6,「歯と歯ぐきの間」とは? 歯周ポケットはココにあります。

 歯周病対策のポイントは、「歯と歯ぐきの間」、と言われます。

では、「歯と歯ぐきの間」とはどこでしょうか?

それは、

P1030423 探針
ここです。

 器具の先端が歯ぐきの中に隠れて、見えないのが分かりますか?

 歯と歯ぐきの間は、ピッタリくっついているように見えて、実はこのように隙間(溝(みぞ))があります。

 この歯と歯ぐきの間の溝に定規を差し入れて、深さを測るのも歯科衛生士の仕事の一つです。

 定規と言っても、もちろん、筆箱に入っているお馴染みの物ではなく、「プローブ」という専用の器具を使います。

 このプローブの先には1㎜ごとにメモリがついていて、これを溝(歯肉溝)に差し入れ、力を入れずに入っていく深さを測ります。

この深さは、正常な状態なら1~2㎜、深くても3㎜まで。
3㎜以上になると、ここを「歯周ポケット」といい健康な状態であった時の「歯肉溝」とは別の名称で呼んで区別します。
 だいたい4~5㎜が中等度の歯周病、6~7㎜以上は重度の歯周病と言われます。
ただこれは目安で、例えば一箇所だけが5㎜、という状態と、何カ所も5㎜の深さが続く状態では、歯周病の程度が全く違います。
 実際の状態を歯科医師に見てもらい診断してもらいましょう。

 さて、この歯周ポケットですが、深くなってしまったから、もうダメということではありません。
 これは現在の医療に感謝するところですが、昔は歯周病の処置で抜くことが多かった歯を、なるべく残そうと治療してくれるのが、今の多くの歯科医院です。

 救いは、深くなってきた歯周ポケットでも、歯科医院で治療を受け、ブラッシングなどの努力により、
まだ歯を残せる可能性があるので、あきらめて放置しておくのはもったいなさ過ぎます。

 重度の歯周病でも、どうしても歯を失うことになるギリギリまで、残そうと治療してくれる歯科医院は多いようです。

「もうどうせダメだから」と放置してしまいがちかもしれないのですが、入れ歯と御自分の歯は、天と地ほどの差。

 

 自覚症状がなくても、今ある御自分の歯を大切にするため、一日も早く歯科医院で定期的な検診とクリーニングに通って、専門のケアを受けられてください。

 この定期検診を受けられたか、なかったか、ということが早期発見につながり、歯を長く残せるか、残せないかということには、大きく関係すると思います。

医学は日進月歩、ですが、
症状のないうち放置していて後から通院しよう、と頼りすぎるのは、可能と不可能もあり、身体への負担も大きく、費用の負担もあるのでお勧めできません。

 さて、それでは次回は、
 「歯と歯ぐきの境目」のところに歯垢が付き、「歯と歯ぐきの間に入り込んで、歯周病をおこす」、歯周病に実際かかってしまったとき、のポイントなど少し書いてみたいと思います。

次、『7,歯周病対策のブラッシング指導を受ける際のポイント。』にお進み下さい。

10,「歯科医院で行う「PMTC」とは。」 (歯周病予防のためのケア)

 歯周病などの予防歯科では、歯科医院で、歯ブラシと歯間ブラシ等で歯垢を落とす磨き方をお伝え(ブラッシング指導)したり、患者様の歯を磨いたり、機械を使って歯をクリーニング(PMTC)したりします。

PMTCとは、

rofessional(プロフェッショナル)…専門家の

echanical(メカニカル)…機械的な

ooth(トゥース)…歯の

leaning(クリーニング)…清掃

 のことで、歯科衛生士など専門職が機械を使って、歯を磨き上げることです。
使われるのは汚れを落としたり、磨いたりする機械等。
実際には歯石や汚れを除去したり、ラバーカップを低速で回転させて、歯面の汚れや着色を落としたり等、歯ぐきのケアをしながら清掃します。
磨きますが、削らないので、ご心配はいりません。

日常の御自分のブラッシングは、もちろん大切ですが、歯を長く残し、高齢になっても健康な口の中でいるためには、
ブラッシング歯周病の進行具合、歯ぐきの状態を確認、清掃し、
歯周病、虫歯の早期発見、予防をする、定期的なPMTCは欠かせないものだと思います。

