なぜ、患者様の歯磨きは、力を入れてしまうのか?

  歯周病のためのブラッシング指導は、
「大きく、力を入れすぎる歯磨き」をする患者様に、
いかに、「細かく、力を抜いてブラッシング」していただくか、
という課題になることがとても多いです。

0㎜のストロークで磨いても歯周病が改善するくらいなので、
(詳しくはコチラの記事 『なぜ、歯ブラシで、歯ぐきは傷つくのか? (歯ブラシの動かし方)』
今まで患者様に動かし方が、
「細かすぎます」
と、言ったことはありません。

力を抜きすぎた患者様に対して、
「歯ブラシ、落ちますよ」
と申し上げることも大変に少ないかと思います。(笑)

さて、なぜ患者様は、歯磨きで力を入れてしまうのか? ということですが、

多分、
「そんなんで、歯垢が落ちるのか?」 と思うから。
だと思います。

 何かの汚れを落とすときや、物を磨くとき、
私達は、ある程度、力をいれて擦ります。
汚れが落ちにくいと感じるときは、さらに力が入ります。

この習慣や、無意識の思いこみが、
歯磨きには通じない。

他ではとおる常識が、歯磨きでは非常識。

つまり歯の磨き方は、他とは違い、
例外的だという、認識が必要です。

 歯ブラシの毛先が、歯と歯ぐきの境目から、歯ぐきのほうに侵入しようと、歯面にくっついている歯垢に当たり、
その場で、ユラユラと、毛先が振動しただけで歯垢は落ちます。

大切なのは、歯垢を大きく取り去る、という感覚ではなく、その場に張り付いた粘着をとる。
張り付いた歯垢の場所を少しずらす、という感覚かもしれません。

この時、毛先の位置は動かさない。
「青い線」の位置から歯ブラシの毛の位置が動いていないのが分かりますか?

P1030834 point5 P1030833 point

一度、「歯と歯垢の接着点」に当たった歯ブラシの毛先を、わざわざ歯垢と離さず(移動させず)、その場で振動させてみます。
(歯ブラシの動かし方は、こちらの記事、『なぜ、歯ブラシで、歯ぐきは傷つくのか? (歯ブラシの動かし方)』

まさに今まで大きく力を入れていた方々にとっては、
「そんなんで、歯垢が落ちるのか?」 と思われるような、磨き方です。(笑)

 歯周病予防、改善には、この小さな歯ブラシの動かし方、細かい動きのほうが、大きく力を入れたものよりとても有効です。
歯と歯垢の接着点に的確に当たった歯ブラシの毛先を、わざわざそこから離して、移動させず、
その場所に毛先を当てたまま、接着点が剥がれるように毛先を揺らす、振動させるような感じです。

 歯垢を落とすのにはコツがあり、当て方が少し変わるとしつこく粘ついてなかなか落ちないということがあります。
確かに、患者様のご心配通り、「そんなんで歯垢は落ちない」場合もあるかもしれません。
ただ、今御説明した歯ブラシの動かし方で磨くと、歯ブラシを力強く大きく動かすより確実に多くの歯周病の原因となる歯垢の粘着が剥がれ、
歯周病の改善、予防にもとても効果のある磨き方をすることができます。

 他の物の汚れを落とすときとは、全く違う方法。
今までとは全く違う、感覚や動かし方に、始めは慣れず、「力を入れてゴシゴシ磨きたい」という気持ちになることもあるかと思いますが、
ぜひ担当の歯科衛生士さんの指導どおり磨いて、
力を入れずに細かく磨いても、
歯と歯ぐきの間に的確に毛先を当て、細かく動かすことだけで、歯周病が改善される、ということを、
体験して実感いただきたいと思います。

  力を入れず細かく磨く(「そんなんで汚れが落ちるのか」な磨き方)、
なぜそのほうが、大きく磨くより汚れが落ちるのかを検証した記事はコチラです。 『なぜ、「普通?の歯の磨き方」では歯垢が落ちないのか、検証してみました。(3面磨きの方法)』

歯垢を落としたら、あとは歯科医院に通う

 歯ブラシと歯間ブラシ(フロス)の使い方を覚えたら、あとは、定期的に歯科医院にメインテナンスに通院することがお勧めです。

ブラッシングが毎日できるか、習慣になっているか、という問題はありますが、
手っ取り早く歯科医院に通ってから考えましょう。

 ここから先は、プロの手助けが大きく影響すると思います。

 

