美しい歯間乳頭を残す。

 デンタルフロスは、細い糸状のものであるため、あるていど器用な人のほうが使いやすいと思います。

 なのであまり器用ではない方は、無理をせずフロスホルダーを使うのがいいかもしれません。

  

 

  指に巻き付けて手でフロス使っても、一番使いやすいのは上の前歯。
逆に一番使いづらいのは、奥歯です。

大きな声では言えませんが、日本でのフロスの普及率は約5%。
(言ってる。(笑))

ただ、もし、ある程度年齢が上がっても、美しい歯間乳頭(歯ぐき)をのこした口元でありたいなら、 若いうちから、
フロスを使ってみるといいと思います。

歯間乳頭とはココ。
(青い丸の部分が歯間乳頭です。)
P1030481 point1

 この歯ぐきの三角形の尖りが、歯周病になると消失して一直線状になるため、
歯と歯の間を埋めていた歯ぐき(歯間乳頭)が無くなって、歯と歯の間は空いて見えるようになります。

高齢になって、このように空いてしまう方はとても多いです。

これを防ぐには、歯周病になる前に、ここに住む歯周病菌を日常的に取り除いておく必要があります。

それを可能にするアイテムが、フロス。

定期的に歯科医院に通って歯石除去やクリーニングを受け、フロスをかけることで、
歯間ブラシが入らない若い頃から歯と歯の間の清掃をすることができます。

ただ、フロスを歯ぐきに当てるときは、使い方に気を付けなければ勢い余って逆に歯ぐきを傷をつけたり、
強く押し込んで弊害のでること等もあるので、
無理に歯ぐきに使うようなことはせずにそっと使います。
 歯科医院でブラッシング指導を受けて直接歯科衛生士さんにフロスの使い方を教えてもらうのがベストだと思います。

「フロス」と「歯間ブラシ」 どちらを使えばいいのかの考察

 昨日、『「フロス」と「歯間ブラシ」の違い』の記事を書いたので、
今回はその選択について考えてみたいと思います。

フロスとは、このようなもの。

 そして歯間ブラシは、こんな感じで使います。

IMGP4096

 見てのとおり、
フロスは歯と歯の間のせまいかた。
歯間ブラシは、歯と歯の間が空いていて入るかた。
が主に使える用具になります。

 年齢的にみると、若い頃は、歯ぐきも比較的健康で一番多くある状態。
病的に腫れたという状態で膨らむことはありますが、あくまでも一時的に腫れているだけで、年齢を重ねるにしたがって、痩せたりすり減ったり、歯周病などで失われたり、様々な原因で減っていき、
歯と歯の間に隙間ができて、若い頃に入らなかった歯間ブラシが入るようになってくることが多いです。

 フロスは、歯と歯の間のせまい方から、空いている方まで使えますが、
細い糸のような物であるため、器用でなければ使いづらい面もあって、
歯間が空いている場合、歯間ブラシをお使いになる方が多いと思います。

 よく、「フロス 歯間ブラシ 両方使った方がよいのか」、とか、「フロス 歯間ブラシ どっちがよいか」、という質問がネット上でもあるようなのですが、

 清掃面で見ると、フロスは歯と歯ぐきの間にある、「歯肉溝、又は歯周ポケット」」と呼ばれるところの清掃ができる所が優れています。ここの歯垢は、歯周病の原因に直接結びつくので取ったとき、歯ぐきがより健康に近づく効果は大きい。
(ただし、フロスで歯ぐきを触るときは傷をつけないように等、使い方に気を付けなければいけないので、歯科衛生士さんの直接の指導が必要です。歯科医院でブラッシング指導を受けてから使ってください。)

また、張った糸(フロス)をそのまま上下(垂直)に動かして清掃する形なので、汚れは「面」で取れ、
歯と歯の間のコンタクト部分、歯と隣の歯のぶつかるところや、歯の側面全体が清掃できるのも良いところです。

 歯間ブラシは、爪楊枝のように横から入れる形で、それを前後(水平)に出し入れして使います。
清掃面はどちらかというと「線」。漢字の「一」のように汚れが取れます。
 歯の側面全体こする形になるフロスと違い、
横から入れて歯の側面の一部、歯と歯ぐきの間の部分に限って、清掃します。
 主に歯周病対策に比重を置いた清掃になりますが、
フロスよりも手間が無く磨け、きついコンタクト部分を通るときの被せ物が取れるような歯への負荷もありません。
また、とくに歯ぐきが減って歯が長く伸びてきたような場合など、歯根が露出して窪みのある面、角度やカゲになる面がでてきたりしますが、その場合にも、歯間ブラシの長い毛先が届いて清掃でき、歯頸部に限っては、ピンと張った糸状のフロスで磨けないところまで毛先が当たって磨けるという広い清掃面を持っています。