 普段の歯ブラシだけではなかなか落としきれない汚れを除去し、着色などもキレイになります。
 実感としてもクリーニング後は歯ぐきがスッキリとして見え歯面もつるつるになっていると思います。
 きれいになった爽快感をお楽しみ下さい。

 また、この他に、患者様のお口の中を見せて頂いて、歯垢の残っているところ、歯ぐきの炎症部をチェックしてブラッシング指導に入ったりしますが、

 お口の中に歯垢があり、歯槽膿漏などに罹っている方も、とても清潔なきちんとした生活を送られています。

 会社や社会でとても重要なポストをしていらしたり、ご家庭でご活躍されるなど、尊敬させられる方々が多いのです。

 そんな患者様に、歯垢が残っていますとお話すると、

歯の磨き残しがある。

といわれたようで、気まずいと思うかも知れませんが、

歯を磨き残しなく磨くというのは、けっこう難しいものです。
(よろしければコチラの記事をご覧下さい。
『なぜ、「普通?の歯の磨き方」では歯垢が落ちないのか、検証してみました。』

 口の中の清掃は、とても重要ですが、コツやポイントがあり、それらをきちんと聞く機会は、歯科医院で受けない限りあまり多くはありません。
 もう何十年も前の虫歯予防デー(6月4日)に小学校でうけた、集団指導の話だけという方も、沢山いらっしゃいます。

 歯科医院でブラッシング指導に入る歯科衛生士は、そのような事情をよく知り得たプロです。

 どうぞ安心して歯科医院にお出かけください。

 

 

 ※これで、「ココから順番に書いています」から始まる「歯周病を防ぐ基礎知識」カテゴリーについては終わりです。

「虫歯」の記事はここからです。(^^)
『1,「虫歯の多くはココから発生。」 「シーラントとは。」』

「歯磨き」の記事は、こちらもご覧下さい。
『なぜ、開いた歯ブラシは取り替えるべきなのか?』

『「なぜ、歯垢は落としづらいか」(バイオフィルム)』

5,ここからは、歯周病『対策』。

 このサイトの主旨は、読んでいただいた皆様の歯を一日でも長く、残すことです。
歯を失う原因の一番多いものは、歯周病ですが、

 歯周病の対策はズバリ、「歯垢」を落とすことです。

医療に関しては「日進月歩」という言葉がよく使われますが、つまり、
「今までこうだと思われていたが、本当はこうだった」、と教科書が塗り替えられることがあります。

 歯周病に関してもしかり、で、その詳しいメカニズムなど、今後も塗り替えられる可能性を持っていると思いますが、ただ、日常の診療で、

「歯垢を落とせば、歯周病が改善する」、は、事実です。

とても分かりやすい因果関係だと思います。
自分の目で見て確認できることなので、ぜひ皆様にも体験して頂き、「歯垢」を落として、歯周病を予防、治療し、いつまでも御自分の歯でお食事を楽しみいただきたいと思います。

さて、
よく「培養実験」といって、寒天をひいたシャーレの中に、菌をつけて、それを体温ぐらいの温かさを持つの培養器の中に入れ、菌を増殖させる実験を行いますが、

口の中は、まさにその培養器のような環境です。

水分があって、栄養があって、適温がある。
そして菌にとっては絶好の菌の住み家や、隠れ場所(歯石や歯周ポケット等)があります。

 この菌の数を減らし、毎日ある程度のレベルの菌数に保つことが出来れば、
歯周病の治療も、予防も、完成です。

 

  では、ここから歯周病対策、実際に「歯垢の付きやすいポイント」について見ていきましょう。

 歯垢の正体が生きている細菌だと、『2,「歯垢(プラーク)」について。』でお知らせしました。

その細菌が、歯と歯ぐきの境目から侵入し、歯と歯ぐきを繋ぐ歯周組織(軟組織)のつながりを切って徐々に進み、歯を植える骨に到達して、その表面から少しずつ骨を溶かしていく、
というのが、歯周病です。

歯を支えていられないほど骨を溶かし続けるのには、年数がかかりますが、
そこに歯垢(細菌)が付いていれば、歯周病にかかり骨を溶かされてしまいます。

これを予防、治療する方法は、一つ。
歯垢(細菌)を清掃し、菌数を減らすことです。

それでは、歯垢(細菌)が、歯周病の原因だとご理解いただいたことろで、今度は実際に、悪さをさせない効率的な方法を考えたいと思います。

 勝利を収めるためには相手(歯垢)のリサーチが欠かせません。

そこで今回は、実際にどこに歯垢が付き、どこの歯垢を落とせば効果的なのか、を知って頂くことから始めたいと思います。

例えばこんなお口の中。(顎模型です。)

