歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院。 ②

  先日に引き続き、「歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院。」の2回目は、

やはり、「きちんとしたブラッシング指導に入ってくださる歯科医院」。

 歯周病にかかると、ブラッシング指導を受ける機会は多くなるかと思うのですが、
実は、歯周病に大切なのは「予防」。

歯周病になる前の段階で、本格的なブラッシング指導を受けられるのがいいと思います。

 歯科衛生士さんが、数分でちょっと歯ブラシの動かし方を教えてくれる、というのではなく、
時間をかけて、患者様に合わせた磨き方を指導してくれるところが理想です。

もう、こうなると完全、まさに歯科衛生士目線なわけですが。
(歯科衛生士が歯科衛生士目線。 普通です。(笑))

 現在、歯周病になる前や若く軽度の段階で本格的なブラッシング指導に入ってくれる歯科医院ばかりではないかも知れません。

 ただ先日も書きましたが、これをしないからと言って、必ずしも悪い歯科医院というわけではないです。

 歯科医院には歯科医院の都合もあり、
患者様には患者様それぞれの都合もあって、
そのぶつかり合うところにブラッシング指導がある、というか。

 要は、患者様ご自身が、そんなにブラッシング指導を望んでいるか、というところなのですが、

ブラッシング指導に入れば当然、その分の費用がかかります。

ブラッシング指導の必要性を認識されているばかりでなく、それにどんな意味があるのか、それにより将来の残存歯数や生活が変わってくることを、現実問題としてとらえていない方もいらっしゃいます。

まだ、歯周病を発生していない段階で、「お金をかけて」までブラッシング指導を受けたほうがいいのか、と疑問に思う方々に対して、歯科医院でブラッシング指導を勧めることが、
必ずしも好印象になるときばかりでない、ということもあるのかも知れません。

 予防歯科では、歯周病の予防に保険外のブラッシング指導をすることもあります。

 歯科の治療の保険と保険外の治療では、それを提示された多くの方が悩まれたり、
よく話題にのぼったりしますが、
保険外の歯の被せものの値段は1本につき数万円。

患者様にとって、歯科の「保険外」というと、その印象が強いようです。

とても高額な印象があるので、患者様の中に、「保険外」アレルギーのようなものがあって、
「保険外」お勧めすると、「儲けようとしている」と思われてしまうこともあるようです。

 時間をかけて、本格的なブラッシング指導をするときの費用を、誰が負担するか。

短い時間で済ませてしまう保険のブラッシング指導で、お伝えできることは限られてくると思うのですが、
「保険外のブラッシング指導に入りましょう」と言われると、
「え? 保険外?!」ということに引っかかる患者様もいらっしゃる。
(保険内で治療して欲しい、と思われる方も多い。)

でも実は、一回3000円位とか。
よく美容室の金額と比べられたりするのですが、かなり良心的なお値段だと思います。
(ブラッシング指導は、破格的な安さ、とおっしゃる歯科医師もいます。) 
(自費は歯科医院によって値段は変わります。それぞれの歯科医院でご確認ください。)
時給の高い歯科衛生士に小一時間マンツーマンでつかせ、機械、ユニット代等合わせると考えると、
決して「儲けよう」として勧める話ではなく、
歯科医院としては「保険で虫歯の治療」をしていた方が、ずっと儲かるようです。

本当に患者様の一生の健康を考えてくださる歯科医院が、
将来にわたって患者様ご自身の歯を残し、健康に過ごしていただくために必要な知識として、利益を優先させずに行っているようですが、

患者様にはおススメしただけで、
歯科医院で「保険外を勧められた」、という印象が残り、
でも実際には、儲けになるものでもなく、
その誤解を解く?説明にも時間がかかり…、
というようなこともあるかも知れません。
(積極的に勧めることに、歯科医院側のメリットがさほどなく、さらに患者様にも喜んでもらえない場合がある。)

 保険はとても良いシステムですが、必ずしも最良の治療をするものではなく、
皆で支えあい、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という憲法の生存権を守るためのものだと思います。