  歯周病の病気、その原因と対策、歯垢を落とすこと等を御説明しましたが、
今日はその他に、健康な状態でも、歯科医院に通うメリットについて書いてみたいと思います。

 歯科衛生士は、歯ブラシや歯間ブラシ等でも患者様の歯を磨きます。

私も歯ブラシと歯間ブラシで磨いた後に、患者様に鏡で確認して頂き、
「やっぱり衛生士さんに磨いてもらうと全然違いますね。歯ぐきのハレが無くなってキレイになっている。
自分でも昨日一生懸命磨いたのですが、なんかホントに歯ぐきが違う」
と、ブラッシングを熱心にしていらっしゃる患者様に言って頂いたことがあるのですが、恐縮です。
実は実際、自分の歯を磨くより、患者様の歯を磨くほうが、はるかに磨きやすいのです。(笑)

 他人の歯を磨くときは、口の中を隅から隅まで、入り組んだところも何もしっかり、目で確認ができます。
しかも毎日毎日歯ブラシで患者様の歯を磨き、動かし方も力加減も毛先を当てる場所も知り慣れている歯科衛生士が、口の中にライトを当てて、両手を自由に使い、磨き上げる作業は、
歯科衛生士自身が、自分の歯を磨くときより、断然、磨きやすい。

 自分の歯を磨く作業は、見えないという大きなハンデの中、裏も表も隣接面も歯垢をしっかり落とさなければならないので、難易度が違います。

 自分の口の中を、「ここはこうなっているから…」と想像できる歯科衛生士とは違い、
歯の形を習ったこともない一般の患者様には、さらにハードルの高いことだと思います。

とくに鏡で見えない部分は、感覚に頼って磨く、ということになるのですが、
これが難しく、一度覚えて頂いても時間が経つとやはりクセがでてくる。

ここにどうしても歯垢や、炎症を起こしている歯ぐきの部分ができます。

 これはどうしても自分では気が付けない部分なので、ぜひ定期的に、歯科医院に通って歯科衛生士にみてもらって下さい。

また、プロの歯磨きは、同じ歯ブラシと歯間ブラシだけで磨いた歯磨きでも、プラークの落ち方、歯肉溝のプラーク除去とマッサージ、磨き終わった後の歯ぐきの状態は全く違います。
歯科衛生士のする歯磨きも、ぜひ経験して頂きたいと思います。

きれいに歯磨きしても、歯科医院に通う必要性は、
ご家庭での歯磨きで歯石が付かないように完全に防ぐことができない、ということにもあります。
患者様に非が無くても付いてしまった歯石の表面は軽石状に穴がたくさん開いており、その中入り込んだ歯垢は、歯ブラシで除去されることなく、歯ぐきに付き続けて炎症を起こしだします。

 これをある程度の間隔で取り除いたり、機械で磨き上げて滑沢化するなどしてケアしていくことは、ずっと歯周病を引き起こさず過ごすことの出来るとても有効な手段です。

 患者様御自身が家でのブラッシングを、100頑張っていると考えたとして、
それを歯科医院でのケアして菌を減らしておくこと等で200の効果にすることができることもあれば、
歯石等がついてしまい50の効果になることもある。
それがPMTC(歯科医院での機械を使った清掃)、歯石除去など定期的に歯科医院に通院する目的の一つだと思います。

同じ努力で違う効果が出るのは勿体ないので、さらによい効果を引き出せるように、
ぜひ歯科医院へ、通院されて下さい。

実はメインかもしれない「隣接面」。 (歯間ブラシの動かし方)

 今まで歯ブラシだけで毎日歯磨きをしていた患者様が、
歯科医院で、歯に「歯垢」(細菌)がついていることを聞き、
この「歯周病や虫歯の主原因になるもの = 歯垢」 を減らして、自分もずっと歯を残し、健康でいたいな、と思う。

「 歯垢を今より多く落とすこと。」

 その一番手っ取り早い方法は、

今まで磨いていなかったところを磨くことです。
(当たり前。(笑))

 歯ブラシの他に「歯間ブラシやフロス」などをプラスして併用して磨けば、
今よりグッとプラークは落ちます。
(歯科医院で「プラークスコア」(プラークの磨き残し指数)を付けられた方は、ぜひその数値の変化に注目してみて下さい。)