P1030439

 歯科衛生士学校時代、赤いマニキュアを歯石に見たてて、歯石除去の練習をしました。跡が残っていてスミマセン。(笑)

 

P1030439 point2

 ピンク色でなぞった所が、歯周病に大きく影響する、
「歯垢がつきやすいポイント」です。
この歯と歯ぐきの境目には、歯周ポケット(歯肉溝)と呼ばれる隙間があって、そこに細菌が住み着きます。

  写真では、歯垢を私がピンク色でマーキングしていますが、
本当に歯垢がこのようなピンク色をしていたら、歯周病問題はは、もう少し簡単に解決です。

 誰でも原因菌がのついていることが分かれば、多くの人は歯ブラシで落として歯周病を快方に向かわせることがもっと簡単になるからです。

 ところが、実際には歯と全く同じような色合いの「白色」。
カメレオンもびっくりの擬態模写です。

 さて、この中で、さらに歯ブラシで磨いても落ちにくいポイントをいうならココ。

 P1030439 point3

 歯は、まず歯の上の方が隣の歯とぶつかります。なのでその下のココに三角状の隙間ができ、歯垢が溜まるのです。
 この「歯と歯の間」には歯ブラシが届かない。
なので、この部分の歯周ポケットは、歯垢の活動しやすい環境が整ってしまいがちです。

 この問題を解決するため、歯周病予防、治療のためのブラッシングには、歯ブラシと併用して、歯間ブラシやフロスなどを使用したりします。
 なんでこんな磨きづらいところに歯垢が付くのか……と思いますが、歯垢からは「だからこそだよ!住みやすいんだ。」という声が聞こえてきそうです。

 歯ブラシで歯を磨いている方は多いですが、「歯垢」を取るように意識して細かく磨かれている方、ブラッシング指導を受けて御自分に合った磨き方を知る機会のあった方は意外に少ない。
 まずはブラッシング指導をきちんとしてくれる歯科医院に通院することが大切かも知れません。

 

 それでは次回は、歯垢が付いて歯周病が進んでしまうポイントを具体的にみていきます。

次、『6,「歯と歯ぐきの間」とは? 歯周ポケットはココにあります。』にお進み下さい。

4,歯はこんなふうになっている。 「歯の構造と、歯周病の発生と行方」

 それでは、歯周病の発生を分かりやすく御説明するため、まず歯の構造から簡単に書いてみたいと思います。

歯の構造。

私たちが見ている歯の表面は、「エナメル質」という硬い組織で覆われていますが、それはそれほど厚くなく、下は「象牙質」という比較的柔らかい組織になっています。
その下、歯の内部中心を歯根の先まで貫くように通るのが「神経」。
と、おおざっぱに見て三層構造。

img21 歯の構造
画像引用©2011 Nobel Biocare  http://www.ns-search.jp/

歯の表面の
・白色の部分が『エナメル質』
・黄色の部分が『象牙質』
・赤色の部分が『歯髄』(神経)

の三層構造。
 ちなみに、歯根の回りにある「まだら模様」が、『歯槽骨』です。

 歯ぐきの下には、私たちが見ている歯の長さより長い「歯の根」があり、

P1030499
(模型です。)

その「歯の根」の部分が、
歯ぐきの下にある「歯槽骨(しそうこつ)」に植わっています。
ただ、歯根と歯槽骨は、融合しておらず、
歯根は、歯槽骨にある歯根の形の穴に、すっぽり収まる形で入っています。
 そして、そのそれぞれ独立した硬い骨状の2つ(歯根と歯槽骨)に軟組織(歯周組織)が付いてしっかり結びつけている状態です。

