「ホテルの歯ブラシ」の使用所感。 ホテルの歯ブラシは、用途に適っています。

 患者様の中には、普段ホテルや旅館から持ち帰ってきた歯ブラシを使って、歯ブラシを買わない。
という方がおられるとネットで読んだのですが、

歯科衛生士としては思わず、歯垢の落ちるように工夫して作られている歯科用歯ブラシをお勧めしてしまいそうです。
でも、これは条件反射みたいなもので、そもそもホテルの歯ブラシを普段使って何が良くないのか。

毛の太さが違い、弾力が違い、毛先の加工が違い…、と思い浮かぶことを言うのは簡単ですが、
ここは実際に試して、体験して、きちんと伝えなければ、
と、私が思う必要は全くないのですが、(笑)
使用所感、書いてみます。(笑)

 ホテルや旅館などの備え付け歯ブラシは一度使った後、使い捨てるか、別の用途で再利用(掃除等やそれぞれの工夫で)する、というところですが、
(普通。)

もともと歯ブラシ自体に歯磨き粉が付いていて、どう考えても一回用だと感じる物から、
見た目には、「意外と市販のものと変わらないように見えるけど…?」というものまで、幅広くあります。

 ホテルの歯ブラシで歯垢がとれないのか?
と言われると、これが、磨いてみると意外と取れる。
(沢山種類があるのでそれぞれですが、試した歯ブラシは取れました。)
歯面もツルツルになる感じで、キレイに磨けます。

 では家に沢山あるホテルの歯ブラシを片っ端から使っていれば、とくに歯ブラシを買わなくてもいいのではないか、
と、思うわけですが、
(普通はあまり、思わない。(笑))

ホテルに備え付けられていた歯ブラシの使用所感を書いてみたいと思います。
(一口にホテルの歯ブラシと言っても、いろいろな歯ブラシがありますが、その中の一本はこうだったということでお読み下さい。)

 私の使ったのは一見、市販の歯ブラシのような少ししずく型の形。
磨いてみると、毛は硬め、太めで歯垢が取れ、歯面もツルツルになる感じでしたが、その毛先はパッツン切り?というか、
とくにそれほど加工はしていないのではないかと思われる毛先になっていました。

 といってもこれで即、傷だらけになる、というほどひどいわけではなく、気にしなければ気にならない程度です。

歯科用歯ブラシなどは、ほぼ全て、毛先はラウンド加工(丸くする加工)や、サテナイズド加工(凹凸を付けて歯垢が引っかかりやすくする加工)、テーパード加工(細くする加工)等々、
それぞれ工夫した加工が施されているのですが、
もし、この加工をしないと、どんな歯ブラシの毛先になるのか?
ということを教えてくれているような毛先です。

使ってみると、これが意外と歯垢が引っかかる。
毛先の表面にザラツキがあり、そこにひっかかる感じで、歯垢は落としやすい部分があるようです。

ただ、気を付けないとその分、歯ぐきは傷つきます。
かなり硬めで、毛自体の太さが太めなこともあり、
炎症がある軟らかい歯ぐきは要注意。
歯ブラシを当てたまま大きく動かすと、高確率で歯ぐきに擦れて傷がつくと思います。

 力を抜いて毛先の位置はほとんど動かさないくらいの細かい動きと、あまり歯ぐきの方にベッタリ当てない磨き方が向いているかも知れません。
こうして磨くと、健康で引き締まっている歯ぐきならとくに傷なく磨くことができそうです。

使い方を間違わず、歯ぐきが傷つきにくい方などは、
その日の使い捨て歯ブラシとしては、用を足せると思います。
そういう意味で、「ホテルの歯ブラシ」(一回限りの使い捨てで安価)としては、毛先に加工を施すコスト的な面も考え合わせると、使用目的に適っているかもしれないと思いました。

さて、これはホテルも意図せず、間違った使い方になりますが、
この歯ブラシ、一体どのくらい使えるかと思って試したところ、
(普通、試さない。(笑))

これが数日であっという間に、使えなくなりました。
まず、広がる毛先。
これが、全くカオス。(テンデバラバラ)

ほぼ、水に濡らして軽く使用しただけで、数日使うと毛先が変形していく感じ、という印象です。

 通常歯科用歯ブラシや、市販の歯ブラシでもそうですが、
右に力がかかって当たったから右側へ、
左に圧がかかったから左側へ、
中心に圧がかかったら回りへ開くように、
などその方向に力や圧を受けて毛先が広がってきた、などという因果関係が分かるわけです。

そして、

私は歯科衛生士なので、教科書通りの力の入りすぎない圧で、歯科用歯ブラシで歯を磨くと、数ヶ月は毛先が広がりません。
(コチラも間違った使い方ですが、数ヶ月使って実験してみた経験有り。(正しくは一ヶ月で交換。)(笑))

でも、このホテルの歯ブラシは、圧とあまり関係なく色々な方向へ毛先が広がっていきます。
そして、その広がり方も、
「あなたはなぜ、そちらの方向へ?」
とインタビューしたくなるくらい、一本一本が右に左にナナメに、と好き勝手な方向へ好きに広がっていく感じ。
(よくマンガで、起きたての寝ぼけた主人公を描くとき、髪の毛が右に左にナナメにとはねていますが、あれが歯ブラシの毛外周で起こる感じ。(笑))

そして二週間ほど経った頃には、
多くの毛の、やる気が感じられない。(笑)
(そんなに使って真面目に実験してみる衛生士は、まずいない。(笑))

真っ直ぐに立っている毛が少なくなり、多くの毛先が曲がっている状態で、
狙った所を磨こうと思ったときに、毛が直線で歯に当たらず、曲がって力の入らなくなった毛ばかりで磨く形になるため、
(広がった毛先では磨けないということを書いた記事。『なぜ、開いた歯ブラシは取り替えるべきなのか?』
全然力が伝わらず、フニャフニャして、
「歯垢を落とそう」というやる気のある毛が、激減。

ホテルの歯ブラシは、使い捨て。 毎日これで磨いてはいけない。

という常識? ある意味当たり前? のことが分かりました。(笑)

ホテルや旅館に備え付けの歯ブラシは、宿泊したその日だけに使う基本、使い捨ての物です。
(いろいろな物があると思いますが、私の使った物はそうでした。)
無駄なコストをカットして、安価に抑え、
お客様がその日、そのホテルに宿泊したときにこまらないように、その日の歯ブラシを提供する。
というニーズに応えています。

ただ、日常日々使う歯ブラシには適さないので、
普段は、しっかり自分の歯と歯ぐきの健康にこだわった歯ブラシを使うのが良さそうです。

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