 ブラッシング指導で受ける知識は、たとえその時にあまりハッキリした変化に感じられなくても、
一生の長い年月の中に潜在的に残り、その方の人生を変えていくものだと思います。
 患者様が中年を過ぎ、その時、歯周病になって気づいていただけるか、
もしくは、ブラッシング指導が上手くいけばいくほど、気づかないものなのかも知れませんが、
ブラッシングの少しの変化が、将来を大きく左右します。
(記事。『ブラッシング指導、「結果は、25年後」』

 ぜひ、患者様個人に合わせた丁寧なブラッシング指導をお勧めしてくださるところを「良い歯科医院」と認識して、一生を考え、長く歯を残すための本格的な指導の機会を逃すことなく受けていただきたいと思います。

 

関連記事。
『歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院』

なぜ、歯磨きは、歯ブラシに力を入れて磨いてはいけないのか?  傷つけないことだけ、ではない力加減。

 なぜ、歯磨きは、歯ブラシに力を入れて磨いてはいけないのか?

え?
それは当然、歯ぐきが傷つくからで、
すり減ってきたり、歯ぐきが下がって歯が伸びるように見えてきたり…。

というところですが、正解です。(笑)

何しろ、磨かれる対象物が、「歯や歯ぐき」。
やわらかい歯ぐき、にいたっては言わずもがな。
歯は硬いですが、毎日ゴシゴシ磨かれれば凹みが出てきます。

よく、「お像」の、
頭を触れば、頭が良くなるとか、
身体を触れば、その部分の病気が治る、と言われ、
みると、そこがツルツルで凹んでいたりします。
 足元に接吻すると良い、とされるキリスト様のお像は、
どう見ても硬そうな足の金属が、見た目でもハッキリ分かるほどへこんでいて、
どんだけ強いんだろう、人の唇って…。
と、思うほどです。

 さて、もう一つ、
実は、歯磨きの時に力を入れないほうが、逆に汚れが落とせる、ということもあります。

えっ? マジで?
という感じですが、(笑)
本当です。

 歯垢を一番落とせるときの歯ブラシの毛の状態は、
歯に歯ブラシの毛先を当てるとき、歯ブラシの毛が真っすぐになっていること。
いわば歯ブラシの毛が「つっぱり棒」になったかのように突っ張る。
(毛が曲がらずに真っすぐ毛先が歯面に当たる。)
この突っ張りが無ければ、歯垢はなかなか取れません。

これを写真で見ると、こんな感じ。

P1030554

P1030549

(歯ブラシの毛が真っすぐで直線である、上の写真のほうが歯垢が取れます。
こちらの記事にも書いています。『なぜ、開いた歯ブラシは取り替えるべきなのか?』

とくに最近は、「やわらかめの歯ブラシ」を使っているケースが多く、
これが古くなってきて、毛の一本一本ばらけかけたところに、
さらに磨くときに力が入ったりすると、毛先がかなり曲がりやすい状態になるのですが、

毛の曲がってしまった「やわらかめの歯ブラシ」
の歯垢除去能力は、格段に落ちます。

力を伝えるための直線のベクトル(矢印)が曲がり、
力が伝わりにくくなり、分散して逃がされてしまうからです。

つまり、
歯ブラシは、力を入れて毛を曲げてしまうよりも、
力を入れないで真っすぐな毛の直線をキープした方が、歯垢が落ちます。

密度も、ある程度は高密度のほうが、一本一本の間の隙間が少ないため、
真っすぐな状態を保ちやすく、突っ張り感が増すことと、
また歯垢を取る面(毛先)も、本数が増えることで面積も広がるので、歯垢が落ちやすいと思います。

 この「突っ張り」を利用することを、「毛の弾力を使って磨く」というように表現することが多いのですが、
毛を曲げず、直線を保ったまま、磨くと、
毛のしなりや弾力が、手によく伝わります。

歯ブラシの毛が曲がってくると、この弾力がなくなってくる。
歯を磨く時には、この手に感じる弾力に意識を集中すると、より歯垢の落ちやすい磨き方が出来ると思います。
毛を曲げずに真っすぐ、そのツッパリ感や弾力を活かして磨く、
そのために、力を入れずに磨く、という感じです。

