「テーパード毛」(極細毛)の歯ブラシの使用所感

 現在、歯周病用の歯ブラシには、「テーパード毛」という毛の形状がよく使用されています。
市販品に限らず、歯科用歯ブラシでも使用され、また宣伝も大きくされているので一般的な認知度も高いかと思います。

 「テーパード毛」は、毛先を細く細く削っていった極細毛のこと。
毛の先端にいくほど細くなり、断面の少ない、いわゆる穂先の毛のような形となっています。

生まれたての赤ちゃんの毛髪ように、一度も切られたことのない断面のないような毛先の形、なのですが、
歯ブラシに使用するテーパード毛は、頭髪のイメージとは違い、「すくっと直線で立っている」。
根本はしっかりしていて強く直線で立っているのに、毛先が極細なので、
つまり少し、「針」のようなイメージ。
ただ、よく見ると、毛先の先端部分は、ナイロン毛が細すぎて直線ではなく先が曲がり、右に左に揺れる柔らかな感じ、
この細さで歯ぐきへ当たった感じは針というほどではなく、一見、柔らかな印象になります。

さて、このテーパード毛(極細毛)。

実はこれを、どうとらえて良いのか…。

 テーパード毛にも太め細めがあり、歯ぐきの敏感な方、痛くなりやすい方は細く軟らかい方がよいそうです。

私は「歯ぐきが敏感な方、痛くなりやすい方」だったようなのですが、気づかずに太めを使用してしまいました。
正直、使ってみてびっくり。 初めて自分が「歯ぐきが敏感な方、痛くなりやすい方」だったと気づいたのですが、時すでに遅し。
太めのテーパード毛の歯ブラシで、毛先を歯肉溝に入れるような磨き方(バス法)をしてみたら、
チクチク感、使用後のヒリついた感じがあり、ブラッシング後にもこの感じがしばらく残っていました。
私の歯ぐきは健康で、ブラッシングによる出血も傷も、肉眼では確認されないのですが、
テーパード毛ということを意識せず、普通の歯ブラシのように毛先を歯ぐきの方に向けたバス法で磨いてしまったことで、たぶん、目に見えないミクロの世界で歯ぐきを擦ってしまったのだと思われ、
この歯ブラシは、この磨き方では、私の歯ぐきには合わないな、と思ったのですが、

この歯ブラシを使うと、確かに歯ぐきの炎症は取れる。

 チクチク感、痛みがでやすいので、磨き方には注意が必要。
でも、歯ぐきの炎症を取る効果のある毛先。

なに? このブラックジャック的な感じ。(笑)

腕はあるけど、一癖ある、みたいな?。(笑)

チクチクするのに売れている、皆は痛くないのかな?
と思って調べてみたところ、確かな情報ではないのですがネットで、3割ぐらいの人に痛みがでることがある、みたいな文章を発見。
ネット情報で3割と読んだだけなので、この数字の信憑性は不明ですが、どうやら痛みの出る少数派に、入ったようです。

 テーパード毛の、チクチクとした刺激は、
先端が細くなっている分、針のような構造になっていて、組織に刺さる、という感覚だと思います。

これは、毛先の表面が細く軟らかくても、根本はしっかりしていて、毛自体は強く真っ直ぐ立っているため、
毛先に指を当てて押しつけると、
どこかの時点で、「刺さる」感じがする。
当たる面積が極狭くなる分、同じ力でも意外に刺激が強いと思います。

例えば、歯周病治療の為の歯ブラシとしては、テペ歯ブラシのエクストラソフト(ラウンド加工(毛先を丸くする加工)が施された、普通の毛先の歯ブラシです)も有名ですが、
(テペ歯ブラシの使用所感記事。『スウェーデンで約8割が使用する 「TePe (テペ) 歯ブラシ」』

こちらは、一本一本の毛先が当たった場合にも、丸く加工された毛先断面の面積がある程度あり、その全体で力を受け止めるため、組織に当たる面積が広く、刺さるという感じはあまりありません。
さらに、毛の硬さが大変軟らかく、植毛の本数を増やすこと(高密度植毛)で、多くの毛が同時に歯ぐきに当たる構造なので、歯ぐきにかかる力を分散し、当たったときの刺激をなるべく低く抑え、
少しの刺激でも出血、傷になる、歯周病の軟らかい歯ぐきにも使える工夫をしています。