ここで、「歯周病の発生、とその行方」についてお話しましょう。

 歯周病も虫歯も、その大きな原因とされているものは同じ。
「歯垢(プラーク)」です。
と、『1,「歯垢(プラーク)」は大原因。』で書きました。

この歯垢の中の細菌が代謝を起こし、
歯の表面を溶かせば「虫歯」、歯が植わっている骨自体(歯槽骨)を溶かせば「歯周病」、
と考えると分かりやすいかと思います。

虫歯
d_34 虫歯の進行絵

歯周病
d_40 歯周病進行絵

 歯ぐきの下には歯根(しこん)が植わっている骨(歯槽骨(しそうこつ))があります。(上図、ピンクの部分)
歯を木などの植物に例えると、位置的には「土」の部分になりますが、
実際には硬い骨(歯槽骨(しそうこつ))です。

 歯垢の中の細菌は、歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)から入り込んで進み、軟組織(歯周組織)の結びつきを切り、歯根と歯槽骨の間に入り込んで炎症を続け、歯槽骨自体を溶かします。

 イメージとして、鉢植えに植わっている木から、土を少しずつ減らしていく状態を想像して頂きたいのですが、

 少し根を露出させた鉢植えの木、から、どんどん土が減って行き、根が長く見えて、ついに抜けてしまう状態です。

 脅かすようですが歯槽骨は何本もの歯を支えている骨ですので、溶けてなくなってしまうと、気が付いたときには、何本もの歯が同時に揺れだし、複数本を一気に無くしてしまう、ということも珍しくありません。

 症状としては、歯ぐき表面が炎症を起こすところから始まり、痛みもなく内部で歯槽骨が溶け、
支えを失った歯が揺れだして抜けていきます。

 口の中で見ると、歯周ポケットの深さが4㎜→5㎜→6㎜……と進んでいき、8㎜位では支える骨がかなり溶けて無くなってしまった状態になり、歯が大きく揺れだし、そのまま進むと抜けてしまう状態です。
 途中、排膿(はいのう)といって、歯と歯ぐきの間から膿が出る状態が続きますが、
口の中は常に唾液で濡れていること、口臭は自分ではなかなか分かりづらいことなどから、御自分では気付かれない方がとても多くいらっしゃいます。

 ポイントは「患者様の自覚無く進む」ことが多い。
というところだと思います。とくに歯が揺れ出すまでは、
 痛みがなく、ゆっくり慢性的に進むこと等により「昨日と比べておかしい」という感覚が少ない、などのため、
口の中の粘つきや歯ぐきの出血があっても、誰でも多少あるもの、と御自分で納得してしまい、
「今すぐ歯医者さんに行かなくては!」という危機感がでるのが遅い、ということだと思います。

 また歯医者さんで、歯周病を指摘されても、

1日歯を磨かなかったから、今日いきなり病状が悪化するという状態で無かった場合、つい放置してしまいがちです。

 ざっというと、例えば10代、20代、30代と今まで健康に過ごせていた歯が、
同じ生活習慣なのに、40代では急に歯周病で抜け出す。
という感じでしょうか。
抜ける年齢は、30代、40代、50代、60代…と人それぞれですが、
年齢層が高くなるほど、「今まで大丈夫だったのに、どうして突然?」というようなイメージになるのかも知れません。

 とくに歯が丈夫で虫歯の少ない方は、歯周病も他人事と思ってしまいがちなので危険です。

 虫歯になりにくい体質の方は、歯周病にもなりにくいとは全く限らず、
逆に虫歯の少ない方は、歯科医院に通う機会が少ないこともあり、歯周病の早期発見が叶わず、リスクが大きいと言われています。

 歯科医院では、特に症状のない方でも、口の中の点検や歯のクリーニングなどを行っているところが大変多いです。
ぜひ、「とくに症状はなくても、クリーニングと点検」に通院して、歯周病から歯を守ってください。

 

 それでは次回からは、その『歯周病対策』について書いていきたいと思います。

次、『5,歯周病の対策』にお進み下さい。

3,歯石について。 

 歯石には2つあります。歯ぐきより上の見える所に付く歯石、と、歯ぐきの下に隠れて見えない所に付く歯石です。

d_24 歯肉縁上縁下

 歯の表面、歯ぐきより上の見えるところに付く歯石は、
「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」。

 歯垢に唾液中のカルシウムなどが混ざり、石灰化(カルシウムが硬く組織に沈着すること)したものです。
 唾液の出口がある、「下の前歯の裏側」や「上の奥歯の頬側」に付きやすくなっています。

