まず「前歯だけでも、フロスを使う」。 歯周病で歯間乳頭を失う前に守る。

 歯周病は、発症しても治療し歯垢の少ない状態にすることで、治癒します。

歯周病になってしまえば必ず歯を失ってしまう、という訳ではなく、
病気であることを発見し治療に入った時点で、どこで進行を食い止め、歯を残すか、という戦いが始まります。

歯科医院で、プロのケアを受け、毎日の歯磨きで歯垢を多く落とすことで、歯周病を治癒させる。

この時、腫れていた歯ぐきは引き締まってどんどん健康に近い状態になっていくのですが、
同時に、いままで腫れた歯ぐきで隠されていた部分、
歯槽骨の無くなった部分の歯ぐきは、腫れが引き、消えていきます。

 そして見えてくる、歯と歯の隙間。

 これで、歯周病による抜歯の危険が遠ざかり、この患者様がずっと長く御自分の歯で噛める、
そう思う歯科医師、歯科衛生士としては、歯周病の治癒した患者様と共に、喜びを分かち合いたいと思いますが、
健康だったときと同じような歯ぐきの状態をイメージする患者様にとっては、
歯と歯の間の空いてきた状態に違和感があり、
「歯ぐきの状態、良くなってきていますよ」と、歯科医師や歯科衛生士から言われないと、
歯周病が治癒し、良くなってきている変化、状態だと分からないことがあります。

そして、健康だった御自分の口元から、歯間乳頭が消え、
「これが良くなった状態なのだろうか?」と思ってしまう患者様の心の片隅の声に、
歯科衛生士である自分は、寄り添えているだろうか、と思うことがあります。

寄り添っても、「その時点では」もうそれ以上どうしようもない、ということ。
もう仕方ない、という状態ではあるのですが、

今日は、「その時点」になる前に防げるように、ぜひ、皆さんに予防して頂きたく、記事を書こうと思います。

 歯間乳頭(しかんにゅうとう)とは、歯と歯の間の三角形状になっている歯ぐきのことです。

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青い丸の部分。

この歯間乳頭は、歯周病になる前の健康な状態では、三角形上に尖った形をしていますが、
歯周病が進むと三角形の尖りが消失し、平坦な横一直線のような歯ぐきの形になっていきます。
その際、今ま三角形状の歯ぐきに覆われて隠れていた歯と歯の間の「隙間」が、露出し、
「歯と歯の間が空いた」ように見えることがあります。

 これは歯周病に罹り、歯ぐきの下の歯槽骨が溶けてしまうぐらい進行した歯ぐきには、いたしかたのないことで、

炎症におかされた歯間乳頭部の歯ぐきがなくなるからといって、磨かずに放っておくと、歯周病は最終的に抜歯をするところまで進んでしまう道を行ってしまうことになり、
歯間乳頭部だけではなく歯自体が無くなることになるので、
歯間乳頭がなくなると分かっていても、失うものをこの「一部だけ」にするべく、歯周病の進行を止めるために歯磨きをする、という方法をとります。

歯間乳頭がなくなった歯ぐきは、歯垢が少なくなり健康的にはなりますが、
歯間乳頭が残っている、歯周病に罹る前の、健康な歯ぐきの美しさには戻りません。

これは歯周病になってしまった以上しかたのないことですが、ここを守るためには、歯周病になる前に予防するしかありません。

歯間乳頭が失われて一番残念に思うのは、主に前歯の部分。見た目です。

 奥歯がなくなれば、前歯でものを噛むことになり、咬み合う衝撃から、出っ歯の状態で前の方に傾いてきたり、
結果見かけもあまり良くなくなるので、奥歯は大切、決してぞんざいにして良いというわけではありません。

ただ、日本人の約5パーセントしかフロスを使っていない、と考えると、
そのネックになるのは、奥歯にフロスを使うときの難度が高いからなのではないかと思います。

ここしかしなくていい、ということは決していえません、
歯周病にならない為に、全部をきちんと磨きましょう、
と申し上げますが、

やらないぐらいなら、一部だけでもやったほうがいいと思います。

歯科医院でフロスを勧められ、それでもなかなか習慣付かない方は、まず、一番使いやすい、前歯だけでも、フロスを使う、
このことは大切です。
上の前歯は一番使いやすいところなので、ここから始めてみましょう。
 奥歯は入るところだけでも全て歯間ブラシを入れてしっかり磨く、
一番細いサイズを試してみて、しばらく置きにチェックすると、今まで入らなかったところが入るようになっていることもよくあります。
そこから始めてみるのが第一歩になるかもしれません。

ぜひ歯科医院に行って、歯石除去やクリーニング、ブラッシング指導などの定期的なケアを受け、
歯周病を予防されるといいと思います。

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