「磨いているのに、磨けていない」と、歯磨きではよく言われます。
今回は、そのことを考えてみます。
皆様、写真の中の「丸で囲われた部分」をじっと見つめて下さい。
この写真の、歯と歯ぐき間に隙間があるのが分かりますか?
(ちょっと、分かりにくい。(笑))
えー……、実際の口の中と同じように分かりにくい写真となってしまったのですが、この歯と歯ぐきの境目の部分には、隙間が空いています。
なので、こんなことをしても、あまり痛みはありません。
この隙間は健康な歯ぐきでも、2㎜ぐらい空いているので、器具の先は痛み無く入ります。
ここが「歯肉溝」(3㎜以上の深さになった場合、「歯周ポケット」と名称が変わる)と呼ばれるところなのですが、
患者様の歯磨きについて、歯科医師や歯科衛生士は、「ココ」を注目して見ています。
そして、ココ(歯肉溝)の注目度合いが、ことのほか大きい。
どのくらい大きいかというと、
「ココ」が磨けていたら、他に多少汚れが残っていても、
「キレイに磨けていますね」
と言われ、
逆に、
他がどんなにキレイに磨けていても、「ココ」に歯垢が残っていたら、
「磨けていませんね」
と言われる。(ほぼ100%)
つまり、
患者様が磨いているのに、「磨けていない」
と言われるのは、
「患者様が磨いているのに、
歯科医師や歯科衛生士の思い通りの所が、磨けていない。」
という、実はワガママな言い方なのかもしれない。
ということに最近気が付きました。(笑)
何も言わずに「歯を磨いて下さい」と歯ブラシを渡され、
歯科衛生士の前で一所懸命に歯を磨いてみたら、
歯科衛生士に、
「普段、歯としてよく見ているところはあまり注目していません。問題は、
日常生活でほとんど注目されていない「ココ」です。」
と、歯根を指さされる。(笑)
これが星 飛雄馬(ほし ひゅうま)(by 昭和のアニメ「巨人の星」)のお父さんなら、
「だったら最初からそう言えっ!」
と、ちゃぶ台ひっくり返すかも知れない…。
「そこが歯なのかっ!」
と、暴れ出すかも知れない…。
と思うところです。
(想像力豊かすぎ。(笑))
まだ、健康な歯ぐきの人なら、ココ(歯の根元)は「歯」の一部ですが、
歯周病でそこを磨かなければならない多くの方々は、歯ぐきの位置が下がり、
そこはもはや、歯というより、「歯根」になります。
実は、こういう「患者様の考えているところ」と、実際に「落とさなければ歯周病が防げないところ」、
この歯ブラシの毛先を当てて欲しい「場所が違う」というだけではなく、
実際に歯の形には丸みがあって、その左右表裏、円周全部を隅々まで磨くのは難しいため、
歯は本当に「磨いているのに、磨けていない」ということになりやすい場所で、
この言葉は間違いではないのですが、
(詳しくはコチラの記事をご覧下さい。『なぜ、「普通?の歯の磨き方」では歯垢が落ちないのか、検証してみました。(3面磨きの方法)』
この歯の丸みの他に、さらに、普段注目することの少ない「歯の根元に注目しなければならない」、ということが重なって、
ダブルで磨けていないということになっているという気がします。
なので、これからブラッシングするときは、歯だけでなく、歯の根元に注目してください。
えー…、歯の根元に注目して頂きたいあまり長い話になりましたが、(笑)
歯周病予防と治療は、とにかく患者様自身が、歯の根元に注目し、歯ブラシを当てることがとても大切になります。
こんな感じ。
歯の根元にポイントを絞って、45度の角度から歯ブラシの毛先を当てています。
少し別の角度から見てみましょう。
「バス法」は、歯と歯ぐきの境目のところに、歯ブラシを45度の角度であてます。
気持ちとしては、歯肉溝の中に毛先が入れるような感じですが、軟らかい歯肉を触るため、ここで力を入れて動かすのは避けます。
ただ毛先を当てるだけのような力加減で、毛先の位置を全く動かさないで揺らすような感覚の方がいいかもしれません。
慣れないと、最初からこのような角度で当てにくいので、
まず、歯の横に歯ブラシを置き、
そこから毛先を滑らせて、角度をつけると、
45度の角度で当てやすいかと思います。
これができたら、後は毛先を移動させずに、力を抜いて揺らすだけです。
(歯磨きの仕方は、必ず歯科衛生士さんのブラッシング指導を受けて実践されて下さい。軟らかい歯ぐきは力を入れすぎるとすり減るなど弊害の出ることもあるので、歯科衛生士さんに御自分に合った方法を聞いて磨きます。
(必ずしも御自分にバス法が合っているとは限りません)
歯科医院で「ブラッシング指導を受けたい」と希望すると受けられます。)
まず、一番にどこの部分の汚れを落とさなければならないのか、
どこが重要ポイントなのか、と意識して磨くことで、的確な歯磨きが出来るようになると思います。