという仕事もしていました。
来院された全ての患者様に見て頂いていましたが、キレイに磨けている患者様でも、顕微鏡の中には活発に動き回る多くの細菌が映ります。

 私自身、初めて自分の歯垢(プラーク)を顕微鏡で見せてもらい、

「生きていたんだ!」

と思ったときの衝撃は忘れられませんが、
長いの、細いの、丸いの…より取り見取り。
ニョロニョロと活発に動くものなどもあり、
「これでもかっ!」というくらい元気一杯です。

 歯垢(プラーク)は、歯に付着した細菌が、繁殖したかたまり。
プラーク1㎎の中は、約300種類、1億個の細菌が存在しているそうです。
(数えたことありませんが。(笑))
適温、水分、栄養、と培養条件が整いすぎているお口の中では、約8時間で繁殖し、プラークが出来る、と言われています。

 さて、歯科衛生士の大きな目的の一つは、
患者様の「歯を失わせないこと」。

 その歯を失うことになる原因で、一番多いものは「歯周病」、
次いで「虫歯」ですが、
この2つにかかる大きな原因は、

「歯垢(プラーク)」です。

 この歯垢(プラーク)が、歯周病(歯槽膿漏)や虫歯、それにともなう口臭などを引き起こす大きな原因菌になるのですが、
 ただ、取り除いて減らすことが出来る原因菌が目の前にある形なので、
歯垢を減らすブラッシング(プラークコントロール)が出来ると、歯槽膿漏などの歯周病も、大きく改善、予防することができます。

そこで歯科衛生士の登場。

患者様に歯ブラシや歯間ブラシ等で歯垢を落とす方法をご説明して、覚えていただいたり、歯垢(プラーク)の住み家となる歯石を取るなどのケアをして、
お口の中にある歯垢をなるべく少ない状態に保ち、健康を維持、一生失うことなくご自分の歯を使えるようにする、などということが歯科衛生士の大きな目的、仕事になります。

p_16 DH説明図

 

 歯科医院に通って歯石除去、クリーニングなどのケアをし、歯ブラシの使い方を教わって磨くだけで、
多く歯周病が防げる。
一見簡単なのにホントに、歯科衛生士までいるのか?

というところですが、
まずは、このことが大切だという知識がなければ防げない、
また、歯の並びは意外に複雑で、
歯周病予防をする歯磨きを出来るようになるには、磨き方を聞き、何度か磨き方をチェックしてもらう必要がある、
歯石除去、クリーニングなどをする、
ということで、
知識の啓蒙活動、歯周病を防ぐのに効果的なブラッシング方法のお伝え、歯石除去やクリーニング(PMTC)など、
歯科医院でも歯科衛生士の募集はたえません。

 

 さて、この歯垢。
これがなかなかの、くせ者。

何が? というと、「今日ついていても、明日、調子が悪くなるわけではないので、放っておきがち。」

そう、歯周病は、今までと同じように健康だと思いながら過ごしていて、
ある時期、突然のように歯がぐらつきだし、抜歯を考えるほどの歯周病にまで進行していたりすることのある病気です。

 兆候がほとんど出ないという特徴もあり、「こんなになる前に教えてくれよ」、という感じの、
ちょっと「だまし討ち」系の、サイレントな病気なのです。

気づいたら、歯を植えている骨がほとんど溶かされていた、という感じでしょうか。

「今日歯垢が付いていても、明日悪くならない」
この事に慣れきってしまわず、
 一日一回、しっかり歯垢を落とすように磨いた日を、少しでも多くする。ということが、
歯周病(歯槽のう漏)や虫歯で歯を失う、失わない、の境目には、大きく影響します。

 同じ時間、歯ブラシで磨くにしても、毛先の向きをちょっと変えて動きを細かくする。口の中全体をふわっと見るのではなく、どこを磨くか自分の中でポイントを絞る。

 そんなちょっとした知識が、磨けている時間(菌数の少ない時間)を大きく延ばし、長く歯を守ることにつながります。

 さてこの歯垢、 長く歯についた状態が続くと石のように硬くなって、歯ブラシでは取れない状態になっていったりする。

それが、歯石です。

実は歯石じたいは、歯垢のように元気に細菌が動き回って生きているという状態ではないのですが、
顕微鏡で見ると軽石のように沢山の穴が空いていて、
そこがちょうどいい歯垢の部屋、マンションのようになり、沢山の歯垢を住まわせることができます。