唾液に含まれるカルシウムなどの量には個人差があるので、体質によってすぐ歯石になってしまいやすい方と歯石の少ない方がいらっしゃいます。
 早い方は数日で歯垢が石灰化を始めると言われ、定期的なケアなしに完全に防ぎきるのは難しく、歯石がつけば、歯ぐきは炎症をおこしはじめます。

この歯石を防ぐのは、歯垢の柔らかい状態のうちに歯ブラシ等で取ることですが、実際には、歯ブラシだけで歯石が付くことを防ぎきるのは難しいので、定期的に歯科医院に通って除去してもらいましょう。

 ちょっと余談になるかもしれませんが、
唾液の中のカルシウム等の成分が多く、歯石が付きやすい方は、
虫歯になりにくいと言われています。

唾液中のカルシウム等が多いということは、
「歯垢」を石灰化(カルシウム等が硬く組織に沈着すること)し、歯石がたまりやすいですが、

反面、虫歯になりかけて溶けた歯の表面のエナメル質も、唾液中のカルシウムで再石灰化させて、溶けた部分を修復するので、虫歯になりにくいのだそうです。
(虫歯の再石灰化についての説明はこちらの記事に書いてます。『2,虫歯の原因を考える。 虫歯予防の対策。』虫歯の原因の二番目「糖分」の説明をお読み下さい。)

 ただ、歯石が歯ぐきに接していると、その部分の歯ぐきは炎症を起こします。
虫歯になりにくい方は、歯周病になりやすい、と言われる一因です。
 とくに「虫歯がなく、ほとんど歯医者さんに行かない」と言われる方は、歯周病の発見が遅れてしまい、
歯を支える骨が、少し溶けている状態(初期)で分かるのではなく、多くが溶けてしまった状態で、
やっとみつかることになります。
歯周病も初期のうちに見つかれば、治療し、歯を残すことができます。
「今まで虫歯がなく、歯には自信があったのに、急に歯周病で歯がグラグラ揺れだした」というところまで悪化してから、来院される場合もあるので、「歯の健診とクリーニング」のため、虫歯がなくても、ぜひ定期的に歯科医院に通って頂きたいと思います。

 さてこの歯石、
歯垢時代に生きていた細菌は、さすがにもうお亡くなりになっているのですが、

この歯石の表面、顕微鏡レベルで見ると、軽石のように小さな穴が沢山あいておりまして、
ちょうど、生きている歯垢が住み着くのにちょうどいいお部屋。
歯石表面のざらつきも歯垢がつくのに最適。
という格好の、歯垢の住み家になっております。
 また歯石の下の歯の周りや歯ぐきは、歯ブラシの毛先が届かず、磨くことが出来なくなるので、硬い歯石の壁のカードのもと、細菌はのびのびと活発に活動を始め、歯周病を悪化させていきます。

 実際、大きな歯石をとった後、歯石の下にあった歯ぐきは真っ赤に腫れて出血しやすく軟らかい状態になっていることがほとんどです。

 この歯石を取ることも、歯科衛生士の仕事の一つです。

さて、歯ぐきの上に付いていた歯石は、歯ぐきの下、歯の根の方にも付きます。

歯周病d_40 歯周病進行絵

 この、歯と歯ぐきの隙間の奥深く、歯ぐきの中の目に見えない部分(歯周ポケットの中の歯の根)に付いた歯石、

 これを「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」といい、歯周ポケットの浸出液や血液に由来する歯石とされています。
 この見えない部分では、見える部分より病原性の高い細菌が活発に活動し、歯周病を内部でさらに悪化させていきます。

 歯周病の予防、治療には、
「豆腐のように柔らかく歯ブラシで簡単に取れる歯垢」と、その付着を容易にしてしまう「硬くこびり付く歯石」、両方の除去が必要とされます。

 ご家庭での毎日の歯ブラシが有効になるように、ちょっとしたコツを歯科医院のブラッシング指導で習い、定期的に歯石除去、歯の表面を磨き上げるなどの処置(PMTC)を受けましょう。

 歯科医院に定期的に通ってケアを受ければ、
自分で気付かずに進んでしまう歯周病又は虫歯等の早期発見と合わせて、長く歯を残すために有効な手段になると思います。

 では次回は、歯垢の中の細菌がどのように口の中の健康を失わせていくのか、それを書いていきたいとと思います。

 次、『4,歯はこんなふうになっている。 歯の構造と虫歯の発生』 にお進み下さい。