それぞれに、磨ける範囲が違い、お互いが磨けないところが磨けるという特徴もあるので、
理想的に言うなら、フロスと歯間ブラシ両方使ったほうがいい、ということにはなると思います。

 ただ、現実的に考えると、現在日本でのフロスの普及率は約5%ほどで、
多くのかたが、「面倒くさい」と思うアイテムです。

 フロスも歯間ブラシも、清掃したときの臭いは結構強烈なので(今まで磨いていない方が磨いた場合)、
これだけの汚れや臭いが取れるのですよ、というところですが、
日々の生活の中で、どのくらいの時間を歯磨きにかけ、比重を置くかと考えると、
清掃が大好きな人なら問題ありませんが、
ある程度のバランスを保ち、一日に多くの時間を費やすよりも、長い期間続けるということに重きをおいて考えた方が良いのではないかと思います。
  実際のブラッシング指導では、この場所はフロスで、ここは歯間ブラシで、という使い分けでお勧めしたことはありますが、同じ所を両方かけて下さいとお勧めしたことは、今まで個人的にはないです。

  口の中の状態は個人個人違い、サイトであなたのお口にはコチラを使って下さいと申し上げることはできないので、
歯科医院に「ブラッシング指導をしてほしい」という電話をして、聞いてみて下さいというアドバイスが精一杯ですが、

 例えば、歯間乳頭が消失している、または今残って見えていても、歯ぐきの下で歯周病が進んで見かけだけ、実質磨けばもう残らない状態まですすんでいる場合は、「歯間ブラシ」をお使いいただくことも多いです。
(歯間乳頭については昨日の記事に書いてます。『「フロス」と「歯間ブラシ」の違い』
無理なく入る範囲内でなるべく太めの歯間ブラシをお使いいただくことで、
毛の長い歯間ブラシを使え、歯の窪みなど入り組んだところまでキレイに歯垢を落とし、
歯周病を止め、これ以上進ませない方向で清掃するように目指したりします。

歯周病でも、進行がそれほどでもなく、歯間乳頭を残せそうだと判断し、
口の中全体の状況によっては、前歯だけにフロスを使って頂き、奥歯は歯間ブラシを使う、など、使い分けてお勧めすることもあります。

 まだ若く歯間が空いていない方、今フロスの使い方を覚えておくと今後もフロスで歯周病予防ができると判断すると、
歯肉溝の歯垢をしっかり落とすようにして歯周病を予防するフロスの使い方をお伝えします。

 それぞれの口の中をみて、キレイに磨け、健康や美しさを保ち、歯周病で歯を失わないベストな選択を患者様個人お一人ずつの状況をみてそれぞれで判断するという感じだと思います。

 ブラッシング指導では、患者様お一人お一人に最適な、ブラシの選択を聞くことが出来ます。
ぜひ歯科医院で「ブラッシング指導をしてほしい」という予約をとって、受けるといいかと思います。

「フロス」と「歯間ブラシ」の違い

 歯と歯の間を磨く道具として、「フロス」や「歯間ブラシ」がよく使われます。

実際フロスの普及率は5%ほどだそうなので、よく使われて、は、いないようですが、(笑)
歯と歯の間の清掃用具としては有名どころなので、そう書いておきます。(笑)

 では、歯と歯の間を磨くとき、フロスと歯間ブラシどちらを使えばいいのか、ということですが、
これが全く一長一短。どちらが優秀かというより、個人の口の中の形、使い勝手や好みにより使い分けが必要です。
今回はその大まかな特徴を書いてみたいと思います。

まず、使いやすさでは、歯間ブラシの方が使いやすいかと思います。
フロスは歯と歯の間をのこぎりを引くように歯と歯の間のコンタクト部分を少しずつ通して、歯と歯ぐきの間に到達します。
この手間が、奥歯になるにつれ磨きづらくなります。
 歯間ブラシは、歯と歯の間のコンタクト部分は磨きません。
いきなり「歯ぐきと歯の間」、歯周病のポイントに入れて、その部分の歯周病菌を落とすように磨きます。
 爪楊枝のように差し込む形なので、歯と歯の間に隙間があり、ラクラク通るスペースがあれば、入れやすく使いやすいと思います。

 歯と歯の間に爪楊枝のように入れたら、
まず、「前の歯」の「歯ぐきと歯の間」に押しつけて、そこを出し入れするように磨き、
次に「後ろの歯」の「歯ぐきと歯の間」に押しつけて、そこを磨く、
という感じです。

前の歯
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後ろの歯
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写真のように、「前の歯」、「後ろの歯」それぞれの、
「歯ぐきと歯の間」に押しつけてそれぞれ磨きます。

