歯周病とは (骨が溶ける病気)

 口の中の二大疾患は、歯周病と虫歯です。

今日はこのうち、歯の喪失原因で一番多い「歯周病」について書いてみたいと思うのですが、
えーこれがですねー、けっこう説明しづらい。
(歯科衛生士にあるまじき発言。(笑))

まず、事件現場が歯ぐきの下。
見えていないところで起こる。
(たいていの病気はそうですが。(笑))

歯ぐきの下の構造なんて、普通の生活では、ほとんど考えないで過ごすので、想像力が必要かと思いますが、
ちょっとイメージしてみてください。

まず、分かり易くするため、「歯ぐき(歯肉)」をただの「カバー」だということにしてみましょう。

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さて、このカバーをはずしてみます。

このピンクの歯ぐき、カバーの下では、「歯槽骨」という骨が、歯の根を植えています。
ちなみに「歯槽」とは、歯を入れて置く槽という意味。
歯槽骨には、歯根が植わるように、歯の数だけそれぞれの歯根の形の穴が空いています。

 ちょうどこの歯槽骨の穴に、歯根が刺さって、深く植わっている状態。
これを健康な歯槽骨の状態だと考えてみます。

 歯周病になる前の時点では、歯槽骨は、ほぼ歯根の長さに匹敵する感じで深く歯を植えています。
その分、歯根を入れている穴も深い。

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歯の根の部分、少しベージュ色になっている部分が「歯根」、
白い歯の部分を「歯冠」と言います。
 健康な時は、この歯根の長さの多くの部分が歯槽骨にしっかり植わっています。

 しかし歯周病になると、この歯槽骨が徐々に溶けて、穴の深さが、どんどん浅くなっていきます。

 この「歯槽骨」が徐々に溶けて無くなっていく病気、それが、「歯周病」です。

えー、歯槽骨の溶けるイメージとして。

歯周病
d_40 歯周病進行絵

  注目は薄いピンクの部分。
どんどん減っていっているのが分かりますか?

このような感じで、歯槽骨が溶けて無くなっていくイメージです。
その分、穴の深さが浅くなり、歯根が露出して、植わっていられなくなり、揺れるように動き出し、抜けていきます。

 外見の見た目では、歯槽骨が減った分、歯根が伸びるように見えてくるのですが、
パッと見で、歯根が伸びた、と分かるときばかりでなく、
歯ぐき(カバー)が腫れ、歯槽骨の減りを大きく隠して、
一見、あまり歯根が伸びたように見えないながら、
歯ぐき(カバー)の下の内部で、歯槽骨が失われていっていることが多々あります。

 この深い穴が浅くなってくる具合、つまり、歯槽骨がどれだけ溶けているか、
ということで、歯周病の軽度、中度、重度、は、決まるのですが、
これを調べるために、歯と歯ぐきの間にプローブ(目盛りがついた細い物差し)を入れ、健康な状態であれば2㎜程度であるはずの隙間が、どのくらい深くなっているかをミリ数で測ります。
この深さの分、歯槽骨が失われている可能性があります。

これが、いわゆる「歯周ポケットの深さ」と言われるものなのですが、
2㎜までは、歯周病になる前の健康な歯槽骨。
4㎜以上になれば歯周病の始まりを疑います。

歯周ポケットはココ。 
フロス(糸)が歯と歯ぐきの間に入って見えなくなっているのが分かりますか?  この隙間の部分のことです。

ココが、歯肉溝(深さ3㎜まで)、
又は歯周ポケット(3㎜以上になると、ここを「歯周ポケット」といい健康な状態であった時の「歯肉溝」とは別の名称で呼んで区別します)と呼ばれるところです。

例えば歯周病ポケット7㎜と言われたら、健康な状態の深さ約2㎜を引いて、
5㎜位健康な状態とは差があります。 それだけ、歯槽骨が溶けて無くなっている可能性がある、というような感じです。

 さて、では歯槽骨は、どのくらいまでなら、無くなっても歯を残せるのでしょうか?

 歯根は前歯の方が長く、奥歯は短い。当然、同じミリ数でも、歯根の長い歯、と短い歯では、歯が抜けるリスクが違ってきます。(ちなみに一番歯根の長い歯は上の犬歯です。)

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はっきりした数字は決まっていませんが、目安として、
歯肉溝の深さは、正常な状態なら1~2㎜、深くても3㎜まで。
中等度の歯周病は、約4~6㎜。
6,7㎜以上の数字であれば、重度の歯周病、とききます。
個人的な印象でいうと、6㎜ぐらいで、深いな、と感じ、
9~10㎜なら、残せるかな、と頭をよぎります。
ただこれは目安で、この数字だけで判断するものではなく、その歯にもよりますし、
歯の根の周りの一部だけ、とても深くて、他は浅い、などということもありますので、一概には言えません。
(歯の根の奥側は6㎜でも手前側は3㎜、等。)
例えば歯の周り一周のうち、一箇所だけが5㎜、という状態と、手前側も奥側も周りが全部5㎜の深さが続く状態では、歯周病の程度が違います。
 現実的には、歯ぐきの状態や、歯の動揺、出血等の有無など、実際の症状をみて歯科医師が判断します。

 さて、歯槽骨がどんどん溶けていくのが歯周病、と書きましたが、
延々にどこまでも溶け続けるか、と言えばそうではありません。

歯槽骨に空いている穴の深さが、歯を支えきれなくなるまで浅くなって歯が抜けてしまうか、
そこまで行く前に、歯科医院で抜歯するか、
とにかく、歯が抜けてしまえば、もう歯周病で、歯槽骨が溶けることはありません。
歯周病は、歯と歯ぐきの間に入った菌が、歯槽骨を溶かし続ける病気。
歯が全て無くなった時点で、「歯周病」は、なくなったということになります。

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