「虫歯の多くはココから発生。」 「シーラントとは。」

 歯の喪失原因の第1位、「歯周病」について、説明と予防を書いたので、
(ご覧になっていない方はこちらから。『1,ココから順番に書いています。』
今度は、第2位の「虫歯」について書いてみます。
 歯周病と虫歯で、歯の喪失原因の95%ほどを占めるそうなので、この2つを予防できると、かなり多くの歯が長く残せると考えます。

まず虫歯の進行について。

虫歯は、よく見る図解ですが、d_34 虫歯の進行絵
このように、歯の表面の硬いエナメル質から、堂々と侵入してきます。

「歯の構造」は、

img21 歯の構造
画像引用©2011 Nobel Biocare  http://www.ns-search.jp/

歯の表面の
・白色の部分が『エナメル質』 (硬い組織。)
・黄色の部分が『象牙質』    (エナメル質より柔らかい組織。)
・赤色の部分が『歯髄』      (痛みを感じる「神経」。)

の大まかな三層構造になっており、
(ちなみに、歯根の回りにある「まだら模様」が、『歯槽骨』です。)
虫歯も、その表面の『エナメル質』から『象牙質』、そして中心にある『神経』に達するように順番に侵入し、
それにともなって、穴の空いた歯も崩れるように崩壊していくので、最後は歯根だけになり、抜かざる得ない状態になっていきます。

よく、C0~C4で虫歯の進行度を表しますが、状態を書くと、
C0 … 「エナメル質」が溶けたり、自浄作用で戻ったり状態で治療の必要なしの状態。
C1 … 「エナメル質」までの虫歯。今なら軽い処置で間に合う。
C2 … 「象牙質」まで虫歯菌の入った状態。神経に近づきつつあるので早急に歯科医院へ。
C3 … 虫歯菌が「神経」にまで達した状態。治療すれば歯は残せることが多い。
C4 … 見えていた歯は崩壊し、主に歯根が残る状態。抜歯もあり得る。残せるかぎりぎりのリミットの場合もあるので一刻も早く歯科医院へ。

というような感じです。

 

 皆様だいたい虫歯になりやすい所は共通していて、
虫歯の多く発生する場所は、主に4カ所。
・ 歯の溝 (奥歯の噛む面にある溝など)
・ 隣接面 (隣の歯との接触点)
・ 歯頸部 (歯ぐきに近い部分)
・ 治療で詰めた物と、歯との間。

などです。

 この4カ所に共通することは、「歯垢が残りやすい場所」であるということ。
歯ブラシの毛先が届きにくい場所でもあります。

さて、一つ一つ見ていきましょう。

一番目、「歯の溝」は、
特に大臼歯の溝が虫歯になりやすく、続いて小臼歯の溝が虫歯になりやすいです。

「大臼歯」とはこちら、

P1030512point1

下の歯を、線で色分けしてみました。
赤い線が、『大臼歯』。 一番奥から2本、親知らずのある方は3本あります。
青い線が、『小臼歯』。 大臼歯より前にある2本です。
ちなみにピンクの線は『前歯』。 糸切り歯から反対側の糸切り歯までの6本を一括りにしてみました。
(上の歯も同様です。)

 この赤い線、「大臼歯」の噛む面の溝は、深く、狭くてギザギザな複雑な作りをしています。
個人差があるので一律ではないですが、永久歯である第一大臼歯(手前側の大臼歯)は6歳頃から生え始め、第二大臼歯(その奥の大臼歯)は11歳頃に生え始めます。
 ただ生えて数年の間に、この溝から虫歯になる確率がとても高い歯です。

 原因の大きなものとして、この溝が狭すぎて、歯ブラシの毛先が届かない。その狭い溝に「歯垢」長くとどまり続けるため。
と、いうものがあると言われています。

 そこで予防法として、虫歯にならない状態のうちに、
この溝に少量のプラスチックを流し込み、溝の深いところを塞いで、歯垢が入り込むのを防止する「シーラント」という方法が、よく使われます。

 溝をそのまま残した状態では、高い確率で虫歯になる歯なので、その溝を先にプラスチックで埋めてしまおうという処置です。

 虫歯ではないので麻酔を使わず、
「機械で歯の溝を清掃(回転させたブラシで歯の表面を磨く等)した後、少量のプラスチック液を流し込んで固める。」
という方法が一般的。(それぞれの歯科医院のやり方なので一概には言えません。)

