9, 後半 「歯周病予防の歯の磨き方。ブラッシング指導。」 詳細。

 それではさっそくA子さんへのブラッシング指導を始めたいと思います。

歯を磨く順番に決まりはありませんが、全てを磨き残しなく磨くために自分なりの順番を決めましょう。

まず下の歯、奥歯から磨いてみます。

奥歯で磨き残しの多い場所はココ。(ピンクのマーキング。)

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一番奥の歯の、さらに奥側の面です。
なのでまず、ここから磨いていきます。
 歯ブラシの先端部分を使うと磨きやすいかもしれません。この時、必ず「歯と歯ぐきの境目」に毛先が届くように意識して磨いてください。

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そして、一番奥の歯の表側。
実はこの、一番奥の歯は、歯列に沿ってそのまま歯ブラシを当てても、毛先が全く歯に当たらない歯です。
しかも、食べ物をかんだり、食いしばったりする時にとても重要な歯なので大切にしていきましょう。

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歯列に沿って動かした歯ブラシの毛先が、一番奥の歯には全く当たっていないのが分かりますか?

 実は、こんなに歯並びの良いA子さんでも、一番奥の歯より手前の歯の方が大きいため、手前の歯の方が少し頬側に出ている形になり、そのままでは毛先が一番奥歯に当たりません。

これを回避するため、一番奥歯を磨くときは、歯ブラシの柄を頬側に傾けます。

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 こんな感じです。

いきなりバス法の当て方になりましたが、
スクラビング法(毛先を歯に直角に当てる)でもこんな感じ。

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歯ブラシの柄が、歯列に沿っているのではなく、頬側に傾いています。

さて、A子さんにはここをバス法で磨くことをお勧めしました。

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 そこから一本手前の次の歯を磨き、

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 その手前の小臼歯を磨きます。

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 余談になりますが、この小臼歯は、大臼歯や他の歯に比べて、丸い形をしているのが分かりますか?

 この丸い形はスクラビング法をした時などにとても磨き残しが出やすい歯なので注意しましょう。

歯ブラシをただ当てただけの状態では歯が丸いので、

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 こんな感じです。
(毛先が当たるのは青い線の部分だけ。赤い三角の部分は全く磨けません。)
 ここは意識して当たっていない赤い三角の部分に毛先が当たるように、歯ブラシを細かく動かし、角度を付けたりして意識して磨きましょう。

そして、この次に磨く歯からは「前歯」になるのですが、この前歯の磨き方(3面に分けた磨き方を写真で載せています)も、先程からご紹介しているコチラの記事(『検証・「なぜ、普通?の歯の磨き方」ではいけないのか』)に詳しく載っています。A子さんにもこの3面に分けた磨き方をお勧めします。
糸切り歯から糸切り歯までの6本を、一本一本、3面に分けた磨き方をしていきましょう。

この前歯の磨き方は、歯ブラシを「鉛筆を持つように持つ」持ち方ではやりずらいので、柄を握るように、御自分の持ちやすい方法で持って下さい。

左側(本人にとっては右側)も同様に進みます。一番奥の歯まで磨けたら、裏側を磨きましょう。

下の奥歯、裏側の歯ブラシの当て方はこんな感じです。
(順番的には向かって左側、本人に取っては右側の歯の裏側に進むと、良いとおもうのですが、写真は、見やすくとれたので、反対側の歯の裏側のものになりました。(^^))

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 下の奥歯の裏側は、意外と磨き残しの多いところです。意識して忘れずに磨いて下さい。
ここから、同じようにバス法で一本一本順番に進んで磨いていきます。

上の歯です。

上の歯は毛先を上に向けます。
こんな感じです。後は下と同様、少しずつ順番に細かく動かして磨いてきて下さい。

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A子さんにはバス法をお勧めしましたが、一応スクラビング法で磨くとこんな感じです。

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このまま下の歯と同様に一本一本前に進み、上の前歯は下の歯と同様、3面で磨いて下さい。
上の前歯の裏側も3面磨きです。

上の歯の奥歯の裏側はこのように 磨くことをお勧めしました。

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反対側の、奥歯の裏側です。

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さて、一通り説明したのですが、
一度だけのブラッシング指導では、意外に覚えられないものです。
A子さんにも、磨き残しや歯ぐきの状態をチェックしながら、A子さんの磨き方のクセなどを把握し、これから何度かに分けてブラッシング指導を続行をしていきたいと思います。

 次は、歯間ブラシの説明です。
歯ブラシだけでは歯と歯の間の歯垢は落とせません。
 歯と歯の隙間の大きさは、人によって違いますので、フロスや歯間ブラシのサイズなどを、患者様の口の中をみて歯科衛生士が判断します。
A子さんには、SSSのサイズの歯間ブラシをお勧めしました。

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 このように、歯と歯の間に入れて磨きます。
ちょっと間違いやすいのは「つま楊枝」とは違うということです。
歯間ブラシを通すと、歯と歯の間に詰まった食べカスなどが取れてきて、それで満足しがちですが、目的は「歯垢」を落とすこと。

歯間ブラシを通したら、まず奥の歯の「歯と歯ぐきの間」の歯垢を取るようにして、歯間ブラシを出し入れし、その次に手前の歯の「歯と歯ぐきの間」の歯垢を取るようにして磨いていただきます。

 一通りのブラッシングについて御説明しました。
こんな感じでA子さん自身に歯ブラシを持って頂き、実際に歯科衛生士がチェックしながら磨き方をお伝えしていきます。
 一度でブラッシング方法を全て覚えて頂くことは難しいので、何度かに分けて、磨きやすい方法や細かい技術的なこと、A子さんのクセに合わせた対処法などをお知らせしていく予定です。

 その歯科医院によってやり方は様々ですし、同じ歯科医院でも口の中の様子や、ブラッシング指導に入った回数等によってやり方を変えると思いますが、
今回は、この後、歯科衛生士が歯ブラシと歯間ブラシでA子さんの歯を全て丁寧に磨き上げます。
A子さんに歯ブラシで磨いたときの感触や感じを実感していただきたいと思います。
 その後、機械を使って磨いていこうと思います。

 

  さて、これはA子さんにしたブラッシング指導で、皆様に当てはまる物ではありません。
例えばA子さんには、歯間ブラシをお勧めしましたが、歯周病に一度もかかったことがなく、歯ぐきが健康で歯と歯の隙間の空いていない方などに歯間ブラシは合わない、などということもあります。
 口の中は、一人一人、歯の状態も、歯ぐきの状態も全然違うため、歯科医師や歯科衛生士に直接みてもらった上で実践しないと、症状を悪くすることもあり、危険なのです。
 またその歯科医院の先生のお考えで、歯磨きの仕方も変わります。
 目指すのは、歯と歯ぐきの健康を保てるブラッシングの仕方、ということだと思います。

 ぜひ一度、かかりつけの歯科医院でブラッシング指導を受けられてみてください。

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