(2)「保険と保険外の違い」、の基礎知識。 『歯科医院』の本音と現実。

 前回、「(1)「保険と保険外の違い」、の基礎知識。 『健康保険』 の記事を書きました。
今回はその続きです。

2.『歯科医院』の本音と現実。

 まず、歯科医院の歯科医師の本音で言えば、
先生がお勧めする「保険外(自費)」の被せ物(クラウン等)の歯を患者様には入れて欲しい、と思っています。

 一つには、保険で使う材料より良い状態で長く使うことが出来る「良い物だから。」
もう一つには、「儲かる」。
という理由です。

  実は歯科には、

「お金になる診療」と「あまりお金にならない診療」があって、

例えば、
歯周病は、かかる前から歯ブラシで歯と歯ぐきの境目についた歯垢をとることで、多くの方が
予防できる病気ですが、
同じ『ブラッシング指導』を受ける場合でも、
「歯周病にかかっていない時に受ける、予防」のためのブラッシング指導は、保険はききません。
「歯周病にかかってしまった後、治療として」ブラッシング指導を受ける時に、保険適用となります。
つまり、歯科医師が「今ブラッシング指導に入れば歯周病が防げる」と判断しても、
保険では一銭にもならない。
結果、
歯周病になるまで待つか、自費でブラッシング指導を受けて頂くことをお勧めするか、
どちらかの選択になるのですが、

ここで、自費でのブラッシング指導をお勧めすると、患者様は、

「この歯科医師は、儲けたいんだな」
と思う。(笑)

同じように、「プラスチックの白い歯ではなく、自費のセラミック(陶器)が良いですよ。」
(保険の白い歯の材質はプラスチック。年数が経つと劣化し、傷や変質があります。)
と、お勧めすると、患者様は、

「ここの歯医者は、儲けたいんだな」
と思う。(笑)

 確かに、患者様の言うとおり実際に自費の診療は無料ではなく、「儲かる」という現実があるので、患者様の考えていることは間違ってはいないのですが、

これが、
「歯周病になるのを待つか、ならないで未然に防ぎ長く健康な歯と歯ぐきを保つか」の選択であること、だったり、

「(保険の材質自体が変質するので)年数が経てばまた再治療が必要な可能性が高い。
その時に、治療回数が増えることで抜歯等にならないように、なるべく少ない回数で治療を終えたい。そのため、(材質自体の変質を特に意識しなくても良い)保険外の材料を使いたい」という選択である。

と、いうことが非常に患者様に伝わりにくい。

結果、
保険外を勧めれば勧めるほど、「儲けたい歯医者さん」の烙印を押されかねないので、
あまり熱心には勧めず、

本当は不本意な治療と思っていても、保険の治療で終わらせる。
という歯科医院もあります。

 現実に、歯科医師や歯科衛生士が治療する場合、自分達は白い被せ物などは自費の物を選択して治療する方がほとんどです。
保険の白い被せ物をする先生や歯科衛生士も、もしかしたらいらっしゃるのかも知れませんが、(歯科医師全員を知っているわけではないので)
私の知っている範囲では、正直今まで、聞いたことがありません。
(歯科医師や歯科衛生士は材質も、それを入れた後の予後の経過も、よく知っているので、そういう選択になります。)

このことを患者様に御説明することが、
保険治療で、時間単価が低く、なるべく短時間で多くの患者様を診なくてはならない診療時間の中だと、
難しい場合があるときもあると思います。

もし仮に、これがセラミック(自費)もプラスチック(保険も)、全く同じ値段で、
歯科医師が勝手に選択して患者様の口に入れて良い、とするなら、
セラミックを使わず、保険のプラスチックの被せ物を使う歯科医院は、問題になってしまうかも知れないのですが、

値段に大きな差があるので、そうはならず、逆に、保険外の選択肢を提案するだけで「儲けたい歯医者さん」てきな位置づけになってしまうのは、ちょっと不本意なところかも知れません。

 

 ただ一面で、セラミックの白い歯は材質もいいですが、値段もかなり高価で、自費で入れると歯科医院は儲かって潤います。
歯科医師にとっては両得(自分が良いと思った治療ができる、又、お金も入ってくる)ですが、
患者様にとっては、一長一短(良い治療をしてもらえる、が、高いお金を支払う)、
というのが、難しいところです。

 現在、歯科の保険診療は、値段が低く、それだけで歯科医院の経営を立ちゆかせるのは、厳しいところがあるそうです。
 患者様によっては、歯科医院の先生が、本当に患者様のためになる治療をしたい、という気持ちの他に、歯科医院の経営も成り立たせいという考えのあることを快く思わない方もあるので、
本当に、自費の方が良い治療だと思ってお勧めしていても、「儲けたいから勧めるのだ」と思われてしまうこともあります。

 保険と保険外の選択は、保険で適用されている治療の内容に、どれだけ満足できるか、ということでもあると思います。
同じ白い歯を見ても、プラスチックと陶器の物では、そこに歴然とした材質の違いがあり、
プロである歯科医師が、プラスチックで満足できないのは、当然のことだと思います。
ただ一方で、お金を出す患者様自身が、内容に100%納得して、治療を受けられないとするなら、
値段的にも精神的にも大きな負担となりかねません。
 歯科医師は、患者様に、選択肢をきちんと説明して、患者様自身に一番納得した治療を受けて頂く、という信頼関係を結ぶ技術も必要になっていて、
今、歯科医師は「医療人」として患者様に医療を施すこと、の他に、「経営者」として利益を出し、歯科医院を安定して経営していく手腕の2つを問われている、というのが実際のところだと思います。

次、(3)「保険と保険外の違い」、の基礎知識。

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