 「歯の表側、裏側」と言いますが、歯には他に、横の面(隣接面)があります。
この隣接面には、多くの場合にとなりの歯があり、
入り組んで狭い隙間となるため、歯ブラシの毛が届きにくい。

細菌にとっては、なかなか清掃、排除されることのない、居心地の良い居場所となっています。
なので実際は、ここがメインかと思うほど、歯垢が沢山つき、歯周病を引き起こす大きな原因になります。

 隣接面の歯垢を落とす、代表的な用具としては、「歯間ブラシ」と「フロス」。

これでしっかりと隣接面の歯垢を落とすことで、歯周病を予防、改善していくことが出来ます。

歯間ブラシを使うときの最大のポイントは、
いかに「歯と歯ぐきの間」にある歯垢を減らせるか、ということだと思います。

「具体的な歯磨き、ブラッシングのポイント」でも書いたのですが、

実は、歯周病の予防、治療のために最も歯垢を落とさなくてはならない部分、
「歯と歯ぐきの間」とは、正確にはココ(キワ)…、

P1030439 point2
…、では、なく、

コチラです。(詳しくはこの記事で。 『具体的な歯磨き。 ブラッシングのポイント』

(フロス(糸)が、『歯と歯ぐきの間』に入りこんでいる部分。(歯肉溝、又は歯周ポケット))

なので、歯と歯の間の隣接面を歯間ブラシで磨くときも、歯垢を落とさなくてはならないのは、
コチラ(歯肉溝、歯周ポケット)、と認識しましょう。

ただ、実際には歯間ブラシの毛先は、この歯肉溝の中までは届きにくいのですが、
歯垢の細菌は、歯肉溝の上の見える部分(落とせる部分、歯と歯ぐきの間の境目の「キワ」)に付着してから、歯肉溝の中に侵入していきます。

P1030439 point2
ここの歯垢を落とすことで、歯周ポケットの中に歯垢の菌が侵入するのを防ぎます。

このイメージを持って、「キワ」についている歯垢を出来る限り落とすと、歯周病改善、予防ができます。
歯間ブラシは、フロスほど、歯肉溝の中に毛先を入れ込めるわけではありませんが、
歯肉溝に入っていく歯垢をキチンと落とすイメージを頭において、「キワ」を清掃する。
この歯間ブラシの動かし方を見ていきましょう。
(傷が付かないように力加減は優しく調整してください。)

まず、多くの方がしていまう 「爪楊枝のように、食べカスがとれた時点で、満足」。は、 
歯肉溝の上についた「キワ」の歯垢を意識して落とさないので、同じ歯間ブラシをかけても、効果は薄いです。
なので大変、もったいない。

IMGP4086
このように歯と歯の間に入れれば、「食べかす」はゴロっと取れてきて、いかにも汚れが取れた感がありますが、
「キワ」についた歯垢はあまり取れません。

なので、「キワ」を意識し、

まず、手前の歯の、「歯と歯ぐきの間」、
ココの歯垢が取れるように歯間ブラシをしっかり当てて清掃し、

IMGP4096

次に、
奥の歯の「歯と歯ぐきの間」、に歯間ブラシの毛をしっかり当てて押しつけるようを意識して清掃する。
IMGP4092

まずはこの二カ所(手前の歯と奥の歯の「歯と歯ぐきの間」)に一度しっかり歯間ブラシを当てることが大切です。
しっかり当てたら、あとは、そのキワに歯間ブラシを押しつけ気味にしながら、あまり力を入れずゆっくり出し入れして清掃します。

この歯と歯ぐきの間(キワ)の歯垢を落とす。
その意識がないか有るかでは、同じ時間、同じ歯間ブラシをかけても、
歯周病改善の効果は全く違うものになります。

 フロスを使う場合は、無理のない範囲でしっかり歯肉溝の中にフロスを入れ、そこから上下に動かして清掃します。
膨らむタイプなど、太いタイプのフロスだと、歯垢が多く絡め取られると思います。
(詳しくはコチラの記事 「フロアフロス」 太くなるフロスで、効果てきめん。

 隣接面の歯垢が落とせるようになると、口の中の清掃状態は一気にグレードアップ。
急にプラークスコアが上がることが多いです。
(プラークスコアを付けていなくても、歯垢が落ちた効果は歯ぐきに如実に表れます。)