 日常生活では、頑固な汚れを落とすとき、力を入れてこすり落とすことが多いかと思います。

歯磨きも、ついその法則に当てはめ、
取れにくい汚れを力でこそげ取ってしまいたくなりますが、

現実には、それで歯や歯ぐきが傷つくだけでなく、
歯垢自体も落ちにくい状態となります。
(力の加わった個所のみ汚れが落ち、全体としてはキレイにならない。)

ぜひ、毛先断面の広い範囲を使って磨くつもりで、歯や歯ぐきに当て、
毛が無理に曲がらないような力加減で、毛の弾力を感じながら揺らすように磨かれてみるといいかと思います。

歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院

 歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院。

これは私の個人的な意見なので、これをしないから良くない歯科医院ということでは全くありません。
むしろ、している歯科医院の方が、少数派なのかも。

考えたら、これをすることによっての料金の請求はしていなかったと思うので、歯科医院にとってはボランティア?、コスト的には赤字になることなのかも知れません。

(えー…、「これ」って何? って感じの書き出しですが。(笑))

そんな、ちょっとハイグレードかもしれない、私の良いと思う歯科医院は、

「顕微鏡で、歯垢(プラーク)を見せてくれる歯科医院。」

(「これ」は、「歯垢(プラーク)を顕微鏡で見せてくれる」こと。(笑))

 

 私の歯科衛生士のお仕事の一つは、通院されている患者様お一人お一人に、
お口の中から歯垢(プラーク)をとり、顕微鏡でお見せすることでした。

ただ、
今まで私の行った他の歯科医院(転勤族だったりして数が多い)で、見せてくださったのは、1件だけ。
もしかしたら、歯周病にかかる前の段階ではあまり見せてもらえないのかも。

 少し驚いたのですが、考えてみたら顕微鏡でプラークを見せて説明する、そのこと自体で料金をいただいていたわけではなかったと思うので、
逆に、時間や人件費、器具、等々のコストがかかることだから? かもしれず、
(そう考えると、もしかしたら、ボランティア?)
その時間を赤字にしてまで歯垢(プラーク)を見せていないということが、悪いことというわけではないと思います。

 ただ、歯科衛生士の立場で個人的には、
これを見せないで歯周病予防などブラッシング指導やケアに入るのは、厳しい感じです。

 長い期間にわたって病気を防ぎ、歯のある状態を保つために大切なのは、「歯垢を落とすこと」。
とくに歯周病などはテキメンで、歯垢が多ければ歯ぐきが炎症を起こし、少なくなれば改善していくのを、現実に目にすることが出来ます。

 以前、歯科医師のサイトで、この病気の「原因」に対する対策をとらずに、歯を削って詰めるような治療だけをすることは、
沈みかけている船の、「船底に穴の開いた船の穴をふさがず、ただ水を掻き出しているだけの作業だ」というようなこと読ませていただいた記憶があるのですが、
(どのサイトか、言葉の記憶しかなく、リンクつなげませんでした。すみません。)

長い期間病気を防ぎ、歯のある状態を保つためには、病気の予防にも治療にも「歯垢を落とす」ことが大切で、歯科衛生士はそのためにブラッシング指導などに入ります。

そのブラッシング指導で何が大切か、というと、「モチベーション」(動機づけ)。

そもそも「なぜ、歯を磨かなくてはならないか」、というその原因を知り、
「ぜひ歯を磨きたい」とか、「磨こう」、と思っていただくことだと思います。

 患者様に、「磨きたい」、「できれば口の中をキレイにしたい」、という気持ちがなく、
ブラッシング指導に入ることは、あまり意味がありません。

今後、歯を抜くか抜かないかの境目になって、
「磨ければ残せるかも」という状況下で、急に磨こうというやる気(モチベーション)がつくことはあると思いますが、
そこまで強くなくても、まず「歯垢の落とし方をマスターしよう」、という気持ちが患者様にないのに、ブラッシング指導はできません。

