3,歯石について。 

 歯石には2つあります。歯ぐきより上の見える所に付く歯石、と、歯ぐきの下に隠れて見えない所に付く歯石です。

d_24 歯肉縁上縁下

 歯の表面、歯ぐきより上の見えるところに付く歯石は、
「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」。

 歯垢に唾液中のカルシウムなどが混ざり、石灰化(カルシウムが硬く組織に沈着すること)したものです。
 唾液の出口がある、「下の前歯の裏側」や「上の奥歯の頬側」に付きやすくなっています。

唾液に含まれるカルシウムなどの量には個人差があるので、体質によってすぐ歯石になってしまいやすい方と歯石の少ない方がいらっしゃいます。
 早い方は数日で歯垢が石灰化を始めると言われ、定期的なケアなしに完全に防ぎきるのは難しく、歯石がつけば、歯ぐきは炎症をおこしはじめます。

この歯石を防ぐのは、歯垢の柔らかい状態のうちに歯ブラシ等で取ることですが、実際には、歯ブラシだけで歯石が付くことを防ぎきるのは難しいので、定期的に歯科医院に通って除去してもらいましょう。

 ちょっと余談になるかもしれませんが、
唾液の中のカルシウム等の成分が多く、歯石が付きやすい方は、
虫歯になりにくいと言われています。

唾液中のカルシウム等が多いということは、
「歯垢」を石灰化(カルシウム等が硬く組織に沈着すること)し、歯石がたまりやすいですが、

反面、虫歯になりかけて溶けた歯の表面のエナメル質も、唾液中のカルシウムで再石灰化させて、溶けた部分を修復するので、虫歯になりにくいのだそうです。
(虫歯の再石灰化についての説明はこちらの記事に書いてます。『2,虫歯の原因を考える。 虫歯予防の対策。』虫歯の原因の二番目「糖分」の説明をお読み下さい。)

 ただ、歯石が歯ぐきに接していると、その部分の歯ぐきは炎症を起こします。
虫歯になりにくい方は、歯周病になりやすい、と言われる一因です。
 とくに「虫歯がなく、ほとんど歯医者さんに行かない」と言われる方は、歯周病の発見が遅れてしまい、
歯を支える骨が、少し溶けている状態(初期)で分かるのではなく、多くが溶けてしまった状態で、
やっとみつかることになります。
歯周病も初期のうちに見つかれば、治療し、歯を残すことができます。
「今まで虫歯がなく、歯には自信があったのに、急に歯周病で歯がグラグラ揺れだした」というところまで悪化してから、来院される場合もあるので、「歯の健診とクリーニング」のため、虫歯がなくても、ぜひ定期的に歯科医院に通って頂きたいと思います。

 さてこの歯石、
歯垢時代に生きていた細菌は、さすがにもうお亡くなりになっているのですが、

この歯石の表面、顕微鏡レベルで見ると、軽石のように小さな穴が沢山あいておりまして、
ちょうど、生きている歯垢が住み着くのにちょうどいいお部屋。
歯石表面のざらつきも歯垢がつくのに最適。
という格好の、歯垢の住み家になっております。
 また歯石の下の歯の周りや歯ぐきは、歯ブラシの毛先が届かず、磨くことが出来なくなるので、硬い歯石の壁のカードのもと、細菌はのびのびと活発に活動を始め、歯周病を悪化させていきます。

 実際、大きな歯石をとった後、歯石の下にあった歯ぐきは真っ赤に腫れて出血しやすく軟らかい状態になっていることがほとんどです。

 この歯石を取ることも、歯科衛生士の仕事の一つです。

さて、歯ぐきの上に付いていた歯石は、歯ぐきの下、歯の根の方にも付きます。

歯周病d_40 歯周病進行絵

 この、歯と歯ぐきの隙間の奥深く、歯ぐきの中の目に見えない部分(歯周ポケットの中の歯の根)に付いた歯石、

 これを「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」といい、歯周ポケットの浸出液や血液に由来する歯石とされています。
 この見えない部分では、見える部分より病原性の高い細菌が活発に活動し、歯周病を内部でさらに悪化させていきます。

 歯周病の予防、治療には、
「豆腐のように柔らかく歯ブラシで簡単に取れる歯垢」と、その付着を容易にしてしまう「硬くこびり付く歯石」、両方の除去が必要とされます。

 ご家庭での毎日の歯ブラシが有効になるように、ちょっとしたコツを歯科医院のブラッシング指導で習い、定期的に歯石除去、歯の表面を磨き上げるなどの処置(PMTC)を受けましょう。

 歯科医院に定期的に通ってケアを受ければ、
自分で気付かずに進んでしまう歯周病又は虫歯等の早期発見と合わせて、長く歯を残すために有効な手段になると思います。

 では次回は、歯垢の中の細菌がどのように口の中の健康を失わせていくのか、それを書いていきたいとと思います。

 次、『4,歯はこんなふうになっている。 歯の構造と虫歯の発生』 にお進み下さい。

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