 お使いでない方は、歯ブラシ以外の補助用具(歯間ブラシやフロス等)を、ぜひお使いになってみて下さい。

なぜ、歯ブラシで、歯ぐきは傷つくのか? (歯ブラシの動かし方)

 今回は、なぜ歯ブラシで、歯ぐきは傷つくのか、
歯ブラシの動かし方を書いてみたいと思います。

 歯科衛生士は、ブラッシング指導をします。
初回、ブラッシング指導に入ると、次回までに患者様が一所懸命磨いて下さり、歯ぐきに傷をつけてしまうことがあります。

「丁寧に磨こう」、「歯垢を落とそう」と磨いているときほど、傷がつきやすい。
今日はこれを回避するため、歯ブラシで歯ぐきを傷つけにくい方法を書いてみたいと思います。

ちょっと医学っぽい表現になりますが、(笑)

 歯ブラシで歯ぐきに傷がつく、ということは、
歯ぐきの表面にある、上皮の組織片がはがれた、ということだと思います。

簡単に、「こすった」という状態ですが、(笑)
歯ブラシで、歯ぐきの表面をこすり、
ある程度多量に組織片がはがれると、「傷」になります。

 傷をつけにくくするポイントは主に、「力加減」と、「歯ブラシの移動」にあると思います。

「力を入れて、こすった」、を意識して回避します。
 歯ブラシの毛先が歯ぐきに当たった状態で、そこから移動する、これを出来る限り少なくすること。そして、力を抜いてみます。

 歯ブラシの動きを、よく「ストローク」という言葉で表すのですが、
例えば、写真の「青い線から黄色い線まで」5㎜の間があるとして、この間を動かすことを、
5㎜のストロークと言ったりします。

 今回、写真を見やすくするため「5㎜」のストロークとしていますが、
実は歯磨きのストローク、バス法は「1㎜」、スクラビング法も「1~2㎜」ほどのストロークで磨くのがよいそうで、
「5㎜」は大きすぎるようです。

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IMGP3958 point3

IMGP3951 pont3

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ついついしてしまいがちな、「5㎜ぐらいの大きなストローク」ですが、
これは大きく動かしすぎです。あまり大きく動かさず、1㎜ほどのストロークで磨いてみます。

さて、1㎜のストロークとはどれぐらいか、と考えると、実際には、ほとんど動かしていないのではないか、と思われるぐらいの小さな動きです。

なので私は、ほとんど動かさない、0㎜のようなストロークでお勧めします。

0㎜のストロークで歯垢は落ちるのか?と思われるかも知れないのですが、
歯垢は、毛先が当たり、それが振動することで落ちます。
毛先の当たった位置から、毛先の位置を動かしても、その移動で歯垢が落ちるわけではなく、歯垢に毛先が当たった状態で、そのまま振動すると歯垢が落ちます。
剥がれる、という感じにちかいと思います。
毛先が、きちんと当たっていること、それがその部分の歯垢が落ちることになります。

逆に、このストロークが大きいと、歯ブラシは歯間などの細かい場所に毛先が入ることなく通り過ぎることになり、
歯垢はあまり落ちない磨き方になります。
(詳しくはコチラの記事。『なぜ、「普通?の歯の磨き方」では歯垢が落ちないのか、検証してみました。(3面磨きの方法)』

そこでストロークを細かくし、歯間などの凹凸にも毛先を届かせて、歯垢が取れるように磨きます。
毛先の位置をほとんど動かさず、細かく磨く、
こうすることで、歯と歯の間など細かいところにも毛先が届き、そこの歯垢が取れますし、
歯ぐきが大きく擦られるということも減ります。

 さて、0㎜のようなストロークで磨くとは、どんな感じでしょうか。

毛先の位置を変えずに、
歯ブラシを手前と奥に振動させます。

ちょっと極端に、毛先の向きだけ変えた写真を載せてみます。

まず毛先の位置を青い線のところで固定したまま、
歯ブラシをその場で奥に振動させ、

IMGP3966 point3

 

次に手前に振動
IMGP3967 point3

青い線の毛先の位置を動かさずに、振動させていることが分かりますか?
写真では奥と手前に傾いた毛の向きを見やすくするため、実はかなり位置が動き、力が入っていますが、
実際に磨くときは、毛先を当ててその場で揺らすようにすれば、毛先の位置を移動させないことができます。
また力を入れないことも大切ですので、毛先を当てた場所から動かさず、「ただ、当たっているだけ」というぐらいの、弱い圧で磨きます。