 そのモチベーションの導入に使われるのが、歯垢(プラーク)の正体を見ていただくこと。
普段何気なく目にしている自分の歯垢(プラーク)が生きている細菌であり、
その中でうごめく菌を実際に目にすると、
多くの方は、「これを落とそう」、と思われます。

もちろん、必ずしも顕微鏡で歯垢をお見せすることだけがモチベーションの導入ではなく、他のやり方もそれぞれにあると思うので、
必ずしも「顕微鏡で、歯垢(プラーク)を見せてくれる歯科医院。」でなくても、別のそれぞれの方法で、ブラッシングの重要性を教えてくださるところがいいと思います。

 

 よく歯科業界の中では、髪を切るのに美容室などでお金をかけるのに、
なぜ、ずっと健康を保つためのブラッシング指導に、喜んでお金を使おうとしないんだろう、
というようなことが言われたりします。

患者様が高齢になるにしたがって歯を失っていく現実を、毎日の診療でまざまざと見せつけられる歯科の専門家にとって、
(歯を失うと言っているのに)歯周病を防ぐ歯の磨き方に興味がなかったり、それが大変でもせめて歯石除去やクリーニングなどのケアになるべく通おうとする、という雰囲気が感じられない患者様が、
不思議に思えてしまうこともあるからだと思います。

 

 アップル社の設立者の一人、故スティーブ・ジョブズ氏の名言といわれるものの中に、

“「フォーカスグループによって製品をデザインするのはとても難しい。 多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」”

という言葉があるのですが、

多くの方々が今便利だと思ってお使いになっている、携帯のメールやiPhoneなどなど、現代の機器は、
もともと需要があって、それに応えるように作られたのではなく、

もともと消費者が「欲しいとも思っていなかった」ものを形として提示させられたことで、
欲しいという需要がうまれ、普及しました。

 つまり今、患者様の中で「ぜひブラッシング指導をしてほしい」と思う方々ばかりでなく、
もし歯科医院で勧められたら、「お金を払ってまで習ったほうがいいものなのか」と、疑問に思う方もいらっしゃるように思いますが、

 それはやはり、ブラッシング指導や歯石除去、歯のクリーニングなどの定期的なケアを、
受けるか受けないかで、将来の自分のお口の中、生活がどんな運命をたどるのか、
そのハッキリとしたイメージが、明示(形として提示)されていないからなのではないか、と思います。

 知ればきっと、磨きたくなる、歯科医院に行きたくなる。
患者様ご自身が、「自分は何が欲しいのか」自覚されると思います。

 

「顕微鏡で、歯垢(プラーク)を見せてくれる歯科医院。」
これは必ずしも、この通りでなく、いろいろなやり方があると思いますが、
ただ、今悪くなっているところを治療することだけでなく、
将来にわたっての患者様の一生の健康を考えて、予防や治療のプランを立て、カウンセリング、治療などをしてくださる、と感じる歯科医院に通われるのがいいと思います。

 

関連記事。
『歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院。 ②』

ワンタフトブラシ ミクリン 「Ciメディカル ミクリン MICLIN ワンタフト」 特徴 使用所感 。

 先日、『「磨いているつもり、で磨けていない」を回避するブラッシング。 スウェーデンの歯磨き法。』、で書いた歯磨き法。

 最初にワンタフトブラシを2分、その後、歯間ブラシやフロス、
そして歯ブラシをかける。

 日本でこれからさらに注目されそうな予感もする磨き方ですが、
(とも歯科衛生士さんの、勝手な予想。)
(ときどき、はずれる。(笑))
誰でも比較的簡単に、歯と歯ぐきの境目の歯垢が落とせる磨き方で、
歯周病予防の歯磨きがなかなか実践できなかった方にはいいのではないか、と思います。