  テーパード毛は刺激が強く、使い方と、その方個人の歯ぐきによっては、ヒリつく感じがでることもあるので、かなり上級者向きの歯ブラシなのかもしれません。

歯科医に必要だと認められたときに、歯科医院で使い方をきちんと教わり、指示どおりにつかうべき歯ブラシだと思います。

私の使い始めの所感としては、
歯周病治療のブラッシングは、このテーパード毛が必要と言い切れる歯ぐきの状態は、そんなに多くなく、
普通のナイロン毛をラウンド加工している歯ブラシのほうがが無難で広く使いやすいのではないかと感じています。

 歯科衛生士は、歯周ポケット(歯肉溝)の深さを測定する時、
歯肉溝のなかに細い器具を入れて歯肉溝の底に触りますが、

ただその時、決して力を入れず、そこが傷つかないように細心の注意を払っています。

歯肉溝の中にテーパード毛を入れることで、確かに歯ぐきレベルは改善されることもありますが、
それを普段あまり意識せずに力強く行うと、目には見えなくてもそこは傷がつきます。
そう考えると、一般的な歯周病治療に必ずしもテーパード毛を使う必要はなく、
まず、普通の毛先の歯ブラシで歯垢を落とし、歯ぐきの炎症を改善して、健康な歯ぐきにすることを前提に、
それでも、症例によって、普通の歯ブラシよりこのテーパード毛の歯ブラシのほうがいいというケースがあれば、ケースバイケースで使うのがいいように感じました。

 現在、テーパード毛を使った歯ブラシの宣伝を見ると、
この細く細く削られた毛先が歯肉溝に入り込み、歯肉溝(歯周病ポケット)のなかの清掃をする効果があるのだそうです。
また歯周ポケットにやさしい、という説明もあり、必ずしも私の使用所感が歯科全体の意見ではなく、
テーパード毛には、歯科医師の中でも賛否両論あるようです。

 このテーパード毛の毛先で、歯肉溝の中の歯垢がおとせるのか、というと分かりませんが、
歯肉溝に迫る細部、細く入り組んだ部分を毛先が触ることで歯ぐきレベルは改善することもあるように感じます。
実際に使ってみると、テーパード毛が歯肉溝のなかに入り込んでいくのを、肉眼でも見ることが出来ます。
問題は、毛が垂直方向に当たったときの圧が強く、歯肉溝の底に毛先が当たり、押されたり刺さるような状態になりやすいことなのではないかと感じています。

どちらかというと高度で上級者向き。針にちかい感覚もあり、間違った使い方をしないように注意がいります。
歯肉溝の中に毛先が入るということは、そこに作り上げられている細菌叢が全く邪魔されることなく活発に歯ぐきの炎症物質を出している状態の、細菌叢の一部を崩し、少しでも炎症物質の出にくい状態にすることが出来るので有効だと思いますが、
このテーパード毛を使用するようになってからの期間が短く、まだ長期的予後について不明なため、一般の方々が長期間使い続けて何か弊害がでてくるのかこないのかは、現時点では判断がつきにくいところだと思いました。

  確かに歯科衛生士が歯肉溝内を意識した清掃をすることで、PMTCの効果を上げることを思うと、
この毛先は、歯ぐきの状態には効果的に変化をもたらすことができるかも知れません。

 ただ、このテーパード毛の歯ブラシは、極細すぎる毛先先端のため長さも微妙に不揃いで「ここの歯垢を」と場所を的確に狙うことは難しく、
針のように細く刺さる上、直線で当たったときの圧が、かなり強いことを考え、
また極細の毛先は肉眼で確認できなくても、かなり早期に痛んでしまうこともあり、

場合によって使うことのある歯ブラシかと思いますが、
私の個人的な所感としては、自分の歯ぐきに合わなかったこともあり、万人向きではない歯ブラシなのかもしれないと思います。

以上が私のテーパード毛の歯ブラシの使用所感。

歯ぐきの炎症をとる効果はありますが、適用するケースや技術が必要なところのある歯ブラシ。
歯肉溝という繊細な場所に入り込める分、注意が必要な歯ブラシ。といったところです。

 使うときは自宅でPMTCの一部をするぐらいの慎重な感覚で、歯肉溝の底を垂直に強くつつくことがないように注意する必要があります。

歯ブラシでテーパード毛ではないものでも、歯垢を落とせば歯周病予防は出来ます。
普通の毛先の歯ブラシで歯と歯ぐきの間(境目)に毛先を当て、力を入れず細かく動かせば、
歯ぐきの炎症が引いてくる状態を確認することができます。

 テーパード毛の歯ブラシは、もう少し使い込んだら、所感も変わってくるかも知れませんが、現時点ではこんな感じです。

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