なので、実際にはこんな感じです。

P1030834 point5 P1030833 point

 毛先を一度当てた、歯肉溝のところから動かさずに、ただ振動させています。
揺らしているだけの、微妙な動きなので、
写真で見ると、非常に見にくい。(笑)
圧も、ただ当てているだけのような力加減。
歯ブラシを歯ぐきに当てているとき、とにかく力は入れません。

 実はこういう風に、ほとんど移動しないようにして振動させ、無意識にずれてしまったくらいの移動、それが1㎜のストロークです。

始めから1㎜のストロークで磨こうとすると難しく、気づけば5㎜など大きなストロークになってしまうことがとても多いです。
なので、1㎜で覚えなくてもいいのか?と気負わず、0㎜ストロークで磨くことを覚えた方が、すぐに正しい磨き方ができます。

 ちなみに私は、患者様の歯を磨くとき、いつもこの0㎜のようなストロークで磨いていました。
 患者様の歯ぐきは、炎症を起こしていることがとても多くて自然とそのようになったのですが、
つまり、こういうことです。

歯垢は歯ぐきに炎症を引き起こそうとする細菌の塊なので、
歯垢に触れない状態の続いた歯ぐきは引き締まり、組織同士が密で硬い状態、
軟らかく擦られても、比較的、傷がつきにくいのですが、

歯垢がついて時間の経った歯ぐきは、歯垢の中の細菌が、歯ぐきの炎症を引き起こして、
歯ぐきの表面が軟らかく、組織片がはがれやすい状態になっています。

そこで、なるべく傷をつけずに歯垢を取り除く、
それが、0㎜ストローク(毛先の位置を移動させない、つまり擦らない)、 そして、力を入れないで磨くという方法でした。

 歯ぐきに歯ブラシの毛先(機械的な刺激)が当たる以上、これで組織片がはがれないとは言えないのですが、歯垢がキチンと取れ、歯ぐきがキチンとマッサージされ、傷のない、完璧なプロとしての歯磨きを心がけます。

決して患者様の歯ぐきは傷つけられず、歯垢はしっかりと落とさなければならないので、このような磨き方になるのですが、

患者様の口の中は完璧を目指してキチンと磨きますが、
自分の口の中はもう少し適当に磨きます。(笑)
(歯ぐきも軟らかくなく、力もいれず、傷つかないので。(笑))

 歯周病にかかられて歯ぐきに炎症の残る方、まだ、引き締まった健康な歯ぐきになる前の方で、
でも担当の歯科衛生士さんに、歯ブラシを当てて下さい、と言われているぐらいは歯ぐきの状態の安定している方は、
この0㎜のようなストロークで力を入れずに磨くと、傷つきにくい磨き方が出来ると思います。

そして炎症が無くなったあとでも、0㎜のストロークで磨くと、簡単に(というかほとんど無意識にでも)1㎜のストロークで磨けるようになります。

 とくに、「今日は歯医者さんへ行く、キレイに磨いて行かなきゃ」と気合いが入る日、
今日はぜひキレイにしたいと気合いが入る日は、
けっこう高確率で、歯ぐきが傷つきます。

(歯医者さんに行く日は、 というわけではありませんが、(笑))ぜひ0㎜のようなストロークで磨いてみて下さい。

具体的な歯磨き。 ブラッシングのポイント

 今回は、歯周病を予防、治療する際の、具体的なブラッシングのポイントについて書いてみたいと思います。

まず、歯周病の原因となる細菌(歯垢(プラーク))。

これがどこにいるのかを把握してみましょう。
ココの歯垢が取れれば、歯周病は劇的に改善することが多くあります。

「歯周病予防の歯磨きでは、『歯と歯ぐきの間』を磨いて下さい。」と聞いたことがあるかも知れないのですが、

この「歯と歯ぐきの間」、
正確には、ココ…
P1030439 point2
…、では、ありません。

「いやいや、ここも歯と歯ぐきの間でしょ?」
と言われてしまえばその通りなのですが、(笑)
そして私も、細かく説明する時間の無いときは、ついつい「ココ」とお知らせしがちなのですが、

間違いではないけど、
円周率を3.1415926…ではなく、ゆとり教育で「3」と教えちゃうみたいな。
少しはしょった感のあるお伝えの仕方というか。(笑)

で、どこなのかというと、
ココ。

  フロス(糸)が、『歯と歯ぐきの間』に入りこんでいるのが分かりますか?