この時の歯間ブラシは、水平方向に出し入れする動きなので、
歯の汚れは一直線、漢字の「一」のように落ちます。

 また、歯間ブラシについている毛の長さは、太いければ太い歯間ブラシほど長い。

これにより、歯にくぼみがあっても、ブラシの毛先が届く形になります。
歯科衛生士が、歯と歯の間に無理しないで入る範囲内で、なるべく太い歯間ブラシをお勧めする訳は、この毛の長さにあり、
窪みや入り組んだ所など、歯垢がたまりやすい場所に、多くの毛先が当たって汚れが落ちるのも、歯間ブラシの良いところだと思います。

 さて、一方のフロスですが、こちらもなかなか優秀です。

フロスは、ピンと張った糸のように使います。

これを歯と歯の間のコンタクト部分を通して歯ぐきまで到達させます。
 フロスは、このピンと張った状態のまま、垂直に動かして使用するため、
清掃は線ではなく「面」で取れます。
歯ぐきと歯の間(歯肉溝)にも細く入り込むため、この中にもぐりこんだ歯周病の原因菌(ジンジバルプラーク)を直接取れ、正しく使えば歯茎の炎症を押さえるのに効果的な清掃をすることができます。

ただ、ピンと糸の張った直線上だけフロスが歯面に当たりプラークが落ちるので、
歯の清掃面にくぼみのあるような時(とくに歯根など)には、フロスが当たらず、そこに歯垢がたまってしまうことがあります。

 若い世代は、歯と歯の間に隙間があまりなく、歯間ブラシが入らないことが多いので、歯間ブラシが使えずにフロスになるということもあります。
 私も歯科衛生士になりたて頃は全然入らなかった歯間ブラシですが、最近は細いタイプも出てきてスパスパ入るようになり、年齢を感じます。(笑)
そんな私ですが、実は歯間ブラシを使わないところがあります。

上の前歯。
(青い丸の部分が歯間乳頭です。)
P1030481 point1

 実はフロスは、この歯間乳頭(しかんにゅうとう)をあまり擦らず残すよう清掃できる優秀なアイテム。

歯周病になる前の健康な歯ぐきには、この「歯間乳頭」があります。
歯と歯の間で、歯ぐきが三角形に尖っている部分です。

これが、歯周病になると消失し、三角形の尖りがなくなって、平坦な一直線状となるため、
歯と歯の間は(埋める歯ぐき(歯間乳頭)がなくなって)空いて見えてきます。

この歯間乳頭を年齢が上がってもなるべく長く残すには、若い頃から歯周病を予防し、歯周病にかからないようにする必要がありますが、
この予防には、歯周病の原因となる歯肉溝の歯周病菌(ジンジバルプラーク)を直接とりのぞき、歯間乳頭を擦らず、傷つけにくいフロスが良いと思います。

歯周病が進んでしまうと、歯間乳頭は消失してしまうので、その時は歯間ブラシもいいと思いますが、
まだ美しい歯間乳頭が保てる時はフロスを、とくに上の前歯には使っています。

 細かく言えばまだ違いはあると思いますが、大まかな特徴としては、こういう感じかと思います。

 患者様それぞれの口の中に合わせた選択が必要ですが、歯周病になってからは歯間ブラシ、歯周病になる前や若いウチはフロスをお勧めされることも多いかと思います。

 歯ブラシと併用して、歯間ブラシやフロスを使うことは、歯周病予防や治療にとても効果的です。
健康な口元、美しい口元を保てるアイテムなので、今まで使ったことがない方も一度、お使いになられてみるといいと思います。

歯周病。 30歳代は、運命の分かれ道

 歯周病対策、どこからスタートすればいいか、ということには、個人差があります。
子供の頃から毎日、きちんと歯垢を落とし、歯科医院に通って定期的にケアを受け…、ということをしているに越したことはありませんが、
まあ、そんなに理想通りでない方も多いと思います。(笑)
とにかく、気が付いた今、今日からがオススメ、というところです。
 それでも危機感を感じられない方には、もう一押し、
もっと若くても歯周病で抜歯する方はいるので、明確に30歳から始めましょうとは申し上げられませんが、
少なくても30歳代ではスタートしていた方がいいという理由を今回は書いてみたいと思います。
(それより若い方も安心せずに今日から始めて下さい。)

 厚生労働省の統計で見ると、
歯周病による抜歯は、40歳代で目立ち始め、50~60歳代は抜歯数の多さのピーク、
70歳代以降も抜歯は続きますが、もはや失う歯さえ無くなった、という理由で減少していき、
80歳代の約半数が一本も歯のない状態となっています。

ただ、「年を取ったら入れ歯」ということを当たり前だと思うのは、違います。

 スウェーデンでは、80歳での平均残存歯数は約20本ほどだそうです。(日本の約2倍)

