白い歯の被せ物。保険と保険外の個人的な所感。

 「儲けようとしている歯医者」みたいなキーワードで来てくれた方がいらっしゃいました。

みたいなキーワード、と書いたのは、他にも似たようなキーワードで来られる方々がいらっしゃるからです。(笑)

本当に良い治療なのか、それとも儲けたいだけなのか、
金額が高額なので、疑いたい気持ちになるのも分かります。

今回はこのことについて書いてみたいと思います。

 先日、保険の白い歯の被せ物が、一部保険適用になった記事を書きましたが、
(コチラの記事。『平成26年4月。 今まで自費だったハイブリッドレジン冠(白い歯の被せ物)が一部、保険適用になりました。』

保険と保険外(自費)の被せ物の違いで、気になるのは、やはり値段的なことかと思います。

保険外(自費)の被せ物(冠)は歯科医院によって値段が違い一概には言えないので、目安ですが、だいたい一本8万円~15万円ぐらいだそうです。
治療する歯の本数が多くなると、百万円単位なんてことも。

そのお金、歯に使うなら、私が好きに使いたい。(笑)
歯も毎日見られるが、バックだって洋服だって毎日のように見られるわけで。
友達と行く食事も、日々楽しみたいわけで。
決してパソコンだけが趣味ではなく、あんな趣味も、こんな趣味も、あるわけで。(笑)

と、もし歯科のことを知らなければ値段だけ見て、私も思ったかもしれないのですが、

今、あえて、どこの歯科医院にも勤めていない(誰が保険外を入れても全く自分の儲けに関係ない)フリーの立場で言ってみると、
私なら白い歯の被せ物は、保険外(自費)を入れます。

値段的に全部は大変なとき、奥歯の金属(銀歯)は保険で入れることがあるかもしれませんが、
小臼歯より前の白い歯は、保険外(自費)を入れたいところ。

小臼歯とは、ここ。

P1030512-point3
犬歯の後ろの2本ですが、ここを金属にすると目立ちます。
なのでココから前の歯は全部、白い歯にしたいところです。
(下の歯の写真ですが、上の歯も同じ位置にある歯を小臼歯と呼びます。)

小臼歯については、前回記事で紹介したように、今回保険の白い歯の被せ物の選択肢が広がり、材質は上がりました。
新素材についてはまだ使い始めて間もない状態で、予後は分からないのですが、
主に今まで使われていたもので現在も保険適用中の小臼歯の白い被せ物の冠(硬質レジンジャケット冠)について、
(硬質レジンジャケット冠は今も保険適用中で、新たな材料も使えるという選択肢が(ハイブリッドレジン冠(CAD/CAM冠)が要件付きで)増えたということです)
個人的な所感を書いてみたいと思います。

小臼歯の被せ物で保険の物は、歯科医師に噛み合わせの圧に耐えられると判断された方だけが、
金属を使わない白い被せ物ができることになっています。
噛み合わせの強い方は、金属(銀歯)のみ保険適用。
また、金属を使って上に白い素材を付けた物は、犬歯までの前歯のみに適用されているので、保険では小臼歯より奥歯には使うことができません。

その保険の白い歯の材質はプラスチック。
そこに今回新たにプラスチックに陶器の粉を混ぜ込んだ物も要件によりOK、ということになったのですが、
その理由は、今までの保険の物の材質があまり良くなく、多くの歯科医師が積極的に使うことをさけたい冠としているからかもしれません。
(歯科医師の先生が硬質レジンジャケット冠の所感を書いて下さっているページを見つけました。『歯チャンネル88のサイトへ』

 よくネット上での質問に、保険と保険外の被せ物、どちらにしようか迷っている記事や、良い歯医者さん選びの相談の答えで、「自費を勧めるのは儲けたいから。きちんと保険で治療してくれる歯医者さんもありますよ」といった患者様同士でのアドバイスがあったりするのですが、

確かに、コスト的には、保険外を入れた方が歯科医院は儲かります。
なので、儲けようとして歯科医師が保険外を勧めているのではないか、と、疑われることも多々あるようなのですが、
(ネット上で初めて、こんなに疑われていたことを知りました。(笑) 
もう少し多くの方が、「本当に良い物だから勧めてくれるんだな」、と思ってくれていると思っていました。(笑))

ただ、正直に言うと、歯科医師や歯科衛生士が治療するとき、自分達には、なるべく保険外を入れます。
(とくに硬質レジンジャケット冠)
(データーもないですし、全ての歯科医師、衛生士、とはいえませんが、私の知っている方は皆さん自費。 私の第二小臼歯(小臼歯の奥側の歯)にも、自費で支払った保険外のセラミックの被せ物が入っています。)

歯科医師の先生が治療に来られることもありましたが、歯科医師や歯科衛生士が、保険の白い歯の被せ物を選択しているのを、私はまだ、見たことがありません。

もちろん、家計が困っているとか、とてもピンチなときは、そんなこと言っていられませんが、選択できるならそうすると思います。

 これには、審美的な見かけもありますが、耐用年数が大きく関係していると思います。

保険の白い歯、金属を使わない物の場合、その素材はプラスチック。
(H26年4月から、プラスチックに陶器の粉を混ぜ込んだ物が使えるようになりましたが、プラスチック素材なので、劣化(変色)はあるそうです。この新素材の長期的予後はまだ不明です。)
口の中の環境で、多くは数年~十数年のうち、たとえもう少し長く持たせることが出来ても、どこかで再治療になることが多く、一時的というか、どの時点かで再治療になることの多い素材だからです。

再治療になれば、その度に歯を削り、歯が小さくなり、また再々治療になっていって削り、繰り返して、被せ物が出来ないくらい歯が小さくなると抜歯です。

オールセラミックの冠(保険外)なども、歯周病や虫歯にかかれば治療になりますが、
少なくても、セラミック(陶器)自体はほぼ劣化しないため、被せた物じたいの経時的変化や材質で、再治療になることがさけられます。ブラッシング方法を覚えて歯周病予防ができ、PMTCに通ってクリーニングや管理をし虫歯にかからなければ、長く持たせられる可能性があります。

再治療をさけ、歯周病や虫歯を予防する。

このサイクルが整うと、長く健康な口の中でいられる可能性が高いので、きちんとしたブラッシング指導を行い、予防に努めて管理するような治療を心がける歯科医院としては、
材質が良くなく再治療になる可能性があると分かっているものを、安いからと言って安易にお勧めできない。
ということだと思います。

自費の治療を勧めただけでも、「儲けようとしているんだな」と思われてしまうこともあるようなのですが、
それだけではなく、強度や劣化、材質のデメリットもあって、保険外の被せ物をお勧めしていると言うことも、ご理解いただいた上で、ただ、金額のかかるものなのでそういう個人的な状況を考慮して、
患者様御自身が、保険か保険外か選択されるといいと思います。

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