 さて、そこで今日は、このワンタフトブラシ。
「Ciメディカル ミクリン MICLIN ワンタフト」(以下、「ミクリン」)の使用所感を書いてみたいと思います。

ワンタフトブラシは様々なメーカーが出していて、患者様の口の中、磨き方によって使い分けますが、ミクリンもその一つ。 歯科専用のおすすめワンタフトブラシです。

IMGP4963サイン

硬さは、S(ソフト、やわらかめ)とM(ミディアム、ふつう)の二種類があり、両方買ってみました。

 袋の下の方に「M」と、「S」が表示されています。

IMGP4962サイン

袋から出すと、「M」も「S」も同じ形状。 触ると毛のやわらかさは違いますが、
今のところブラシの本体に、文字は全く印字されていないので、袋から出すと見た目ではMかSか分からなくなります。

IMGP4971サイン

IMGP4989サイン

持ち手(グリップ部分)は全てプラスチックですが、
横に凹みを作って滑りにくくしている工夫があります。

IMGP4968サイン

 歯科医院専用のワンタフトブラシは、他のメーカーのものも使ってみると、それぞれ特徴があるのですが、

ミクリンワンタフトブラシの分かりやすい特徴は、ヘッドが小さく太めの毛束。
毛束の先端部分の△の角度が微妙に鋭角的で一辺が長めの三角になっています。

 小さめヘッド(タフトブラシの頭部)で、太めの毛束。

IMGP4986サイン

毛束の先端の角度が少し鋭角なので、

IMGP4986 角度サイン

太い毛束の幅で山切りにすると、
斜面の一辺の長さが長くなる。(青い線)

IMGP4986 一辺サイン

 実は、ワンタフトブラシは、どの角度から歯に当てても、
毛先の断面が歯に直接当たりやすい、という優れものの構造なのですが、
(毛先の断面が真っ直ぐ歯に当たると、歯垢が取れやすい、という参考写真記事。 『なぜ、開いた歯ブラシは取り替えるべきなのか?』

 ワンタフトブラシの一辺の長さが長くなっていることにより、
より広い歯面に、毛先の断面が当たり、一度に多くの歯垢が取れやすい構造になっていると思います。

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 毛束先端の△部。 ブラシ先端の△の部分が、鋭角的で細いことで狭い奥にも入りやすい。
 また、△部の「一辺の長さ」が長くなっているので、
より広い歯面に毛先断面が当たる。

 角度を変えてワンタフトブラシを歯に当てても、毛先断面が直接歯に当たるという優れものの構造になっているので、
上の写真でもワンタフトブラシに当たっている左右の歯とも、ワンタフトブラシの毛先の断面が歯に当たって磨かれる形、になっています。

IMGP4973サイン

 後ろから当てても、やはり歯面には「毛先の断面」が当たります。

 ワンタフトブラシは小さいので、小回りをきかせて磨く度に、
意識して毛先を歯に直角に当てよう、などとすると大変な手間ですが、

これが無意識でどの角度から当てても、毛先の断面がほぼ直角に当たってしまう、というのは、すごい設計だなと思います。
(図形が苦手な、とも歯科衛生士。
こんな設計考えつくってスゴいと思う。(笑))

磨いてみると、本当にどこから当てても、直角に当たっているような感じに、
「おぉ!」
と思います。
(この感覚、いつまでも新鮮。(笑)
自分の考えつかないことを考えつく方を素直に尊敬。)

 S(やわらかめ)はソフトな感じで無難に磨けます。
使い心地に慣れられるか、という問題はありますが、歯科衛生士にとっては患者様にお勧めしやすいブラシになるかも知れません。
 歯ぐきに炎症のある方や、インプラントを使用している方にも向いていますが、歯周病に気をつけた方がよい年齢40歳ぐらいからの口の中では、向いていることも多いと感じる柔らかさです。
 歯ぐきのすり減りや、形状の変化が気になる方、力を入れぎみな方は、やわらかめを使った方がいいかもしれません。

 M(ふつう)は、当然ですがS(やわらかめ)より硬さがあり、磨き心地もしっかりして歯垢が取りやすく、キレイになる満足感があります。
歯垢もS(やわらかめ)より落としやすいのですが、硬い分、力加減ができなかった場合など弊害も出やすくなるので注意が要ります。
 毛束の先端が比較的鋭角なので、先の尖ったところを歯ぐきに向けて強めに押すと痛い感じはします。
先端はあまり歯ぐきには向けずに磨き、
歯の溝を磨くときや、歯と歯の間の清掃に、この毛先を活かして磨く方法が向いていると思います。