この隙間を『歯肉溝』または『歯周ポケット』と呼ぶのですが、ここに入り込んだ歯垢(プラーク)が、歯ぐきや、歯を支えている骨(歯槽骨)を攻撃するのが歯周病です。

ただ、歯ブラシでこの隙間に入り込んだ歯垢までをとるのは、限界がある。
なので一見、どちらを「歯と歯ぐきの境目」だと認識しても変わりがないのではないか、と思われがちなのですが、

これを知っているのと知っていないのでは、磨くときの意識が違い、歯垢の落ち方、歯周病改善の度合いが変わってきます。

例えば「バス法」は、この「歯と歯ぐきの間」の歯垢を少しでも多く落とすように磨く、歯周病に有効なブラッシング法なのですが、
この正しい「歯と歯ぐきの間」の場所を知り、意識すると、比較的間違いなく、ブラシの毛先を的確に当てられるようになります。

バス法の、毛先の当て方は、こうです。
P1030517

歯ブラシ毛を歯に対して45度の角度で当て、毛先を『歯と歯ぐきの間』 … 『歯肉溝、または歯周ポケット』の中に入れるように磨いているのが分かりますか?

実際に、歯肉溝に毛先がどれだけ入っているか、という問題よりも、
そこを意識して歯ブラシを当てることで、歯周病の原因となる歯肉溝に入り込む歯垢を、意識しないときよりも多く落とすことが出来ます。

 ブラッシング、最大の肝は、「当て方」です。

細かく言っていけば色々あるブラッシングですが、
歯周病予防、とりあえず、「当てること」ができれば、なんとかなります。
(というか、ここを始めなくては、先がありません。)

どこの歯垢を落とすと効果的なのかを意識して、「当て方」をまずマスターします。

 慣れないと、最初からこのような角度で当てにくいので、
まず、歯の横に歯ブラシを置き、
P1030516

そこから毛先を滑らせて、角度をつけると、

P1030517

45度の角度で当てやすいかと思います。

この時、ぜひ『歯肉溝、又は歯周ポケット』を頭の中で意識されて下さい。

まずは、これをマスターするところから。

(この続き、詳しいバス法は、こちらの記事に書いています。
9, 後半 「歯周病予防の歯の磨き方。ブラッシング指導。」 詳細。
参考にされて下さい。)

 さて、歯ブラシには、歯垢を落として清潔にする、という目的がありますが、
一方でやり方を間違うと、歯ぐきを傷つけたり、歯ぐきがすり減ったり、などという弊害もあります。

前歯など、歯ぐきがすり減ったりするのを極端にさけたいところなので、
症状によっては、バス法を使わないこともあります。
歯肉溝に向けて歯ブラシを当てることが、合わないなと思う方には、前歯へのバス法をお勧めしません。
フロスで歯肉溝の細菌が落とせますので、そちらが有効だと思います。

必ずしも歯肉溝の中に歯ブラシの毛先を入れ込むようにまでしなくても、歯ブラシを優しく当てると「キワ」の歯垢は取れます。
力を抜いて優しく、細かく歯ブラシを動かして、傷や弊害のおこらないようにキレイに磨いていきましょう。

次回は、その弊害に気を付けた歯ブラシの動かし方のポイントなどについて書いてみたいと思います。

(歯ブラシの当て方、皆様個人が当てて良いかの判断は、その方の症状によって違い、このサイトで皆様の症状をみないままお勧めすることはできません。
 ぜひ歯科医院でブラッシング指導に入って頂き、皆様個人の症状に合う方法を習って下さい。
 症状ややり方によっては傷が付いたり、歯ぐきがすり減ったり、弊害がでることもあるので、このサイトのやり方だけを見て実践するのはよくありませんが、
現実に歯科医院でブラッシング指導を受けられている方のため、ブラッシングの理解をより深めて頂く参考資料としてお読み頂ければと思います。)

次、『なぜ、歯ブラシで、歯ぐきは傷つくのか?』(歯ブラシの動かし方) へ