歯ブラシの硬さはどれを使ったらいいのか? 「かため」の歯ブラシの考察。 メリットとデメリット。 かための歯ブラシは、プロ仕様。 (長文)



 歯ブラシ選びでは、その硬さで迷う方もいらっしゃるようです。

歯ブラシと言えば、「かため」「ふつう」「やわらかめ」の3種類から選ぶ。

それが当然のような時代を知っていらっしゃるかどうかは分からないのですが、
今は、硬めの歯ブラシの選択肢がはずされて、「ふつう」と「やわらかめ」から選んだりすることもあります。

 さて、そんな歯ブラシの一種類、「かため」は、昔と比べると少なくなったと思います。

 今日はその考察。
最近硬めの歯ブラシが推奨されにくく感じる理由。

 歯科衛生士の一般的な答えで言ってしまうと、それは、「かため」の歯ブラシは、磨いたときに力が入りやすく、歯ぐきがすり減ったり、歯が摩耗したり等々の弊害をおこしやすいから。

 以上。 終了。

 と言われることが多い気がするのですが、今日はもう少し書いてみたいと思います。

 1995年、日本で、PL法(製造物責任法)という法律が施行されました。
これは、「製造した側」の責任はなかったか?
と問うもので、
この法律が先に施行されたアメリカでは、
飛行機事故のあった際、(個人のセスナなど)乗っていた本人の操作ミスがあっても、
100%飛行機製造会社が訴えられる、
というような事態を招きます。

 それまでの日本には、戦前戦中の教育の影響を感じさせる、どちらかというと、
「自分に起こることは全て自分の責任。」
「人のせいにはするな。」
「言い訳はしない。」
というような美徳感があり、その商品を使った「本人」の責任や過失がなかったか、と、問うような風潮が強く、(いかにも「昭和」、というイメージですが)
商品を使って事故等があった時、ほとんど「使い方を間違った」、「消費者の不注意」という感覚が多かったところに、
「商品を作った会社の責任を問う」という、当時ある意味、新しい感覚が入ってきて、

『アメリカで、マクドナルドのコーヒーを飲んだ際、膝にこぼしてやけどを負った年輩の女性が、
「やけどをしたのは、マクドナルドの売ったコーヒーが熱すぎたから」としてマクドナルド社を訴え、
マクドナルド社に64万ドルの賠償金支払いを命じる判決が下った。』
 その根拠となった法律(PL法)その考え方が日本にもくる、と大きな話題になりました。
(ある年齢以上は知っている。(笑))

ただ、マクドナルドコーヒーでやけどを負った女性は現実にやけどの治療費もあり、ケガの程度も軽くなかったようで、報道であおられた部分もあるのかもしれず、この判決自体とPL法のイメージを合わせるのは実際には是非のある問題だったかもしれないのですが、
とにかく当時はそういうイメージでとらえられていて、
そのPL法が日本で施行されることになり、
今のようにリコール、製品に欠陥があったので回収する、ということが一般的でなかった当時、
これから作った製品の責任を大きく問われることになる大手家電メーカーなど製造業の企業が、戦々恐々としていたのですが、
この法律の施行によって、
それまで、日本人のなかに無意識の美徳のようにあった、
「起こることは全て自分の責任」、「人を責めるのではなく、まず、自分を正せ」というような感覚が、
徐々に、「作った側の責任」を問うのが多数派、
という雰囲気に変わってきたように思います。

ここら辺は、けっこう極端、というか、
感覚とは、時代により本当に変わってくるものだという気がするのですが、
戦前、戦中、戦後しばらく、学校で先生に叩かれたら、それは100%、生徒が悪い、
という雰囲気が、戦後から現在に至る長い時を経て、真逆になったように、
今は、「作るときには、その事故は想定できなかったのか、考えられなかったか」ということが、
「使う時に注意して使えなかったか」ということよりも大きく問われるように感じます。