IMGP4991サイン

 歯が生え替わりで生えている途中だったり、歯並びに凸凹があったり、歯ぐきが炎症で増殖傾向の方など、毛先の力加減に気をつけて磨くことの出来る若い方などには、M(ふつう)のほうが向いている場合もよくあるので、
ここらへんは、歯科衛生士さんの指示に従って選んで頂きたいと思います。

 ワンタフトブラシは磨ける範囲が小さいため、どうしても慣れるまで、
ちまちまとした印象なのですが、
ミクリンワンタフトブラシは、歯科専用のワンタフトブラシの中では、比較的磨ける範囲が広くて、慣れやすいかも知れません。

時間が経っても、毛先が広がりにくく、優秀なワンタフトブラシという印象です。

 ちなみに、数週間使った毛先と比べてみるとこんな感じ。

IMGP4977サイン

 右側はミクリンのS(ソフト、やわらかめ)の数週間使用後の毛先です。
だいたい1ヶ月くらい経過かな~くらいの頃。
(ちょっとうろ覚え。(笑))
左側の新品の毛先に比べて、やはり消耗が見られます。

これは、あまり力を入れない圧で磨いている場合ですが、
力を入れて磨く習慣があると、もっと毛は広がり、短い期間で歯垢が落ちにくい毛先になります。

ただ、毛先がさほど広がらなくても、比べてみると分かるようにブラシの毛先は消耗してきます。

これで歯面に当てると、

IMGP4985サイン

先細りになった毛先の当たりが弱くフワッとして、歯垢は格段に取れにくくなります。

新品の物で同じ部位を磨くと、

IMGP4984サイン

毛先がしっかりと真っ直ぐに当たり、歯垢が取れる感じ。
やはり、ワンタフトブラシも1ヶ月位では取り替えた方がいいようです。

 

 そんなミクリンタフトブラシ。
色はピンク、黄色、グリーン、ブルー、シルバーの5色で、原色ではなくパステル系。

 見かけも可愛いし、そもそも「ミクリン」という名前が可愛い。(笑)
ネーミングが可愛いという歯科専用ブラシは、それほど一般的ではない気がします。

ただ、ワンタフトブラシとしては毛束も太く、細い先端から徐々に広がった幅のある作りで、使ってみると女性ばかりでなく男性にもピッタリ。

 ワンタフトブラシは、その構造、用途から、歯ブラシの届かないところに毛先が入り込み、多くの歯垢を取ることのできる歯磨きグッズ。
今後さらに注目され、使うことがスタンダードにちかくなるのではないかと期待しています。
(ワンタフトブラシが細かく歯の入り組んだところにも入り込み、歯ブラシの届かないところが磨ける、ということを説明したコチラの記事。 『「磨いているつもり、で磨けていない」を回避する、ブラッシング。 スウェーデンの歯磨き法。』)

 男性にも女性にも子供にも、お勧めなので、一度試して気に入れば、家族みんなが色違いでお使いになるブラシになると思います。

ワンタフトブラシ 使い方

 先日、「磨いているつもりで、磨けていない」を回避するには、「ワンタフトブラシ」を使うと良いという話を書きました。
(コチラの記事。 『「磨いているつもり、で磨けていない」を回避する、ブラッシング。 スウェーデンの歯磨き法。』

 今回はそのワンタフトブラシの使い方。

 とても分かりやすく説明して下さっている動画を見つけました。

『日本口腔保険協会のホームページ、「ワンタフトブラシの使い方」』

 ワンタフトブラシの使い方は、ぜひ歯科医院で聞いて頂きたいところですが、動画も参考にされると分かりやすいと思います。

 ワンタフトブラシは各メーカーから色々な物がだされていますが、このようなものです。

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 歯周病予防のための歯磨きには、主にココを意識して磨きます。
(ピンクの線)

