4,歯はこんなふうになっている。 「歯の構造と、歯周病の発生と行方」

 それでは、歯周病の発生を分かりやすく御説明するため、まず歯の構造から簡単に書いてみたいと思います。

歯の構造。

私たちが見ている歯の表面は、「エナメル質」という硬い組織で覆われていますが、それはそれほど厚くなく、下は「象牙質」という比較的柔らかい組織になっています。
その下、歯の内部中心を歯根の先まで貫くように通るのが「神経」。
と、おおざっぱに見て三層構造。

img21 歯の構造
画像引用©2011 Nobel Biocare  http://www.ns-search.jp/

歯の表面の
・白色の部分が『エナメル質』
・黄色の部分が『象牙質』
・赤色の部分が『歯髄』(神経)

の三層構造。
 ちなみに、歯根の回りにある「まだら模様」が、『歯槽骨』です。

 歯ぐきの下には、私たちが見ている歯の長さより長い「歯の根」があり、

P1030499
(模型です。)

その「歯の根」の部分が、
歯ぐきの下にある「歯槽骨(しそうこつ)」に植わっています。
ただ、歯根と歯槽骨は、融合しておらず、
歯根は、歯槽骨にある歯根の形の穴に、すっぽり収まる形で入っています。
 そして、そのそれぞれ独立した硬い骨状の2つ(歯根と歯槽骨)に軟組織(歯周組織)が付いてしっかり結びつけている状態です。

ここで、「歯周病の発生、とその行方」についてお話しましょう。

 歯周病も虫歯も、その大きな原因とされているものは同じ。
「歯垢(プラーク)」です。
と、『1,「歯垢(プラーク)」は大原因。』で書きました。

この歯垢の中の細菌が代謝を起こし、
歯の表面を溶かせば「虫歯」、歯が植わっている骨自体(歯槽骨)を溶かせば「歯周病」、
と考えると分かりやすいかと思います。

虫歯
d_34 虫歯の進行絵

歯周病
d_40 歯周病進行絵

 歯ぐきの下には歯根(しこん)が植わっている骨(歯槽骨(しそうこつ))があります。(上図、ピンクの部分)
歯を木などの植物に例えると、位置的には「土」の部分になりますが、
実際には硬い骨(歯槽骨(しそうこつ))です。

 歯垢の中の細菌は、歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)から入り込んで進み、軟組織(歯周組織)の結びつきを切り、歯根と歯槽骨の間に入り込んで炎症を続け、歯槽骨自体を溶かします。

 イメージとして、鉢植えに植わっている木から、土を少しずつ減らしていく状態を想像して頂きたいのですが、

 少し根を露出させた鉢植えの木、から、どんどん土が減って行き、根が長く見えて、ついに抜けてしまう状態です。

 脅かすようですが歯槽骨は何本もの歯を支えている骨ですので、溶けてなくなってしまうと、気が付いたときには、何本もの歯が同時に揺れだし、複数本を一気に無くしてしまう、ということも珍しくありません。

 症状としては、歯ぐき表面が炎症を起こすところから始まり、痛みもなく内部で歯槽骨が溶け、
支えを失った歯が揺れだして抜けていきます。

 口の中で見ると、歯周ポケットの深さが4㎜→5㎜→6㎜……と進んでいき、8㎜位では支える骨がかなり溶けて無くなってしまった状態になり、歯が大きく揺れだし、そのまま進むと抜けてしまう状態です。
 途中、排膿(はいのう)といって、歯と歯ぐきの間から膿が出る状態が続きますが、
口の中は常に唾液で濡れていること、口臭は自分ではなかなか分かりづらいことなどから、御自分では気付かれない方がとても多くいらっしゃいます。

 ポイントは「患者様の自覚無く進む」ことが多い。
というところだと思います。とくに歯が揺れ出すまでは、
 痛みがなく、ゆっくり慢性的に進むこと等により「昨日と比べておかしい」という感覚が少ない、などのため、
口の中の粘つきや歯ぐきの出血があっても、誰でも多少あるもの、と御自分で納得してしまい、
「今すぐ歯医者さんに行かなくては!」という危機感がでるのが遅い、ということだと思います。

 また歯医者さんで、歯周病を指摘されても、

1日歯を磨かなかったから、今日いきなり病状が悪化するという状態で無かった場合、つい放置してしまいがちです。

 ざっというと、例えば10代、20代、30代と今まで健康に過ごせていた歯が、
同じ生活習慣なのに、40代では急に歯周病で抜け出す。
という感じでしょうか。
抜ける年齢は、30代、40代、50代、60代…と人それぞれですが、
年齢層が高くなるほど、「今まで大丈夫だったのに、どうして突然?」というようなイメージになるのかも知れません。

 とくに歯が丈夫で虫歯の少ない方は、歯周病も他人事と思ってしまいがちなので危険です。

 虫歯になりにくい体質の方は、歯周病にもなりにくいとは全く限らず、
逆に虫歯の少ない方は、歯科医院に通う機会が少ないこともあり、歯周病の早期発見が叶わず、リスクが大きいと言われています。

 歯科医院では、特に症状のない方でも、口の中の点検や歯のクリーニングなどを行っているところが大変多いです。
ぜひ、「とくに症状はなくても、クリーニングと点検」に通院して、歯周病から歯を守ってください。

 

 それでは次回からは、その『歯周病対策』について書いていきたいと思います。

次、『5,歯周病の対策』にお進み下さい。

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