2,虫歯の原因を考える。

 さて、ここで虫歯の原因を考えてみましょう。

 虫歯の原因は、歯周病よりちょっと複雑です。
歯周病は、「歯垢」を取れば、目に見えて症状が良くなっていきます。
そのおかげで原因が特定しやすく、その原因を取ることで歯周病を改善させることができます。

ただ虫歯の場合、その原因は一つに特定されていません。
複数の要因が重なり合うことにより発生していると考えられ、対策も、
例えば「歯磨きをする」ことと、「甘い物が口にどどまる時間を短くする」ことなど、複数を組み合わせて予防します。
 一応理屈的には、複合要因の何か一つが欠けると虫歯になりにくいとされているので、何か一つを徹底的に排除できれば虫歯にならない、ということになりますが、
現実的には、歯ブラシと歯間ブラシを用いて落とせる歯垢は50%程度と言われ、さらに、虫歯菌の餌になる甘い物には糖質(炭水化物)なども含まれるので、それら何か一つを徹底的に完全に断つということは通常考えられません。

結果、虫歯対策としても、
なるべく良く磨いて歯垢を落とし、
なるべく食べ物が口の中にある時間を少なくし、
なるべく酸性の強い食品を口の中に入れないようにする

というような、複数の対策をとることになります。
今のところ決定的な対策を取ることが難しい、ということが予防的になかなか虫歯を防ぎきれない原因かも知れません。

 

 現在、虫歯の原因としてよく言われるのが、

・ 細菌(虫歯菌)
・ 糖(餌)
・ 時間(酸性)
・ 歯質

の4つの要因が全て揃ったとき、虫歯が発生するという説です。
(ニューブランの輪)

 ただ今はまだ、虫歯の原因やメカニズムが完全には解明されていないそうなので、
今後他の要因が考えられる可能性もあります。

 『虫歯菌』の住み着く口の中に、『糖』(餌)が入り、歯垢の中の虫歯菌がそれを餌にして酸を出す。歯は酸に弱い性質を持っているので、『口の中が酸性』になる『時間』が長ければ長いほど、虫歯になるリスクが高いのだそうです。

さて、この4つの要因を見てみますと、

まず、1番目 「細菌」。

 虫歯の発生は歯垢(虫歯菌)が付きやすく、取れづらいところ(歯の溝や隣接面)から発生します。
そして、虫歯菌のない方は、実際に虫歯になりません。

 虫歯は菌によっておこる感染症。
3歳頃までにこの菌に感染しなかった人は、(その時期(3歳)までにその人の口の中の菌の割合が決まってしまうため)その後も感染することがなく、虫歯にならないそうです。

 ただ、3歳以上のもう虫歯菌がいることが確定してしまった皆様は、(笑)
(私もです(^^;))

 やはり歯磨きなどで歯垢を落として細菌数の少ない状態を日々キープするようにします。

 例えば歯垢の中の細菌は糖分を取り込むと、
数分のうちに、糖分を取り込んで代謝して「酸」を出し、口の中を一気に酸性にすると言われていますが、
少しでも「歯垢」を減らして、代謝して出される「酸」の量を減らすこと、
また歯垢が付いていると高確率で歯周病になるという観点からも、細菌数を減らすことは大切です。

 

2,3番目 「糖分」 と 「時間」。

 昔テレビで、甘い炭酸飲料(酸性)の中に人の抜去歯を漬けておくと、その歯が溶かされてしまう、という実験を見たことがあるのですが、
歯は酸に溶けるという性質を持っていて、
お酢やジュースなど酸性の液体に漬けておくと、溶けて軟らかくなってしまいます。

 口の中が酸性になる時間が長いと、虫歯になるリスクが高くなると言われますが、
口の中が酸性になる条件は主に3つ。
1つは、酢や甘い炭酸飲料など「酸性」のものが口に入ること。
2つめは、「糖」が口の中に入ること。
3つめは、嘔吐など胃液が入ること。

通常、口の中を酸性にする原因は、食物などです。
酢、清涼飲料水、スポーツドリンク、ジュースなど酸性のものも、もちろんそのまま口の中を酸性にしますが、糖も口の中に入れると歯垢(虫歯菌)がそれを餌に活性化して代謝物(酸)をだし、なんと数分で急激に酸性になってきます。

通常、口の中はph6.8位の中性ですが、糖を入れると一気に酸性に傾きます。ph5.5が歯のエナメル質が溶け始める(「脱灰」を始める)酸性ラインだといわれ、それ以上の酸性は歯の表面から溶け出している状態となるそうです。

実際にはph5.5以上の酸性に、口の中はよくなります。

 しかし、食べ終わると「唾液」(弱アルカリ性)の作用で口の中の酸性は、時間の経過とともに(酸性度合い、個人の体質等にもよりますが目安として約40分ほどで)「中和」され酸性から中性に戻っていくと同時に、溶かされた歯の表面(エナメル質の脱灰)も「唾液」によって修復され、元の硬い状態に回復(再石灰化)します。
(ステファンのカーブ)

この脱灰と再石灰化を繰り返しているのが、日常の私達の口の中で、
そのサイクルが、「歯の表面だけを溶かし、唾液による修復(再石灰化)で回復できるレベル」を保っているうちは虫歯になりませんが、 要因が重なり、酸性の時間が長くなり、歯質が耐えられなくなるなど、個人の虫歯に対する抵抗力が限界を迎えると、 「唾液」の再石灰化だけでは、修復不可能な所まで歯が溶け出し、「虫歯」になりやすいと言われます。

 この口の中が「酸性」になることが虫歯の発生に大きく関与していますので、
虫歯予防の対策としては、なるべく酸性になることをさけ、また「酸性」に傾いたものを、早く中性に戻し、「中性に戻っている時間を長い間保つ」、ということが大切なことだそうです。

 

では4番目、「歯質(抵抗力)」
を書いてみます。

 虫歯の原因は、複数の要因が重なると考えられているので、食生活などもありますが、
 一度治療している歯が増えた(二次カリエス)など、口の中の状況の変化、唾液の量などの変化、全身的な疾患の有無、個人的な体質、というのもよく原因にあげられます。

 例えば虫歯の原因菌として、「ミュータンス菌」などが有名ですが、口の中にいる菌数は人によって違います。
その他、唾液の量や粘性などにも個人差があり、
それによって、個人の虫歯に対する耐性も大きく変わります。

 今は、歯科医院で、それらを調べる「唾液検査」などがあり、個人の虫歯になりやすさ等を知るため、歯医者さんで勧められることがあるようです。

 よく「体質」ということを言いますが、
虫歯も実際「良く磨いているのに虫歯になる方」、「あまり磨いていないのに虫歯にならない方」がいらっしゃり、
また、同じ人が、同じような食生活をしていても、去年は虫歯にならなかったが、今年は虫歯になってしまった、ということは、よくあります。

虫歯に限らず、人の健康はそのようなものかもしれませんが、
単に、虫歯になる条件だけを並べてみても、実際の生体には必ずしも当てはまらない、ということもあります。
 やはり最後は、その人自身の持つ体質、全身の抵抗力、ストレス等による精神的な弱まり、などといったものが、病気の発生には関係してきているのかも知れません。

 ただ、虫歯の発生しやすい条件が重なり、それとその方自身の持つ抵抗力とのバランスが崩れて病気が発生するにしても、
虫歯になる条件を追求し、知識を付けることで、一つずつ健康を害する要因を軽減させていくことが、全身の健康を守る上でも大切だと思います。

 

次、『3,①虫歯予防の話』 

 

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