P1030439 point2

歯周病菌はココから歯ぐきの下に入り込むので、ここの歯垢(菌)をワンタフトブラシで落とすことが出来れば、
歯周病予防や治療にかなり効果があると思います。

  歯ブラシでもこの青い線の部分は磨けるのですが、
細かいところ(赤い三角の部分)には毛先が届きづらくなります。

P1030488-point2

なので、とくにこの赤い三角の部分にワンタフトブラシを入れて届かせるようにしっかり磨き、歯と歯ぐきの境目(ピンクの線)を一通りなぞるように、細かく振動させながら磨きます。

 歯の並びが入り組んで見えるところも、
とにかく、この歯と歯ぐきの境目、上の写真のピンクの線にワンタフトブラシの毛先が当たることを意識して全部磨いていけばいいと思います。

 ワンタフトブラシも、日本で一般的には、まだこれから普及というところがあり、
深く磨き方が研究されつくしているという感じではないので、
これから一般の方が多く使うようになって、弊害などがでてきたら、そうならないような注意喚起がされたり、
こうすれば汚れが落ちる、というような神業的な使い方が見つかるかも知れないのですが、
いまのところ、そこまで磨き方が追求されているというより、弊害がなく歯周病を予防できる、一般的な磨き方をお知らせしている感じかもしれません。

 歯科衛生士として思う注意ポイントとしては、ワンタフトブラシの毛先をあまり歯ぐきに強く入れこみ過ぎず、ソフトに磨くということ。

これによって、歯ぐきのすり減り等の弊害を回避します。

 また、ワンタフトブラシは、歯面に当たる毛束の先が山の形になっており、

P1030797

どの方向から歯の面に当てても、ブラシの毛先の断面が直接歯面に当たりやすくなっていて、歯垢が取れやすいという工夫がされている、優れもの構造になっているので、

P1030799

 患者様自身の歯磨き技術に頼るところが少なく、
ただポイント(ピンクの線)をずらさずに、ココ(ピンクの線の部分)に当てて磨くことが出来れば、

P1030439 point2

それだけでかなり、歯垢(菌)が取れ、歯周病を予防する効果があると思います。
(歯ブラシの毛先の断面が歯に真っ直ぐ当たったときに歯垢が取れやすいことが分かりやすい写真、参考記事。 『なぜ、開いた歯ブラシは取り替えるべきなのか?』

 ポイント(ピンクの線)に確実に当てる、ということと、
力を抜いてソフトに磨く、ということ。

ワンタフトブラシは毛先をソフトに当て、必要以上の歯ぐきのすり減りを回避すれば、
歯や歯ぐきに当たりやすい、歯垢を取りやすいブラシなので、
より安全に、使いこなせると思います。

 歯科先進国(歯周病や虫歯を多く予防できている)スウェーデンの歯磨きでは、
ワンタフトブラシを最初にメインとして使うそうです。
2分ほどワンタフトブラシを使った後に、歯ブラシ等をかけるというかたち。

使う道具は多くなりますが、
ワンタフトブラシは「磨いているつもりで、磨けていない」というような無駄な時間を大幅にカットするので、
(コチラの記事。 『「磨いているつもり、で磨けていない」を回避する、ブラッシング。 スウェーデンの歯磨き法。』
歯磨き時間がさほど長くなる、というほどでもなく、歯ブラシだけよりカンタンに歯がかなりキレイに磨けると思います。

やってみると、比較的簡単に口の中がサッパリきれいになる感じが実感できます。

 ワンタフトブラシ2分、その後、歯と歯の間に歯間ブラシ(前歯などはフロス)を通し、歯ブラシをかける。

これがとても効果的。

 予防歯科のある歯科医院に定期的に通い、検診とクリーニングをしてもらい、
普段の、ワンタフトブラシ → 歯間ブラシ(フロス) → 歯ブラシ、の順のブラッシングで歯垢を落とすことができれば、
歯周病を防ぎ、長く健康な歯を残す生活に繋がりやすいと思います。