スウェーデンは、1970年代に国家的に予防歯科を取り入れ、それまで日本とほぼ同数ほどあった虫歯や歯周病での抜歯数を激減させました。

それにより、何も調子の悪くないときにも、定期的に歯科医院に通って、歯周病にならない歯の磨き方を習い、歯石除去、歯のクリーニングを受け、歯ぐきの状態をチェックしてもらう等の予防歯科を行うことで、
歯周病での抜歯数は大きく減らせることが分かっています。

ただ日本では、予防歯科が国家的に導入されていないため、
このことが歯周病が防げる、大切なことだという情報が少なく、

分かっている方だけが歯科医院に定期的に通い予防できている、という現実があります。

お知らせするための啓蒙活動も行われていますが、国民一人一人全員にその真価をお伝えしきれるところまでは、浸透していないというところかも知れません。

 さて、予防歯科を始めるのは、定期的に歯科医院に行く、ということなので難しくありません。
これで歯周病が防げると考えると大変お得です、と申し上げたいと思います。
家で行う、歯周病の治療や予防のできる歯の磨き方も大切ですが、
それを教わる「ブラッシング指導」は、歯科衛生士のいるところであればたいてい教えてもらえるので、
今まで受けたことのない方は、ぜひ歯科医院で「ブラッシング指導を受けたい」と希望してみていただきたいと思います。

 歯周病予防は20歳から始めればよりよいと思いますが、少なくても30歳代になったら意識して歯科医院に通い始めるべきだと思います。
20~30歳代で歯周病で抜歯される方も、現実にいらっしゃるので、これで間に合うとは言いませんが、
多くのかたが抜歯することになる平均に合わせて考えてみると、
少なくても今、30歳代のかたは、ここで歯科医院に通って予防歯科を始められるか、放置してしまうかは、
今後歯周病で歯を失うか失わないか、に大きく影響すると思います。

 以前は、このような情報が今よりももっと知られていなかったため、
高齢になると歯科医院で多くの歯を抜歯するということが頻繁に行われていました。
とくに虫歯が無く、歯科医院に行かないような方は、一気に歯を無くしてしまうことが多かったと思います。
現在は、以前より情報も広まりを見せ、抜歯数も減少してきています。

 歯周病予防は20歳からでも、それ以降でも始められます。
現在は、どこも調子が悪くなくても歯科医院に定期的に通い、ケアをする人は全く珍しくありません。
虫歯が一本もなくても歯科医院に行きましょう。

 まだ定期的に歯科医院に通院していない方は、どこも調子が悪くなくても、ぜひ、
「どこも調子が悪くないんですけど、歯石を取ってもらいたいと思って」 とか、
「どこも調子が悪くないんですが、歯のクリーニングしてほしくて」、
「ブラッシング指導を受けたい」 というような電話を歯科医院にして、
予約を取って通い、歯周病を防いでいただきたいと思います。

歯と歯の間の磨き方。 「0か100かの発想を転換する」。

 歯間ブラシやフロスを使い始められた方は、
「意外と磨きづらいかも」という現実に直面するかもしれません。

で、そのままいくと、面倒になって止めてしまう。
というレールに乗ってしまう。

ただ、この時、全ての歯間に歯間ブラシやフロスが入りづらいわけではなく、
中に数カ所入れづらいところがあったりする。
逆に、入れづらいところの中に、入れやすい所があるというパターンもありますが、

まずは、入りやすい所のみに、歯間ブラシやフロスを入れます。

面倒になって止めてしまうぐらいなら、
1カ所でも清掃しておいたほうが良い、ということです。

実は歯周病の重さの指標にもなる歯周病ポケットの深さは、
全ての歯が同じ深さではなくバラバラです。
歯周病になって失ってしまう歯もありますが、残る歯もあります。

入れやすくて、清掃しやすい所が1カ所でもあれば、
「その歯」の残る率は上がります。

例え他の歯が歯周病になり始めてしまっても、
歯周病になって歯槽骨が溶け始めると、そこに隙間ができ、歯間ブラシ等は入れやすくなっていきます。
進めば進むほど、ラクラク入る。

この時、1カ所でも歯間ブラシ等を入れる習慣が付いていると、
新たに入るようになった所にも自然に入れるようになります。

歯周病はなり始めたから、即抜歯というわけではなく、抜歯するほど進行するまでには、長い年月をかけることがほとんどなので、途中で清掃をして進行を止め、抜歯をせずに残すことも可能です。

 食後つまようじを使いたくなる方は多いと思いますが、その感覚は大切です。
歯間ブラシと爪楊枝は、歯と歯ぐきの間を清掃できるか、とか、その使い方は少し違いますが、
 歯間ブラシがラクラク入り、使い慣れると歯間ブラシは意外と、
「使いたくなるもの」です。

面倒になって止めてしまうほど完璧を目指さず、
1カ所でも習慣にして長く使い続けることが出来れば、
結果的に歯周病で歯を失う率は下がると思います。