3,①虫歯予防の話

 虫歯予防の話は、「歯科衛生士さん、お得意でしょ?」
と、言われそうなところなのですが、
いやはや、これがですね…、
あまり得意ではないです。(笑)

虫歯を予防するには患者様自身の努力が大いに必要なことと、それでも100%虫歯予防できるとは言えない、
といったところで、

 これが歯周病だと、磨き方を知って実践していただいたり、その他予防の知識を知っていただくことで、かなりの歯周病が治療できるので、因果関係がはっきりしており、患者様自身の目でも確認していただけたりして、
「この努力は大変かもしれませんが、患者様のためになります」という感じでお勧めしやすいのですが、
虫歯を防ぐのは、歯周病よりももっと、歯磨きする範囲が複雑で労力がかかり、
患者様自身の技術などによっても、この努力が大きく実ります。と言い切れない側面を持っていると思います。

 反面、実際には歯磨きしなくても虫歯にならない方もいれば、
一所懸命歯磨きをしているのに、虫歯になってしまう方もいます。

その要因について、研究、調べられてはいますが、
現在の時点で、虫歯の本数を減らすことができるデーターはある、
ということは言えても、
必ずしも防ぎきれるとは限らない、ということと、
虫歯を防ぐには、患者様自身の日々のたゆまぬ努力が必要だという厳しい面があることを、最初に書いてみようかと思いました。

 さて、でもだからと言って、
虫歯菌を減らすこと、食べ物の食べ方などに気を付けること、その他、虫歯予防のための努力が、無駄だという話では、ありません。

 完全に虫歯にならない方法は大変ですが、
逆に、こうすれば高確率で虫歯、または酸蝕歯と呼ばれる状態にすることができる、
というものは簡単に把握することがあります。
(なるべく長い時間、酸性の甘い飲料に歯を漬け続け、頻繁に飲み続けて、歯を磨かないでみる、とか。)

 またこれをすれば確実に、虫歯の本数が(今までよりも)減少する、というデーターもあります。
 厚生労働省のまとめや教科書に書いてある方法では、1つの方法で、これをして虫歯予防をする、ということではなく、
虫歯菌を取るようにキレイに歯を磨いて、甘い物などを長時間口に入れるのをさけ、定期的に歯科医院へPMTCに通い…等々、
と、複数を組み合わせて、なるべく虫歯になるリスクを減らしていく、というものです。
(正式?に認められていないものには、各個人やメーカーからコレがよいアレがよいと語られることはありますが、その一つずつがどこまで信用できるのか、検証を重ねて認められるなどの段階になると、分かりやすいと思います。)

 人が健康に生きていく方法は、まだ完全に確立されているとは言えないのかもしれませんが、
少なくとも不健康にならないようにすることで、よい結果につながることが増えます。
口の中の健康は、その中でも、
分かりやすく、全身よりは比較的簡単、確実に、多くの人が長く健康でいられる方法が確立されているほうなのだと思います。

その、虫歯予防の方法として、よく言われるのは、

1, 歯垢(細菌)を減らす。
2,   酸性の物、糖質のものなどの摂取の仕方に気を付ける。
3, フッ素などの薬品等を使う。
4, 他、シーラントなど。

などです。
何が虫歯になりやすいか、何が危険かの知識は、
直接、皆様個人の口の中の健康を守ることにつながるので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

それではまず、
『1, 歯垢(細菌)を減らす』 についての虫歯予防。

 虫歯は、直接歯垢(虫歯菌)が付き、取れづらいところから発生します。
そして、虫歯菌のない方は、実際に虫歯になりません。

 虫歯は菌によっておこる感染症。
3歳までにこの菌に感染しなかった人は、(その時期(3歳)までにその人の口の中の菌の割合が決まってしまうため)その後も感染することがなく、虫歯にならないそうです。

 なので、まだ虫歯菌に感染されていない状態であれば、これから周りの人からの虫歯菌の感染をさけることによって、虫歯にならない一生を送ることが可能、ということにはなると思います。

感染する虫歯菌を減らすやり方としては、
食べかけたものを与えない、食器の共用をしない、子供の口に人の口を近づけない、など、
人(特に親など周りの人)の口の中にいる菌が、子供の口の中に入るのを避けるという方法です。
 子供の口の中に入った虫歯菌は、歯が生える前には定着しませんが、歯が生え始めると菌が感染して住み始め、感染するたびに徐々に菌数を増やしていき、2歳半ごろまでに、その子の持つ菌数が決まると言われています。

