軽度から重度まで、範囲の広い歯周病。 多くの方が歯周病の理由。 

 歯科衛生士は、歯周病予防に関してプロフェッショナルなお仕事ですが、
そんな歯科衛生士の口の中も、多くは歯周病の経験を持っていて、全く無縁で過ごせる歯科衛生士は少ないと思います。

 先日の記事『「命を脅かす歯周病」』でもお伝えしたのですが、
日本歯科大学の沼部幸博教授のお話では、
10代でも約6割は初期の歯周病。
この初期から進行させないことが大切ということでした。

 歯周病は、歯垢(歯につく白いカス。細菌の塊)が歯と歯ぐきの境目に付着することで発生しますが、
この歯垢(病原菌)は、歯ぐきに付くと比較的早期に、歯ぐきに炎症を起こします。

 実は、この炎症を起こし「歯肉炎」と呼ばれる状態になった時点でもう、「歯周病」です。

重い病気になる前、菌に接触し、それほど症状が進んでいない時点で「歯周病」認定される、
これがギネスブック認定、「人類史上最も感染者数の多い感染症」、
の理由の一つかも知れません。

 「歯肉炎」。 この時点では、まだ歯自体を揺るがす「歯槽骨が溶けてきた」という状態には程遠く、内部にあまり進行していなくて、歯ぐきの表面が炎症を起こしている状態。

 ただ、これを放置してしまうことで、徐々に炎症が歯ぐきの奥に進行していき、
「歯肉炎」から「歯周炎」。
 歯が植わっている土台、歯垢骨を溶かして歯がグラつきだし、
さらに進行して歯自体が植わっていられなくなるほど歯槽骨が溶けて、抜ける。
という経過をたどる、「重度の歯周病」になります。

 この「軽度の歯周病」を「重度の歯周病」にしないことが、とても大切なのですが、
それには、この歯肉炎と呼ばれる軽度のうちに、気が付いて対処していく必要があります。

 「歯肉炎」は、痛みもなく、すぐに出血もせず、腫れも微妙な変化。 その上
慢性的で、「いつもこの状態」ということが長く続くので、

そもそも「炎症を起こしている」ことに、多くの人は気が付きません。

 とも歯科衛生士さんもその一人で、
小学生の時、「この白いカス、なんだろう?」と思ってました。(笑)
歯ぐきもガンガン腫れていましたが、
全く気が付いていませんでした。(笑)

 テレビのコマーシャルなどでも、よく「歯ぐきの腫れ」というのですが、
腫れに特徴的な、「熱」、「痛み」がなく、
「膨らみ」も1ミリ以下程度、
「赤くなる」といっても、そもそも歯ぐきは赤いもの。

という状態など、初期の歯周病の炎症は、
物事をよく観察している方が、気づくかも。
ぐらいのイメージ。

痛みも不快感もないので、この症状が出たから、歯医者さんへ行こう、と思える人は、めったにいません。

さらに、前歯は磨きやすいので良く磨けている、のですが、
奥歯に磨き残しがあります。

という状態になると、歯周病を知らない人が自分で見つけるのは、無理かも。
と思える範ちゅう。

現実に、自分で全てを発見、治療するのが、不可能、とまでは言い切りませんが、困難。

それで放置され続け、「後期高齢者の3人に1人が総入れ歯」。

という結果なのかも知れません。

「昔は、歯が痛くないのに歯医者に行く、ということが常識ではなかった。」
ということも理由かもしれませんが、

「後期高齢者の3人に1人の方の歯が一本もない」という事実は、とても重いと思います。

 

 今は、この炎症を見つけた段階で、歯周病を回避するように予防できる、「予防歯科」が分かっています。

薬を使った処置でもなく、手術が必要でもない、「磨き方」や清掃で多くの場合の歯周病を回避できます。

 初期の歯周病は誰でもかかるような、ごく軽いものですが、
これを放置せず、

ここで、「歯科医院にかかる」、ことがとても大切です。

 歯周病は誰でもかかる一般的なものですが、
歯科医院にかかってブラッシング指導などを受け、定期的な清掃やケア、検診を受けると、
重度の歯周病に進行せず、歯を長く残すことにつながります。

 歯周病で歯を失わないためには、
このほとんど自覚症状のない「歯肉炎のうちに、歯医者さんに行く」、
つまり、
「自覚症状がない時点で、行動する」こと。

これが明暗を分けます。

「どこも悪くないのですが、定期的に歯の清掃をして頂きたいと思って」
という歯科医院の予約は、今、珍しくなく、歯科医師や歯科衛生士にとって普通のことです。

むしろそうしないことが、多くの歯周病の進行に繋がり、歯を残せるリスクとしてはとても危険ですので、
ぜひ予約をして歯科医院に通って頂きたいと思います。

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