(とも歯科衛生士さん、いったい、いつくなんだ? という話ですが、(笑)
そこまで年輩でもありません。(笑))

 この「製造者側の責任」が問われる、という考え方が、結果的に事故を大きく減らすことになるので、その意味は大きくあると思うのですが、
現実にはさらに各個人が、「気をつけて使う」ことで、事故や災難を未然に防ぐことになります。

 さて、硬めの歯ブラシの話に戻りますが、
硬めの歯ブラシが市場から減っていった時期と、この考え方の広がりは、重なっているようにも思います。

今、歯ブラシのパッケージに、「歯科医師、歯科衛生士の指導の元につかいましょう」というような注意書きがあるのを見かけます。

マクドナルド社のコーヒーにも、今は「熱い」ので注意してください、てきな注意書きがあるそうですが、
製造者側が、製品を受け取った人に危険がないように注意喚起をうながすという意味で同様につけられているかと思います。

歯ブラシは作ったら終わり、ではなく、
その後、それを使った人に弊害がでないように、
細心の注意が払われ、
弊害を出さないでほしいという雰囲気を感じます。

ただ、そこから徐々に、軟らかめ、超軟らかめの歯ブラシが、多く売り出され、
弊害のでやすい硬めの歯ブラシは、あまりお勧めされない風潮がでてきたように思います。

 

 海外の歯ブラシでも、硬めがなく、普通より軟らかめのタイプしか作られていない歯ブラシがあるので、やはり硬めは、力が入りやすく、気をつけて磨かなければいけない歯ブラシという認識が強くあるように思います。

ちなみに、スウェーデン国民の約8割が使っている「テぺ歯ブラシ」の硬さは3種類あるのですが、その表示は「普通、やわらかめ、超やわらかめ」。
「かため、普通、やわらかめ」ではありません。

「かため、普通、やわらかめ」という表示は、けっこう主観的なもののようで、
同じ「ふつう」でも、メーカーによって硬さはマチマチ。
なので、3種類だすなら、「普通、やわらかめ、超やわらかめ」、としなくても、
「かため、普通、やわらかめ」でいいのではないかという気もするのですが、
実際、テぺの歯ブラシ。
「普通」の硬さの歯ブラシでも結構やわらかいと感じます。

 今の流れ、主流としては、硬めの歯ブラシをさけ、
やわらかめをお勧めする、というところなのかもしれません。

 さて、たしかに硬めの歯ブラシは、軟らかめの歯ブラシよりも弊害が起きやすく、
患者様にお勧めするのにはリスクがあります。

 ただ、では、歯科衛生士が硬めの歯ブラシを使うと、同じように弊害を起こしてしまうのか?

と言われると、
 実は、歯科衛生士が硬めの歯ブラシを使っても、
それで即、弊害をおこしてしまう方は少ないように思います。

これ、実験したわけでも、なんでもないので、全員そうですとは言い切れませんが、
硬めの歯ブラシで磨いても、
歯の磨き方や、どこにどんな当て方をすればどうなるかを理解している歯科衛生士であれば、
ほとんど弊害なく使いこなせることが多い。
(使いこなせない方が少数派。 多分。)

よっぽど針金のように剛毛、とか、
ナイフみたいに尖って触るものみな傷つけた、てきなものでない限り、
ただ「硬めの歯ブラシ」程度の硬さで歯科衛生士まで全員弊害を起こすぐらいなら、そもそも発売自体されない商品という感じです。
(ただ本当に硬すぎる歯ブラシは、お勧めしません。)

ここら辺は、全く個人の感想というところなのですが、
歯磨きの専門家で、弊害がどういうものか知っていて、弊害なく使いこなせる歯科衛生士の私にとって、
若干硬めの歯ブラシは、ある意味、時短で要領よく磨ける歯ブラシ。

