歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院

 歯科衛生士目線で思う、良い歯科医院。

これは私の個人的な意見なので、これをしないから良くない歯科医院ということでは全くありません。
むしろ、している歯科医院の方が、少数派なのかも。

考えたら、これをすることによっての料金の請求はしていなかったと思うので、歯科医院にとってはボランティア?、コスト的には赤字になることなのかも知れません。

(えー…、「これ」って何? って感じの書き出しですが。(笑))

そんな、ちょっとハイグレードかもしれない、私の良いと思う歯科医院は、

「顕微鏡で、歯垢(プラーク)を見せてくれる歯科医院。」

(「これ」は、「歯垢(プラーク)を顕微鏡で見せてくれる」こと。(笑))

 

 私の歯科衛生士のお仕事の一つは、通院されている患者様お一人お一人に、
お口の中から歯垢(プラーク)をとり、顕微鏡でお見せすることでした。

ただ、
今まで私の行った他の歯科医院(転勤族だったりして数が多い)で、見せてくださったのは、1件だけ。
もしかしたら、歯周病にかかる前の段階ではあまり見せてもらえないのかも。

 少し驚いたのですが、考えてみたら顕微鏡でプラークを見せて説明する、そのこと自体で料金をいただいていたわけではなかったと思うので、
逆に、時間や人件費、器具、等々のコストがかかることだから? かもしれず、
(そう考えると、もしかしたら、ボランティア?)
その時間を赤字にしてまで歯垢(プラーク)を見せていないということが、悪いことというわけではないと思います。

 ただ、歯科衛生士の立場で個人的には、
これを見せないで歯周病予防などブラッシング指導やケアに入るのは、厳しい感じです。

 長い期間にわたって病気を防ぎ、歯のある状態を保つために大切なのは、「歯垢を落とすこと」。
とくに歯周病などはテキメンで、歯垢が多ければ歯ぐきが炎症を起こし、少なくなれば改善していくのを、現実に目にすることが出来ます。

 以前、歯科医師のサイトで、この病気の「原因」に対する対策をとらずに、歯を削って詰めるような治療だけをすることは、
沈みかけている船の、「船底に穴の開いた船の穴をふさがず、ただ水を掻き出しているだけの作業だ」というようなこと読ませていただいた記憶があるのですが、
(どのサイトか、言葉の記憶しかなく、リンクつなげませんでした。すみません。)

長い期間病気を防ぎ、歯のある状態を保つためには、病気の予防にも治療にも「歯垢を落とす」ことが大切で、歯科衛生士はそのためにブラッシング指導などに入ります。

そのブラッシング指導で何が大切か、というと、「モチベーション」(動機づけ)。

そもそも「なぜ、歯を磨かなくてはならないか」、というその原因を知り、
「ぜひ歯を磨きたい」とか、「磨こう」、と思っていただくことだと思います。

 患者様に、「磨きたい」、「できれば口の中をキレイにしたい」、という気持ちがなく、
ブラッシング指導に入ることは、あまり意味がありません。

今後、歯を抜くか抜かないかの境目になって、
「磨ければ残せるかも」という状況下で、急に磨こうというやる気(モチベーション)がつくことはあると思いますが、
そこまで強くなくても、まず「歯垢の落とし方をマスターしよう」、という気持ちが患者様にないのに、ブラッシング指導はできません。

 そのモチベーションの導入に使われるのが、歯垢(プラーク)の正体を見ていただくこと。
普段何気なく目にしている自分の歯垢(プラーク)が生きている細菌であり、
その中でうごめく菌を実際に目にすると、
多くの方は、「これを落とそう」、と思われます。

もちろん、必ずしも顕微鏡で歯垢をお見せすることだけがモチベーションの導入ではなく、他のやり方もそれぞれにあると思うので、
必ずしも「顕微鏡で、歯垢(プラーク)を見せてくれる歯科医院。」でなくても、別のそれぞれの方法で、ブラッシングの重要性を教えてくださるところがいいと思います。

 

 よく歯科業界の中では、髪を切るのに美容室などでお金をかけるのに、
なぜ、ずっと健康を保つためのブラッシング指導に、喜んでお金を使おうとしないんだろう、
というようなことが言われたりします。

患者様が高齢になるにしたがって歯を失っていく現実を、毎日の診療でまざまざと見せつけられる歯科の専門家にとって、
(歯を失うと言っているのに)歯周病を防ぐ歯の磨き方に興味がなかったり、それが大変でもせめて歯石除去やクリーニングなどのケアになるべく通おうとする、という雰囲気が感じられない患者様が、
不思議に思えてしまうこともあるからだと思います。

 

 アップル社の設立者の一人、故スティーブ・ジョブズ氏の名言といわれるものの中に、

“「フォーカスグループによって製品をデザインするのはとても難しい。 多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」”

という言葉があるのですが、

多くの方々が今便利だと思ってお使いになっている、携帯のメールやiPhoneなどなど、現代の機器は、
もともと需要があって、それに応えるように作られたのではなく、

もともと消費者が「欲しいとも思っていなかった」ものを形として提示させられたことで、
欲しいという需要がうまれ、普及しました。

 つまり今、患者様の中で「ぜひブラッシング指導をしてほしい」と思う方々ばかりでなく、
もし歯科医院で勧められたら、「お金を払ってまで習ったほうがいいものなのか」と、疑問に思う方もいらっしゃるように思いますが、

 それはやはり、ブラッシング指導や歯石除去、歯のクリーニングなどの定期的なケアを、
受けるか受けないかで、将来の自分のお口の中、生活がどんな運命をたどるのか、
そのハッキリとしたイメージが、明示(形として提示)されていないからなのではないか、と思います。

 知ればきっと、磨きたくなる、歯科医院に行きたくなる。
患者様ご自身が、「自分は何が欲しいのか」自覚されると思います。

 

「顕微鏡で、歯垢(プラーク)を見せてくれる歯科医院。」
これは必ずしも、この通りでなく、いろいろなやり方があると思いますが、
ただ、今悪くなっているところを治療することだけでなく、
将来にわたっての患者様の一生の健康を考えて、予防や治療のプランを立て、カウンセリング、治療などをしてくださる、と感じる歯科医院に通われるのがいいと思います。

 

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