歯と歯の間を磨く道具として、「フロス」や「歯間ブラシ」がよく使われます。
実際フロスの普及率は5%ほどだそうなので、よく使われて、は、いないようですが、(笑)
歯と歯の間の清掃用具としては有名どころなので、そう書いておきます。(笑)
では、歯と歯の間を磨くとき、フロスと歯間ブラシどちらを使えばいいのか、ということですが、
これが全く一長一短。どちらが優秀かというより、個人の口の中の形、使い勝手や好みにより使い分けが必要です。
今回はその大まかな特徴を書いてみたいと思います。
まず、使いやすさでは、歯間ブラシの方が使いやすいかと思います。
フロスは歯と歯の間をのこぎりを引くように歯と歯の間のコンタクト部分を少しずつ通して、歯と歯ぐきの間に到達します。
この手間が、奥歯になるにつれ磨きづらくなります。
歯間ブラシは、歯と歯の間のコンタクト部分は磨きません。
いきなり「歯ぐきと歯の間」、歯周病のポイントに入れて、その部分の歯周病菌を落とすように磨きます。
爪楊枝のように差し込む形なので、歯と歯の間に隙間があり、ラクラク通るスペースがあれば、入れやすく使いやすいと思います。
歯と歯の間に爪楊枝のように入れたら、
まず、「前の歯」の「歯ぐきと歯の間」に押しつけて、そこを出し入れするように磨き、
次に「後ろの歯」の「歯ぐきと歯の間」に押しつけて、そこを磨く、
という感じです。
写真のように、「前の歯」、「後ろの歯」それぞれの、
「歯ぐきと歯の間」に押しつけてそれぞれ磨きます。
この時の歯間ブラシは、水平方向に出し入れする動きなので、
歯の汚れは一直線、漢字の「一」のように落ちます。
また、歯間ブラシについている毛の長さは、太いければ太い歯間ブラシほど長い。
これにより、歯にくぼみがあっても、ブラシの毛先が届く形になります。
歯科衛生士が、歯と歯の間に無理しないで入る範囲内で、なるべく太い歯間ブラシをお勧めする訳は、この毛の長さにあり、
窪みや入り組んだ所など、歯垢がたまりやすい場所に、多くの毛先が当たって汚れが落ちるのも、歯間ブラシの良いところだと思います。
さて、一方のフロスですが、こちらもなかなか優秀です。
フロスは、ピンと張った糸のように使います。
これを歯と歯の間のコンタクト部分を通して歯ぐきまで到達させます。
フロスは、このピンと張った状態のまま、垂直に動かして使用するため、
清掃は線ではなく「面」で取れます。
歯ぐきと歯の間(歯肉溝)にも細く入り込むため、この中にもぐりこんだ歯周病の原因菌(ジンジバルプラーク)を直接取れ、正しく使えば歯茎の炎症を押さえるのに効果的な清掃をすることができます。
ただ、ピンと糸の張った直線上だけフロスが歯面に当たりプラークが落ちるので、
歯の清掃面にくぼみのあるような時(とくに歯根など)には、フロスが当たらず、そこに歯垢がたまってしまうことがあります。
若い世代は、歯と歯の間に隙間があまりなく、歯間ブラシが入らないことが多いので、歯間ブラシが使えずにフロスになるということもあります。
私も歯科衛生士になりたて頃は全然入らなかった歯間ブラシですが、最近は細いタイプも出てきてスパスパ入るようになり、年齢を感じます。(笑)
そんな私ですが、実は歯間ブラシを使わないところがあります。
実はフロスは、この歯間乳頭(しかんにゅうとう)をあまり擦らず残すよう清掃できる優秀なアイテム。
歯周病になる前の健康な歯ぐきには、この「歯間乳頭」があります。
歯と歯の間で、歯ぐきが三角形に尖っている部分です。
これが、歯周病になると消失し、三角形の尖りがなくなって、平坦な一直線状となるため、
歯と歯の間は(埋める歯ぐき(歯間乳頭)がなくなって)空いて見えてきます。
この歯間乳頭を年齢が上がってもなるべく長く残すには、若い頃から歯周病を予防し、歯周病にかからないようにする必要がありますが、
この予防には、歯周病の原因となる歯肉溝の歯周病菌(ジンジバルプラーク)を直接とりのぞき、歯間乳頭を擦らず、傷つけにくいフロスが良いと思います。
歯周病が進んでしまうと、歯間乳頭は消失してしまうので、その時は歯間ブラシもいいと思いますが、
まだ美しい歯間乳頭が保てる時はフロスを、とくに上の前歯には使っています。
細かく言えばまだ違いはあると思いますが、大まかな特徴としては、こういう感じかと思います。
患者様それぞれの口の中に合わせた選択が必要ですが、歯周病になってからは歯間ブラシ、歯周病になる前や若いウチはフロスをお勧めされることも多いかと思います。
歯ブラシと併用して、歯間ブラシやフロスを使うことは、歯周病予防や治療にとても効果的です。
健康な口元、美しい口元を保てるアイテムなので、今まで使ったことがない方も一度、お使いになられてみるといいと思います。