ただ私も、「かため」表示のものはほとんど使わず、
「ふつう」表示の中で、硬めに感じる歯ブラシを使っています。

やわらかめばかりが勧められる印象ですが、それよりも少し硬めであっても、
磨き方さえ良ければ効果的に有用に使えるのではないか、と思います。

よく力を入れて磨いた場合と、力を抜いた(正しい圧で)磨いた場合の歯垢除去は、
正しい圧の方が隅々にまで的確に当たって大きくなるので、混同しやすいのですが、
それとは違い、
硬めの歯ブラシと軟らかめの歯ブラシで、同じ一かきした時の歯垢除去率は、
硬めの歯ブラシの方が大きいことが多いように思います。

これ、いろいろな歯ブラシがあり、全てで当てはまるわけではないので、言い切れませんが、
常識で考えて、硬めのブラシと、超柔らかめのブラシでは、
汚れ落ちはやはり違い、
ただ、それによって傷がついたり、という欠点がある、という感じかもしれません。

硬めと軟らかめのブラシを同じように使ってみると、
軟らかめの歯ブラシではなかなか汚れが落ちにくいので、
今は、それをカバーするように、高密度植毛などがあり、
機械的に擦る本数を増やすことによって、
より汚れ落ちがしやすいというような工夫がされていると思います。

 歯科医師、歯科衛生士に直接指導を受け、弊害のないように使いこなせる方にとっては、
少し硬めの歯ブラシでも、メリットのある歯ブラシであるといえると思います。

 最近、ベストハイジニスト賞を受賞された歯科衛生士さんのブラッシング指導を見せていただく機会があったのですが、
患者様の歯ぐきの炎症が、ブラッシング指導で徐々に軽減されていき、
何度目かのブラッシング指導で、患者様の歯ぐきの炎症が引いて、ある程度硬さのある歯ブラシでも使いこなせる患者様だと判断した段階で、歯ブラシの硬さを、少しずつ硬さのあるものに上げていき、
(「かため」という表示ではなく、各メーカー織り交ぜながら実際毛のやわらいかいものから、歯ぐきの状態に合わせて、少し硬さのある物にしていく感じ)
バトラー211(「ふつう」表示ですが、テぺ歯ブラシなどと比べると、同じ「ふつう」でも硬めに感じる歯ブラシ)と、プロスペックを差し出して、患者様に選ばせる形でお勧めされていて、
歯ぐきの状態と、患者様の実力(毛の硬さがある程度あっても弊害なく使いこなせる患者様かどうか)によって使い分け、その患者様の歯ぐきの状態がよりベストな状態になるように持っていくブラッシング指導の様子が、とても勉強になりました。

 私も「かため」表示のものを勧めることはほとんどなく、「ふつう」表示のなかで弾力のあるものをお勧めする感じですが、
硬さ(弾力)のある歯ブラシをひたすら避け、軟らかめのものばかりお勧めすることは少ない印象です。
 ここら辺は患者様の歯ぐきの状態と磨き方によるところですが、
硬めの歯ブラシは、毛自体がもつ威力が大きく、
使い方を間違うとそれが弊害となって、患者様の口腔内に現れます。
また、歯科衛生士が「かため」の歯ブラシをお勧めすると、
「時と場合に応じて勧められた」ということが理解されず、硬めの歯ブラシを安易に使ってしまう可能性があるので、歯科衛生士としてはなかなかお勧めしにくい硬さともいえると思います。
 若干硬めの歯ブラシは、使い方を誤ると弊害が出やすくなってしまうというリスクもありますが、
上手に使いこなせば、短時間で多くの歯垢をとり、歯ぐきのマッサージもできるというよい面もあります。
 間違った使い方をすると歯ぐきが減りやすいなど弊害が出やすいので私としても、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士さんからお勧めされた場合につかいましょう、という教科書のような注意書きを添えたいと思いますが、
歯科衛生士さんの指導のもとに使いこなしてみると、気持ちよく磨ける歯ブラシだと思います。

 

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