歯石を取らないで歯周病を予防するのは難しいのです。

では次、歯石の説明をさせていただきます。 

次、『3, 歯石について。』 へ。

1, ココから順番に書いています。(歯周病) 

 日本人の多くの方が毎日、歯を磨きますが、8割の方は歯周病にかかります。

その主な原因を、「歯の汚れ」、と一言でいってしまうのは簡単ですが、
では具体的に、どうやって歯周病にならないようにしていけばいいのか?
ということになると、情報を得にくいところです。

 歯と歯ぐきの間を磨くといいと言われ、磨いているが、
歯周病が、不安。
という方は多くいらっしゃいます。

 これは現在、歯周病予防のためのブラッシング指導などを歯科医院がしても、保険適用が限られている等あまりお金にならない、ということが原因の一つかもしれません。

また「ブラッシング指導、自費でも大体一回2500~3000円位のところも多いですよ。最初は3回ぐらい入るといいですよ。」などと言われても、
そもそもブラッシング指導は、お金を出して受けるほど大切なことなのか、ということ自体、情報の広まっていないところで、知らない方も多く、お勧めしても患者様に喜ばれないということもあります。

 でも、実はブラッシング指導に通い、歯垢を落とす方法を覚えて、歯科医院で定期的にケアを受ければ、
多くの方の歯周病は予防でき、高齢になっても御自分の歯で食事をすることができます。

実際にスウェーデンではこの重要性に注目し、1970年代に歯科医院のケアとブラッシング指導などの予防歯科を国家的に導入して、それまで日本と同数ほどであった歯周病や虫歯での抜歯数を激減させました。

結果、現在80歳での平均残存歯数は、日本で約10本に対して、スウェーデン約20本。
それだけ歯を失うことが減り、入れ歯などを使わずに御自分の歯で食べられていることになります。

1970年代と言えば今から40余年前ですから、そのころ30~40歳代であった方々が現在80歳になり、この結果を出しているということです。

ただ日本では、国家的には予防歯科を取り入れていないため、
ブラッシング指導を受けて、歯周病予防の磨き方を聞いたり、歯科医院に定期的に通って歯石除去やクリーニングなどのケアに通う、という予防歯科をできるかどうかは、それが重要だと言うことを知っている、という個人の知識と意思にかかっています。

 このようにすれば、80歳になっても御自分の歯で過ごせることが多い、と知る方々は多くの場合、何も調子が良くなくても、定期的に歯科医院に通うことを選択されます。
高齢になっても御自分の歯を残したい方には、口の中が健康でも歯石除去やクリーニングを希望して歯科医院で定期的に診てもらうのがいいと思います。

 サイト上では、 皆様全体に向けて、「歯と歯ぐきの間につく汚れを落とすようにします」
とは言えても、口の中は一人一人違います。
 歯ブラシを、弊害なくその場所に安全に的確に当てて磨き方を覚えるのは患者様お一人では意外に難しいので、実際に、歯科医院に行って御自分に合った方法をみてもらいながら具体的に教えてもらう必要があります。

このサイトでは実際に皆さまに会って、お一人お一人にあったブラッシング指導をすることはできませんが、歯科医院に直接通院して頂くことを前提とした、参考資料として、
歯周病はどのようなものなのか、予防のための方法などを、少し記事にしてみたいと思います。

「歯周病を防ぐ基礎知識 (全10記事)」
次、『2, 歯垢(プラーク)について。』 にお進み下さい。

 

 

他のオススメ記事。

・ 三面磨きの方法はこちらから。
『なぜ、「普通?の歯の磨き方」では歯垢が落ちないのか、検証してみました。(3面磨きの方法)』

・ 当たり前のようですが、お口の中ではこんな状態です。
『なぜ、開いた歯ブラシは取り替えるべきなのか?』

・ テレビ番組で紹介された歯ブラシ。
『マツコの知らない世界 歯ブラシの世界 ①「歯ブラシ」紹介』

・ ブラッシング指導の詳細を見てみたい。
『9, 後半 「歯周病予防の歯の磨き方。ブラッシング指導。」 詳細。』

・ 歯磨きにきっと自信が持てます。
『実はスゴイ! 「フロス」』