 この話が広まり、ひと頃、自然なコミュニュケーションをさけてでも、虫歯菌を感染させないようにするお母さんも増えたのですが、

 ただ現実的には、虫歯菌を持つ保育者(両親など)に育てられながら、この菌の感染を完全に防ぐことは難しいので、

今は、菌の感染は、人として生きていく上での自然なもの(それによって免疫を得たりなど)で、虫歯菌だけそれをさけようと思っても、容易に防ぎきれるものではない。
 実際気を付けても、唾が飛んで口に入っただけで感染してしまうので、
それを防ごうと、あまり神経質になりすぎず、人としてのコミュニュケーションは自然にとり、大らかに子育てしましょう、という考え方が主流にちかいと思います。

 虫歯菌感染予防のために、自然な愛情表現やスキンシップを制限しても、
実際には、食べ物にフーッと息をかけて冷ますようなことでも、感染の危険があると言われ、
結果的に、周りにいる人全員で虫歯菌が感染しないように徹底させることは難しいので、
虫歯菌の感染を防ぎきれないことも多いことなどを考えると、
親や人とのコミュニュケーションをさけるところまでするのは疑問です。

ただ、移る菌数を減らすことは大切なので、
食べかけたものを与えない、箸など口につけた食器の共用をしない、などに気を付け、また、
子供に移る菌数が少なくなるように、お母さんお父さん自身が歯科医院でケアを受け、よく歯磨きをして菌を減らすことが効果的だそうです。

 

 さて、もう感染し、虫歯菌がいることが確定してしまった皆様は、
(私もです(^^;))

 やはり日々のブラッシングにより、歯垢(プラーク)の少ない状態に清掃しておくことは大切です。
 虫歯はつるつるな歯の表面ではなく、歯の溝や、隣接面など、歯垢が取れにくい場所から多く発生します。
もちろん溝や隣接面、以外の場所からも発生しますが、通常の歯磨きで歯垢が落ちやすい場所は、虫歯の発生も少なくなります。
虫歯は歯垢の直下から発生し、直接歯垢の付いていない状態では発生しないそうです。

 ではなぜ、歯ブラシをよくしても虫歯になることがあるのか、ということについては、
歯ブラシや歯間ブラシで完璧に取れる歯垢は、50%ほどと言われ、その道具だけで完全に落とすことは不可能だから、ということになると思います。

 ただ、歯垢の菌数を減らすことも虫歯抑制の効果があると言われ、その50%さえも清掃されない状態は、歯の溝や隣接面、以外の部分も、歯垢の直下に歯がある状態を長時間作ることになり、他の要因が重なると虫歯になりやすい状態を作っています。

 歯垢は一日一回夜徹底的によく歯を磨くと良いと言われています。
(菌の活動し始めるサイクルが、24時間以上あるため。)

 歯垢を落とせる歯の磨き方は、歯の磨き方を習っていない時の普通の磨き方とは少し違います。
(こちらの記事、参照されて下さい。『なぜ、「普通?の歯の磨き方」では歯垢が落ちないのか、検証してみました。(3面磨きの方法)』

ぜひ、歯科医院でブラッシング指導を受け、歯垢の取れる歯の磨き方を聞いていただきたいと思います。
( 歯の磨き方は人それぞれに違い、このサイトで皆さん個人に合った歯磨き方法をお勧めすることは出来ないのですが、参考に私のしたA子さんへのブラッシング指導を書いてみました。
● 8, 前半 『歯周病予防』のためのブラッシング指導。ぜひ受けて頂きたいので、その様子を書いてみました。
● 9, 後半 「歯周病予防の歯の磨き方。ブラッシング指導。」 詳細。

それから、歯科医院でPMTC(歯科医院でする機械を使った清掃などのケア)を受けて、普段歯ブラシでは落としきれない汚れを定期的にとることも、普段の清掃状態を上げ歯垢を減らすのに効果的なことになります。

 

それでは記事が長くなりましたので、

現在よく言われている虫歯予防の方法
1, 歯垢(細菌)を減らす。
2,   酸性の物、糖質のものなどの摂取の仕方に気を付ける。
3, フッ素などの薬品等を使う。
4, 他、シーラントなど。

の2番目から、また次の記事でご紹介していきたいと思います。

次、『3,②虫歯予防の話 「食物」』 へお進み下さい。

● 1,虫歯とは

● 2,虫歯の原因を考える

 

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