 機械のブラシで磨くときに響く感じがあるかかも知れないのですが、子供にきちんと説明してくれる歯科医院なら、注射や怖い処置がでてくる訳ではないので、子供の最初の歯科処置としては、ちょうど良いかも知れません。

 ちなみにプラスチックは、無色透明が一番目立ちませんが、目立たな過ぎて破折や脱落が分かりにくいことがあり、白色など色づけされた物が使われることもとても多いです。
 私が歯科衛生士学校の実習で使ったシーラントは透明なピンク色。
若い女の子としては、ちょっと嬉しかった思い出です。(笑)

 ただこのシーラント、利点ばかりではなく欠点を指摘する声もあり、
「詰めたプラスチックが破折、離脱すると、そこに段差ができて歯垢がたまりやすくなるので、かえって虫歯になりやすい」、「プラスチックを詰める際にエッチング(接着を強くするよう酸性の液を使って溶かし、歯の表面にギザギザを作る)をする場合は、歯を痛めるリスクがある」、等々、歯科医師のなかでも、賛否があります。

・ 『シーラントについて歯科医師の見解を伺っている「歯チャンネル88」』

参考にされてください。

 

 では次に二番目、「隣接面 (隣の歯との接触点)」から発生する虫歯です。

歯科でよく話題にされる、歯垢の残りやすい「歯と歯の間」は、細かく言うと2つあると思います。
1つは歯周病の問題になりやすい歯と歯の間で、
歯周病に関する記事(『5,歯科医院で行う「PMTC」とは。 歯周病対策「歯垢のつきやすいポイント」』)でも書きましたが、

 歯周病に大きく影響する「歯垢の付きやすい場所」

P1030439 point2

 の中で、歯ブラシでは容易に磨けない、ピンポイントなこちらの場所

P1030439 point3

 を指す「歯と歯の間」。(ここは歯周病の原因菌が取れにくいので「歯間ブラシ」で磨きましょう、とよく言われる場所です。)

そして2つめ、今回の虫歯の発生に関わる歯垢の残りやすい場所の「歯と歯の間」(歯の「隣接面(隣の歯との接触点)」)は、ココです。

P1030439 point4

 一枚上の写真の歯周病の時のポイントより若干上、歯と歯のぶつかり合うところになります。
ここも、一度ついた歯垢が落ちにくく長い時間とどまり続け、虫歯が多く発生する場所になります。

ちなみに写真は奥歯だけが写っていますが、「前歯」の隣の歯と接しているところも、よく虫歯になるので要注意です。
 

 さて三番目、今度は「歯頸部(歯ぐきに近い部分)」です。
ここは油断すると目でも歯垢が溜まっているのが確認出来るほど、とても簡単に歯垢がついてしまう場所。
 さきほど「歯周病に関する記事でも書きました」と、載せたばかりの写真ですが、


 歯周病にも大きく影響する「歯垢の付きやすい場所」でもある、

P1030439 point2

 ココです。

歯垢は歯ぐきとの境目に付き、どんどん歯の上の方に上ってくるように付いてきますので、歯の中でも歯ぐきに近い部分が虫歯になりやすいところです。

 

 そして最後、四番目、
「治療で詰めた物と、歯との間」 です。

 これは、「二次カリエス」(カリエスは虫歯のこと)と呼ばれ、非常に多いです。

実は歯は、全く治療していない状態が、一番虫歯になりにくい状態で、
削って詰めた状態は、歯の虫歯への耐性として、弱くなった状態になります。
ちなみに「治療で詰めた物と、歯との間」と書きましたが、かぶせた歯でも歯頸部などから二次カリエスになります。

とくに一度虫歯になって治療した後、虫歯にならない対策を取らないままの状態では、
一度虫歯になった歯の多くがまた虫歯になります。

そして虫歯を繰り返し、削る量が増えれば増えるほど、「歯」自体の大きさも小さくなり、最後いくら「かぶせ物」で補填しようとしても支えきれないくらい小さくなると、抜歯です。
何かで読んだのですが、大体4回位の治療で持たなくなることが多いと書いてありました。(それぞれのケースなので一概には言えません。)


以上、虫歯の発生する場所として多く見られるものを書いてみました。

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